<地上の鷹>
「おお!君がホークのテストパイロットか!?」
「はい?」
「そうか、そうか―――」
男は軍服ではない服を着ていて年齢も軍人にしては取りすぎている。それに俺の困惑の返事を肯定と受け取ったのか、話を進めようとする。
「ちょっと待ってください」
俺は話をさえぎって話を聞こうとする。話がかみ合わず、迷走する俺と男の話に整備兵が加わりまとめると、どうやら俺は新しい飛行機のテストパイロットとしてここに呼ばれたようだ。すでに前線に出ている優秀なパイロットは戦線の維持や編隊の再編成や訓練といった理由から引き抜けず、卒業したばかりの練習生もテストパイロットとするには実力不足、そういった理由から俺が選ばれたらしい。
「説明しよう。こっちだ」
話もそこそこに機体へ向かって歩いて行ってしまう。俺は隣にいる整備兵にこっそりと聞く。
「そもそも・・・あれは誰ですか?」
「帝国飛行研究所のフイアット博士です」
見るのは初めてだが、名前だけは聞いたことがある。イーグルとファルコンの設計を行なったという帝国飛行界の重鎮だ。ラマガーは博士が新しく作る飛行機の繋ぎとして若手が作ったということだったはずだ。俺は博士に小走りで追いつくとその説明を受ける。
博士によればこの機体はホークといい、上下にある翼の幅を変え、最新のエンジンに12.7㎜機銃を二挺搭載した飛行機なのだそうだ。また、機銃は銃身を長くすることによって従来の同じ12.7㎜機銃と同じ大きさでありながら威力を上げることもできており、機銃だけで飛行機とも飛行艦とも戦えるようになっているという。
「それで速度はどれほど出るのでしょうか?」
「さあなぁ。それは君が飛ばしてみるかわからん」
適当なことを言う爺さんだが、俺は迷わずテストパイロットとしてこの飛行機に乗ることを決意する。
「それにしても随分と青い色をしていますね」
「それだけこいつに期待が寄せられているということだ」
今までの飛行機は布張りであるが、特に染めたりせずに白い色のまま使うのが普通だった。なぜなら染色には大量のきれいな水を使い、水を汚すことになるからだ。
「確かに染色や品質の高い機銃、骨格を作るには今まで以上に清潔な水がいる。しかし数で負けているのであれば高性能な機体でそれをカバーするしかないだろう」
確かに共和国の工業品の質は落ちてきていると聞いている。不良品の多さから輸出不調となり、軍事面でも数は多いがまともに動くのは半分ほどとも言われているのだ。俺が見た飛行機の翼が取れたものそれが原因なのだろう。
どうにしろ巡ってきたこのチャンスを逃す手はない。俺はテストパイロットを引き受け、さっそくその準備に取り掛かることにした。




