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SKY RUNNER -空の向こうへ続く風は-  作者: 平木明日香
第1章 空の旅路へ
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第十三話 五つの風、ひとつの甲板



------------------------------------------------



【第七班メンバー】



■ リーダー:ミリア・ブラスト


年齢:17歳/性別:女性/出身地:シヴァ大陸・辺境の浮遊要塞都市「アルスト=クラヴィス」

属性:氷(潜在)/武装:魔導槍グラシエル・ランス軽量盾フロストヴェール

特徴:

 ・男まさりな口調で、ヤンキー気質。

 ・冷静沈着な戦術家。感情を表に出すことが少なく、常に状況を俯瞰している。

 ・元軍事都市の防衛部隊出身。スカイギルドに自ら志願して参加。

 ・高い機体操縦技能と空戦戦術理解力を持ち、若くして“リーダー適性”を与えられた。

 ・トレインとは試験前から何度か顔を合わせており、静かにライバル心を燃やしている節もある。


役割:班の牽引・進行管理・戦闘指揮全般。

キーワード:「命令ではなく、“導く”力で人を動かす」



■ ジーク・ハンロック


年齢:19歳/性別:男性/出身地:ボルカン大陸・雷都「オルド=ダスト」

属性:雷/武装:重式エアアーム《ヴォルトクラッシャー》

特徴:

 ・筋骨隆々、豪放磊落な雷属の戦士。力任せに見えるが、意外に仲間思い。

 ・元鉱山警備隊の副隊長。地形把握能力と破壊力に優れる。

 ・“空”への適応はやや粗削りだが、突発的な状況に強く、突破力は高い。

 ・トレインとは反対のタイプだが、意外とウマが合う。騒がしい兄貴分ポジション。


役割:前衛突破・障害除去・乱戦時の制圧。

キーワード:「風は読まん、でも感じるんだよ、こう……ビビッと!」



■ セラ・オルディアス


年齢:16歳/性別:女性/出身地:ルクス大陸・聖都「アレリア」

属性:光/武装:魔法帳エリミナリア空間固定装置クレアライト

特徴:

 ・柔らかく穏やかな性格ながら、魔術に関しては極めて高い素養を持つ。

 ・浮遊島航路や神秘文献に詳しく、知識・分析・魔法解析の専門家。

 ・病弱な過去を持ち、肉体的にはやや劣るが、魔力制御と観察力で補っている。

 ・トレインにはやや警戒心を抱いていたが、彼の風の感応力を見て興味を持ち始めている。


役割:魔術支援・解析・情報収集。

キーワード:「見えない風にも、意味があるんです」



■ カイ・リューレンユク・ラングレー


年齢:18歳/性別:男性/出身地:ヴェントゥス大陸・低空都市「スルギア」

属性:風(操艇特化)/武装:双刃型操縦刀エアロツイン補助機スカイダンサー

特徴:

 ・操縦特化型のエリートパイロット。風読みと空間制御に関しては抜群のセンスを持つ。

 ・スカイボード・エアライド双方に対応。飛行ルート最適化の名手。

 ・性格は気だるげで淡泊だが、任務になると一変して精密な動きを見せる。

 ・トレインの風感知力を高く評価し、内心「育てたい」気持ちを持っている。


役割:操艇統括・空中戦術補佐・回避誘導。

キーワード:「空は、読みきれないからいいんだよ」




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ノエルの声が静かに消えると、風の閲覧室エア・ルーム全体へ、ごく淡い振動が走った。


それは揺れと呼ぶにはあまりにも微細で、椅子の脚が床を掠かに擦るような気配に近かった。けれど空へ生きる者たちの身体は、その程度の変化でも見逃さない。室内の空気がひと呼吸だけ深くなり、天井へ浮かぶ風環エア・サークルが、それまでよりひとつ低い音階で回転を始める。青白い風晶光が輪の縁へ沿って滑り、床一面へ敷き詰められた石板の幾何学模様へ淡い光の筋が走った。まるで塔そのものが、ここでひとつの説明が終わり、次の段階へ移ることを静かに宣言しているようだった。


「班別移動開始――指定ミーティングルームへ向かえ」


塔内へ仕込まれた魔導音声が、どこからともなく響く。男とも女ともつかない中性的な声音でありながら、冷たさよりも整った明瞭さを感じさせる声だった。その一言を合図に、閲覧室の壁面へ光の標がいくつも浮かび上がる。半透明の導線が床へ細い帯となって伸び、各班の番号とそこへ属する者たちの名が、風の粒を集めるように文字の形を取っていった。


「第七班、こちらです」


ギルド補佐官のひとりが、通路の先で手を挙げた。年若い補佐官だったが、風の塔で働く者らしく立ち姿は無駄がなく、こちらへ向けられた視線にも焦りの色がない。人を急かすのではなく、流れそのものを示すような所作だった。


トレインは腰を上げ、手元の風刻カードをもう一度だけ確かめてからその導線に沿って歩き始めた。周囲でもほかの参加者たちが、それぞれ自分の班番号を見つけ、少人数の塊へ分かれていく。第一試験までの間、ここにいた者たちはみな「挑戦者」という大きな括りの中にいた。これからは違う。五人ずつの小さな単位へ切り分けられ、それぞれ別の空を渡る。室内のざわめきも、どこかそれを自覚したあとの慎重さを帯びていた。


視線の先には、すでに数人の人影が集まり始めている。


真っ直ぐ立っていたのは、やはりミリア・ブラストだった。炎を束ねたような赤髪は室内の青白い光の下でもひどく鮮やかで、その立ち姿には「待つ」というより「すでに場の中心へ立っている」者の圧があった。彼女の横には、銀髪の長身――ジーク・ハンロックがいた。大きな腕を組み、無言で周囲を見下ろしている。立っているだけで空間を広く取る体格をしているのに、威圧の出し方が露骨ではない。隙を見せないよう意識した結果、自然と周囲へ緊張を生んでしまうタイプなのだろうとトレインは思った。


その斜め向かいには、緩やかに髪を束ねた少女がひとりいる。セラ・オルディアス。風刻カードで見た名前と照らし合わせれば、おそらく彼女だろう。薄く笑みを浮かべてはいるものの、ぼんやりしているわけではない。その目は投影地図の残光や室内の風の流れを、さりげなく拾い続けているようだった。気の抜けたように見える仕草と、実際に周囲を見ている深さのあいだに微妙な落差がある。


そして最後の一人は、壁にもたれかかるように立つ細身の青年だった。肩の力が抜けきった姿勢。線の細いフレーム。遠くの空ばかり見ているような、焦点の定まりきらない眼差し。カイ・リューレン。名前の響きそのままに、どこか風へ流されることを苦にしない人間のように見える。やる気がない、という印象で片づけるには、目の奥があまりに眠っていなかった。


「全員、揃ったようだな」


ミリアが淡々と言うと、補佐官が頷き、壁際に並ぶ扉のひとつを開いた。


「こちらが、班ごとのブリーフィングルームです。必要な戦術地図と情報端末も揃っております。どうぞご自由に」


一礼した補佐官は、それ以上余計な言葉を足さずに身を引く。扉は音もなく開き、五人を受け入れるように内側の明かりを零した。トレインたちが中へ入ると、背後で重厚な扉が静かに閉まり、風を隔てる薄い膜が一枚そこへ降りたような感覚があった。


そこで、ひとつの静寂が訪れる。


第七班、初めての“顔合わせ”だった。


部屋の内装は質素ながら清潔で、風の塔全体が持つ荘厳さを無駄に強調しない、機能本位の美しさがある。中央には円卓がひとつ据えられ、その上にはすでに試練用のホログラフ地図が淡い光を湛えていた。卓の縁には五つの席が等間隔で用意され、それぞれの前には名前の記された細いパネルと、情報端末、風刻カードを差し込むための浅い溝が設けられている。壁面には補助地図や筆記用の板、空域記録用の水晶盤が収納され、ひと目で「考え、決め、動くための部屋」だと分かる造りだった。


トレインが自分の席へ近づき、腰を下ろすと、隣へ立っていたジークがぐっと腕を組み直し、ニヤリと笑った。


「おう、試験で見てたぜ。あんた、なかなかやるな」


声は低く太い。体格そのままに押しが強そうな響きなのに、不思議と嫌味はなかった。真正面から見れば銀髪の青年は想像以上に大柄で、肩幅も広い。けれどトレインの飛び方を「見ていた」と言う目には、相手を品定めする冷たさではなく、同じ空を走った者への率直な興味が浮かんでいた。


「……ありがとう。あんたも中々派手だった」


トレインがそう返すと、ジークは鼻を鳴らすように笑う。


「はっ、褒め言葉と受け取っとくぜ」


その豪快さに、室内の硬さが少しだけほどけた気がした。


反対側ではセラがすでに手元の魔導端末へ触れ、卓の中央へ浮かぶ地図の補助情報を次々と開いていた。細い指が迷いなく画面上を滑り、その動きは研究者のように静かで、奏者のように無駄がない。


「ここ、空気の流れがすごく安定してる……地下の風脈を利用してるのね。ギルドの制御術式、さすがだわ」


独り言のように零したその言葉へ、壁際にいたカイが気だるげな口調で返す。


「……俺たち、空を走るんだろ? 地上の話は今はいいよ」


皮肉に近い物言いだった。けれどセラは気分を害した様子もなく、やわらかく笑う。


「でも大事よ。空に浮かぶものは全部、どこかの“根”を持ってる。忘れちゃだめ」


「詩人みたいなこと言うなあ」


「事実だもの」


やり取りは軽いのに、その内側には互いの考え方の違いがすでに見えている。カイは結果や動きへ直結するもの以外を余分と捉えやすいタイプで、セラは逆に見えにくい構造や背景まで含めて状況を読むのだろう。どちらも試練には必要な視点だと、トレインは聞きながら感じた。


その空気の上へ、ミリアが淡々と割って入る。


「無駄話はあと。トレイン・フェザーネット、あんたが最後だった。――第七班、ここで初顔合わせだ」


声は高すぎず、低すぎず、よく通る。誰かを威圧するほど押しつけがましくはないのに、自然と耳が向いてしまう音量と切れ味があった。彼女は円卓の一角へ立ったまま、視線を全員へ順番に向けていく。相手を見ている、というより、その場の重心を自分の手元へ寄せているような見方だった。


「私は、ミリア・ブラスト。基本的にはなんでもイケる口だ。戦闘と航法、両方任せてくれたらいい。この班のリーダーとして、必要な采配は私が下す。異論は?」


問いかけというより確認だった。


「ねぇよ」


ジークが即答する。力で押し切ることに抵抗がなさそうな男が、こうもあっさりリーダーを認めるのは、それだけミリアの実力が分かりやすいのだろう。


「私は異論よりも提案が好きだわ」


セラが、端末から目を上げて微笑む。


「……適当にやって、ひとまずは落ちないようにするよ」


カイは肩をすくめた。その気の抜けた言い方が、開き直りにも本音にも聞こえる。


ミリアは目を細めたものの、わざわざ咎めたりはしなかった。


「よし。じゃあ、まずは島No.17からのアプローチを確認する」


彼女が円卓へ手をかざすと、ホログラフ地図が波打つように切り替わり、全体のルートから最初の島周辺だけが拡大される。浮かび上がった立体図には、島の輪郭だけでなく、高度差、風脈の方向、乱流帯の発生予測、着陸可能域らしきものまで重ねて表示されていた。


「航路、地形、気圧変動、敵性情報……セラ、調べてくれ。ジーク、突入ルートの選択肢と戦術配置、頼む。カイ、風脈の経路スキャンと航行補助。トレイン、あんたは全体の風の流れを感じて、異常兆候があったら即報告」


役割分担が、驚くほど自然だった。迷いもなければ見栄もない。自分が何をし、誰に何を任せるかが、彼女の中では最初から見えているようだった。


全員が、無言で頷く。


その頷きは従属のしるしではない。むしろ、この場ではその采配が最も早く、合理的だと理解した者たちの同意に近かった。第一試験を越えた者たちなら、誰もが自分の実力へある程度の自負を持っているだろう。それでも、ここで互いの役割を曖昧にしたまま試練へ出るほど愚かではない。


風が、彼らをひとつにしようとしている。


この小さな部屋がこれから空を翔ける五人の“第一の甲板”になるのだと、誰もが言葉にしないまま感じ始めていた。


「……さて」


ミリアは立ち上がったまま、風の地図を指差す。


「まず、全体のルートを可視化するぞ」


彼女が中央の円卓へ備えられた魔導端末へ手を触れると、ホログラフの投影がまた更新された。空中へ浮かび上がったのは、五つの島とその周囲の空域を示す立体マップだった。島にはそれぞれ番号が振られており、薄い光のラインで航路が繋がっている。ラインは単なる順路ではなく、風脈の流れと重なりながら、ところどころで分岐し、消え、また現れている。


「これが第七班の試験ルート。順に、No.17、21、08、03、そして最後に“封印指定”の島……」


言いながら、彼女は最後の座標だけ少し長く見つめた。封印指定。そこだけは島名も課題種別も開示されていない。青白い霧のような光で包まれ、近づこうとすると表示がわずかに揺らいで輪郭を失う。


「封印指定って、何が出るかまだ伏せられてるんだっけ?」


セラが指先でその最後の島を回転させながら尋ねる。地図の上の島は彼女の動きに応じて緩やかに回り、ただでさえ見えにくい輪郭をさらに曖昧にした。


「そう。ギルドの規定で、試験中は非公開。到達時に“開示”されるらしい。つまり、どんな課題かも、その場になるまでは不明だ」


ミリアの声に、カイが小さく鼻を鳴らした。


「試されるのは、臨機応変さってことか」


「あるいは運かもね」


彼は壁にもたれたまま、半ば独り言のように言う。


「でも運って、結局は“対応力”の別名だし」


「……言い得て妙ね」


セラが静かに頷いた。


ジークが腕を組み直し、最初の島を指差す。


「で、最初の島――No.17。ここは“風食地帯”って記録されてるな。空域の気流が激しく崩れる場所だ。たぶん、試されるのは飛行安定性と探索。俺が先に降りる」


その言い方には迷いがない。体格や戦い方だけでなく、先頭に立つことそのものへ慣れている人間の声だった。


「私もついて行くわ」


セラが手を挙げる。


「植物の密集地みたい。あたし、感知魔法も使えるし、地質や魔力流の分析は得意」


「よし、ふたりで初動班を組んでくれ」


ミリアが即座に頷く。


カイは地図の別の層を表示しながら、気だるげな声音のまま言った。


「僕は風脈のサポートをしながら上空に残るよ。島の周囲の流れが読めれば、次の島へのルートが組みやすい」


言葉は淡白なのに、内容は的確だった。風脈を読む能力が高いなら、むしろ上空から全体を見ていたほうが強い。部屋へ入ったときの力の抜けた態度からは想像しにくいが、視界の広さと判断の冷静さを持っているのかもしれない。


「……カイ、お前本当は結構考えてるだろ」


ジークがふと笑う。


「見た目、やる気なさそうなのに」


「そう見せてるほうが、敵にも味方にも余裕ができるからね。ほら、こうして今も、ちょっとだけ安心したでしょ?」


「してねえよ」


そう返しながらも、ジークの口元には笑いがあった。


トレインも自然と笑みを浮かべる。


「……なんか、意外とバランスいいかもな、この班」


口にした瞬間、言葉が少し軽すぎたかと思った。けれど、ミリアは即座に一言だけ返した。


「意外、じゃなくて必然よ」


彼女の視線はホログラフ地図へ向いたままだった。


「試験の班分けはランダムじゃない。“風の導き”と、“ギルドの意思”が混ざってる」


その断定の仕方が妙にしっくりきた。単なる抽選なら、ここまで噛み合った役割が最初から見えることは少ないだろう。もちろん偶然もあるかもしれない。けれど、ギルドが第一試験の結果や各人の傾向を見たうえで組み合わせ、さらにそこへ“風の導き”という名目を重ねているのだとしたら、この班分けはただの都合以上の意味を持つ。


「そういうもんなのか……」


トレインがぽつりと呟くと、セラが柔らかく重ねる。


「そういうものなのよ」


その言い方には説明以上の感覚があった。理屈で証明するものではなく、空の民として暮らすうちに自然と身につく受け止め方なのだろう。


「きっと、この出会いも試練のひとつ」


その言葉に、ふと部屋の空気が静まった。


それぞれが互いへ視線を向ける。ジークの目には剥き出しの敵意はない。セラの微笑みには油断させるだけではない芯がある。カイの半開きのような眼差しにも、決して眠っていない鋭さが潜んでいる。ミリアは一歩引いたところから、その全部をすでに見ているような顔をしていた。そしてトレイン自身もまた、この五人の中で自分が果たせること、自分が見ていなければならない風の癖を、無意識のうちに探り始めている。


ミーティングルームの窓の外では、風柱が青白い螺旋を描きながら天頂へ吹き上がっていた。


ここから始まる試練。


五つの島。未知の空域。班行動。封印された最後の島。


不安がないわけではない。むしろ未知の量は、第一試験の比ではなかった。自分一人の判断だけで走るのとはまるで違う。仲間の速度も、感覚も、怖れも、全部が重なり合ってひとつのルートになる。誰か一人の躓きが班全体の流れを狂わせる可能性もある。逆に言えば、一人では見えなかった風が、五人なら見えるかもしれない。


けれど今、この部屋の中にはたしかに風が流れ始めていた。


それは目に見えるような強い流れではない。互いの言葉の置き方、視線の交わし方、地図へ向ける集中の角度、そうした小さなものが少しずつ噛み合い、まだ名もついていないひとつの“まとまり”を作り始めている。旅団と呼ぶにはまだ早い。信頼と呼ぶには、知り合ったばかりだ。けれど空へ出る前の船の甲板には、きっとこういう微かな胎動が先に生まれるのだろう。


トレインは、卓の上へ広がる島No.17の立体図を見つめた。


風食地帯。探索。初動班。上空支援。異常兆候の察知。自分に与えられた役割は、いわば流れの変化を最初に掴む目と耳になることだ。華やかな役目ではないかもしれない。けれど、今日の第一試験で空を“聴く”感覚へ触れたばかりの自分には、その役目がむしろ不思議なくらいしっくりきた。


――風は、語る。聞こうとする者へだけ。


ダリオンの言葉がふと脳裏をよぎる。


この班でも、自分はその声を拾えるだろうか。拾わなければならない。そう思ったとき、胸の奥の火が、静かにもう一度強くなった。


ミリアが卓の一点を指で示す。


「まずはここ。No.17の西縁。風脈が不安定に見えるけど、逆にいえば、流れの隙間ができやすい。正面突入は避ける。上空から巻いて、南側の陰へ降りる」


「その南側、たぶん岩棚が脆いわ」


セラが補足する。「着地地点は選ばないと崩れる。けど、その下に地脈の溜まりがある。風晶装置が埋まってるなら、そこがいちばん怪しい」


「だったら俺が先に降りるのは変わりなしだな」


ジークが腕をほどく。「足場が脆いなら、最初に荷重かける役が必要だろ」


「単に重いからじゃなくて?」


カイがぼそっと言う。


「お前、そういうのだけは口が回るな」


ジークが苦笑する。


そんなやり取りの合間にも、地図は脈打ち、風柱は窓の向こうで青白く巡り続けていた。


第七班の最初の夜は、まだ始まったばかりだった。


それでも、トレインにはもう分かっていた。この部屋で交わされる一つ一つの言葉が、明日実際に空へ出たとき、命を支える細い綱になるのだと。だからこそ彼は、誰の声も聞き漏らすまいとしながら、卓の上の風を見つめ続けていた。


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