<共和国の消失>
それから数か月後、共和国の外交官が中立国を経由する民間の定期船に乗って帝国を訪ねてきた。理由はもちろん戦争についてである・・・と思っていた。だが、新聞で公表された共和国の理解しがたい言葉の数々は全く持って受け入れられるものではなかった。
―――――――――――――――
<湖の汚染による共和国の危機に帝国は清潔な水を提供するべき>
共和国との会談は一方的な要求から始まった。しかも共和国は「もらう」のではなく「もらってやる」というような態度であり、帝国にあれだけのことをしておいてよくこんなことが言えたものである。
<こういった時はお互い様>
お互いとは一体何のことなのだろうか、お互いにものをやり取りするわけではなく明らかに帝国が与えるだけのものだ。共和国が一方的に要求するだけで帝国には失うものしかない。そもそも、もしそうでなかったとしても共和国にそんなことをする価値はない。
帝国の宰相は共和国外交官の一方的な要求をさえぎり、なぜ旅行者として帝国に入国させて市民を虐殺したり、民間船に偽装した爆撃艦や砲艦したりといったことをしておいてそんなことが言えるのかと詰め寄る。
すると・・・。
<それは戦争なんだからお互い悪かったでしょう>
宰相はこの言葉を聞いて帝国との断交を決意したとされている。なおも共和国と友好を保とうとする帝国の外交官を一掃し共和国との完全なる断交を行なったのである。
――――――――――――――
この日以降、俺たち空軍は帝国へ近づいてくる共和国の飛行船などを撃墜する任についた。いつなんどき民間船に偽装した共和国の飛行船が攻撃を仕掛けてくるかわからないのだ。また、いくら飛行船に乗っているのは汚染から逃げてきた民間人だと自称していても信用することはできない。過去に共和国は旅行者に偽装した軍人を送り込んできて帝国を攻撃した国なのだ。それに老若男女問わずに徴兵して帝国との戦争をしてきた国であり、帝国を守るためには誰一人として帝国に入れてはならない。
しかし、そんな日々も長くは続かなかった。撃墜された飛行船の代わりに共和国が飛行船を作れば作るほど湖が汚れ、その質が悪くなっていく。中立国からの話としては共和国との間を行き来する飛行船の航路の下には墜落している飛行船も増えており、共和国自体も病気や奇病が蔓延して国そのものが死にかけているらしい。
それから数か月もしないうちに共和国は毒の湖を残して消えた
身勝手な理由から戦争をはじめ、時には卑劣な手を使って戦争をする共和国を救おうとする国などどこにもなかったのだ。自然の声に耳を傾けず・・・いや、そもそも聞くことすらできず、自然を大切にしなかった国の哀れな末路であった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
もともとこの作品を書き始めた理由が
・自然破壊・環境破壊(水質汚染)
・水をめぐる戦争
・飛行船形態の戦艦や航空母艦を駆使した戦争
といったもので書いてみたいと思った始まりのため、作品としては戦争中心というわけでなくあのような終わり方になりました。
戦争や戦闘に期待していた方には大変申し訳ありませんがどうかご了承ください。




