地獄巡り②
「アーディスなのだ!私の悪魔仲間なのだ」
「貴女の気配と妙な気配を感じたから来てみたんだけど、それ生きた人間よね?」
アーディスと呼ばれたピンクの髪をした女性の悪魔は、はだけた服を着ていて少々目線に困る。
「そうなのだ。地上に行って世話になった礼に連れて来たのだ」
「それは礼になってるのかしら?」
確かに地獄に連れて来たと言われたら恩を仇で返している様に思われるが、貴重な体験ではあるので礼にはなっている。
「もし良かったら、私がお礼をしてあげても良いわよ」
「それは良い案なのだ」
アーディスは俺に向けてウインクをして来る。
それに首を傾げていると、アーディスは怪訝そうな顔になる。
「えっと、今から何処か行くんですか?」
「え、えぇそうよ。そこで楽しい事しましょ?」
再びウインクをして来る。
「ははははは!」
それを見たグリートがいきなり大笑いする。
「お前今攻撃されたの分かってるか?」
「えっ?攻撃?」
俺は驚く。
「正確に言えば魅了だがな。そこの悪魔は色欲の権能だろう?」
「っ、そうよ。何でその男は掛からないのよ!」
「残念ながらそいつは身持ちが硬い。まぁそれ以外の理由の方が多いがな」
「コタケさん、処しますか?」
「実害は無いけど何されるか分からないしね」
「や、止めて。私は戦えないのよ」
「信用なりませんね。そう言った手合いはそこの邪神で間に合ってます」
「何だ?喧嘩でも売ってるのか?」
「ほ、本当よ。戦えないからこうして魅了を使ってるのよ」
「まぁ、良いんじゃないのか?その気になれば聖剣で息の根を止められるんだからな」
「貴女が擁護するのが一番怖いんですが」
「なら本当に戦えないのか、そこの悪魔にも確かめれば良いだろう」
「そうですね。ラルムさん、彼女の話は本当ですか?」
「戦ってる所は見た事無いのだ」
「仕方ありません」
一応信じる事にしたメアリーさん。
「それよりもアーディス。さっきの楽しい事とは何なのだ?」
「えっ?あ、えーっと、そう!私の住処に案内しようとしたのよ!」
明らかに本来考えていた事とは別の事を言っているが、ラルムは気付かない。
「確かにあそこなら楽しいのだ!次はそこに行くのだ」
そんな訳でアーディスの住処に行く事になり、メアリーさんは敵の本陣に警戒を最大限にしていた。
しかし、いざ到着すると俺達は唖然とする。
背の尖った木馬の上に目隠しと口枷をされた男が身をよじらせていたり、他の女型の悪魔にムチで叩かれて興奮している者もいる。
「えっと・・・・・・」
あまりの光景に言葉にならない。
「ここに居る奴らは皆んな楽しそうなのだ」
「えぇ、そうでしょうね」
「これは傑作だな」
「混ざってくるのだ?」
「遠慮しとくよ」
「あら、それじゃあ新しい扉は開けないわよ」
「開かなくていいです」
「そう残念だわ」
残念でも何でもなく当然である。
「そう言えば、悪魔は仲間意識が無いと聞きましたが、2人は違うんですか?」
「そうなのか?」
「そうね。悪魔に仲間意識が無いのは正しいわ。私の場合は戦う力が無いからこうしてるの」
「あそこに居る悪魔共も魅了してあるんだろ」
「流石邪神ね。その通りよ」
「もしかしてルラムも」
「それは無いわよ。そもそも私の力じゃ、ルラムを魅了出来ないもの」
キッパリと否定する。
「悪魔にはね、各権能に序列があるのよ。私は何十番台だけども、ルラムは1位なのよ」
俺とメアリーさんは驚くが、グリートだけは平然としている。
「天使で言うところの1番上の熾天使クラスだ。だから地獄との道も開けるんだ」
「ルラムは地獄でも変わり者なのよ。だから私と仲良くしてくれてるの」
「なんだ?褒めてくれてるのか?」
「そうよ」
「もっと褒めるのだ!」
そんな光景を見て親子っぽいなと思うのだった。
「さてそろそろ帰ろうかな」
「まだ5時間しか遊んでないのだ」
「もうそんなに経ってたんだ。まぁ、また今度遊びに来るから」
「でも簡単に行き来は出来ないのだ」
「転移が通じれば簡単なんだけど、そんな美味い話は」
と試してみると、ゲートが開いてしまった。
「貴様はバカなのか?」
「グリートに言われたく無いんだけど」
「ア゛ア゛ァ?」
「コタケさんももう少し自重しましょう」
メアリーさんにも言われる始末である。
「もしかして簡単に来れるのか?」
「そう見たい」
「おぉ!なら今度はあの天使以外を連れて来ると良いのだ」
「もうちょっと刺激が弱い所ならね」
流石に子供達にこの場所は見せられない。
「ルラムはどうするの?」
「地獄で腹を満たしてから帰るのだ。道を開くのに結構力を使ったのだ」
「あら、ルラムも現世に行くのね」
「料理が美味かったのだ。アーディスも招待してやるのだ」
「ちょっと怖いけど気になるわ」
そんな2人の悪魔に見送られ我が家の庭に戻るのであったが、
「思ったのですが、序列1位の者達は現世に続く道を開けるのだったら、何故攻め入って来てないのでしょうか?」
メアリーさんが尤もな疑問を口にする。
「悪魔が出れば天使どもも降りて来る。そして、悪魔は現世に来ると力が半分以上減るが、天使にはそれが無い」
「なるほど。そうして均衡を保つと」
「過去にも何度かあったそうだが、その全てが失敗に終わっている」
「でもさ、力が減った状態でも地獄に戻る事の出来るルラムはどうなの?」
「そうだな、一言で言えばアイツは規格外だ。今の地獄で1番強いのは明らかにアイツだろうな」
「マジか」
「ケフィリアは一生勝てないのでは?」
「あのアホ天使はそれすらも分からんからな」
「誰がアホですか!」
家の扉が勢いよく開く。
「天使のくせに地獄耳か」
グリートの発言にメアリーさんがフフッと笑う。
「今日こそ貴女を倒して差し上げます!」
「今日は疲れた。パスだ」
横を素通りされたケフィリアは立ち尽くし、
「私を無視とは良い度胸です!」
グリートに突っかかりに行くのであった。




