阻止作戦④
現在、キンメリーとディンはアメリカ上空を飛行していた。
あと数十分でイエローストーン公園に着く。
ふと、キンメリーは思い出した事をディンに質問する。
「そういえば、なぜ南極にいたのだ?人間と関わらない方法ならいくらでもあるだろうに。」
「…。我の異能は単に切るだけではないのだ。空間ごと切る、というものだ。過去に色々あってな。自分への戒めでもある。」
「なるほど。あの雪原や空の雲を切り裂いたのを見た時は刃の力だけではなかったのだな。南極へはどのように行ったのだ?」
「身体能力の飛躍的な向上もできるさ。早く走れば海の上だろうが渡れる。それで南極にたどり着いてる。」
「そうか。」
「我からも質問だ。何故我を見つけ出せたのだ?そして、お前の異能はなんなのだ?我の刃を防がれたのは初めてなのでな。」
「一つ目の問いには、そうだな。人工知能より答えてもらう。二つ目は私から答えよう。」
人工知能が入った杖のような物体が姿をあらわす。
普段は不可視の状態でキンメリーの側にいる。
「お答えさせていただきます。これまでに地球上の人間全員の活動履歴は1日3回ほどログを残しています。日時と場所程度の簡単なログではありますが。ディン様の場合は異能者でしたので、少々細かくログが残っているようです。なお、私も最近作られたばかりで、ナレッジ自体は前身の人工知能より引き継いでおります。」
「地球上の全人類だと…。ありえん。」
「そもそも、私は地球を監視するという特殊な立場なのだ。広島で異能発現した際に代行者と呼ばれる人に拾われ、そこから今に至っている。」
「代行者とは?」
「代行者も地球を監視する立場の人だ。私よりは遥かに広い領域を見ている。もちろん地球以外もな。」
「なるほど。かなりスケールの大きい話になってきたな。」
「では、二つ目の質問にお答えしよう。私の異能は原子レベルであらゆる物質に干渉できる。原子の種類によっては干渉度合いは変わるが、大抵のものは制御できると思ってもらって構わない。そして君の攻撃を防いだのは目には見えないが、不可視の圧縮された水の壁だ。当たる前に真空の刃で当てて相殺もしているがな。」
「なるほど。かなり圧縮された水の壁なのだろう。」
「あの時は咄嗟に一山分の水を使ってしまったがな。」
「我の空間を切り裂く力は物質の密度にも影響されるから、防がれたということか。」
「逆を言えば君が山を真っ二つにできるぐらい異能を強化させれば、この防壁も役に立たないだろうな。これから向かう場所にいる異能者はどのような異能を持っているのか皆目見当も付かん。」
「そうだな。話が通じれば良いのだが。」
「そろそろ着くぞー。あれがイエローストーン公園だ。」
イエローストーンに降り立つ、その瞬間ー!