<青い空の青い飛行機>
あの日、飛行機墜落の警報が流れたとき、私は練習生か訓練中の事故なのかと思っていた。だが、すぐに防空飛行隊の飛行機が飛び立ち、高射砲陣地もあわただしくなったことで私の中で少しずつなんだか嫌なものが溜まっていくような感じがした。
結果的に私のそれは当たっていた。飛行機一機で帰ってきたファルコ以外、レイン隊長やチャック、五隻もいた艦隊のうち誰も帰ってくることはなかった。しかし問題はそれだけではない。何があったのか、なぜあのようなことになったのかという情報が私には一切入って来なかったのだ。
病院にファルコを見舞いに行っても麻酔で意識がないままであり話を聞くこともできない。調査をしている部署や上層部に知り合いがいるわけでもない。私は何もできず、何もできないままモヤモヤとした気持ちのまま待つしかできなかった。
・・・。
あの時の悔しさは今でも覚えている。調査によれば事故からの敵襲ということによる艦隊の喪失ということであり、私がいてもいなくても結果は変わらなかったかもしれない。だが結果はどうだったにしろその場にいられなかったというのが今でも私の心のどこかに引っかかっている。
だが、いつまでもそんなものを引きずっているわけにも行かない。部隊の無い間、私はかつての教官に頼み込んで訓練を重ねた。三人の分も頑張っていくためにはそれしかないと思ったのだ。そしてそれが今では私自身がエリート部隊の教官、ある目的のために四人引き抜いて育て上げることにした。
そして今日、その目的は追う一段階先へと進む。
先に空へと飛び立った青い飛行機は、その青い機体を大空に溶け込ませながら上昇していく。そしてたまに白い雲の前でその機体を晒し、すぐに大空の青にその姿を紛れさせる。あの飛行機にはあの人が乗っている。そう考えるだけで私の気持ちに気合いが入る。あの人は今でもこの大空で戦える人なのか、それともすでに空の戦いをすることができる人ではなくなってしまったのか、それを私が確かめるのだ。
・・・・・
「速い!」
空を飛ぶそれは私よりも速くすぐに距離を引き離される。背後を取れると思ったが、これではどうしようもない。一度距離を取りつつ上昇して様子を見る。
「ああっもう!」
青い空に紛れる青い機体はぱっと見では見つけることはできない。地上で見たときはまだ分かったが、飛行メガネをしながらそれを見つけ出すのは思いのほか難しい。見つけたときにはすぐ後ろまで迫ってきていて私はすぐに機体を急降下させながら回避行動をとる。
状況的には不利な状況だが、これから先が私の腕の見せ所だ。私もファルコももともとは対飛行艦戦闘が中心だった。しかし私はファルコのいない間に訓練を積み重ね、対飛行機戦では私に分があるはずだ。だが、その考えもすぐに打ち砕かれることになる。
ファルコの機は速度だけでなく旋回能力すらもこちらを上回っている。技量だけではどうしようもない機体性能差がそこにはあった。たとえ後ろをうまくとれたとしても、速さと旋回性能から簡単に背後へと回られる。何度か行けるところまではいったが、結局一度も状況を巻き返せることもなく、模擬戦闘は終了した。




