降臨・出会い
代行者と呼ばれる存在。
高次元空間を抜けた後は地球近くにある宇宙空間に出ることになる。
三次元空間用の身体、人間の体で再構築し、周りを限りなく透明に近い防壁で包み、その身はゆっくりと地球へ降り立つー。
「この身で地球に降りるのは約200年ぶりか…。」
この時地球は人間同士の戦火にまみれていた。
戦争は見るに耐えないが、人間の文化を形成、且つ進化を促してきた側面もあり、戦争自体には一切介入しないスタンスを貫いてきた。
今回降り立つのは日本の東京ー。
夜にも関わらず、炎で真っ赤な空を様相している。
世に言う東京大空襲だ。
「ふむ…。ここに地球の脅威となるものは感じぬな。」
そう言いながら夜の空に浮かぶ代行者は、真っ赤に燃える東京を後にし、各世界を回るのであった。
「むう。これまでにない規模の戦争か。あらゆる兵器が人間の命を奪っていく。ただ…この程度では地球運営にはいささかもゆるぎはせぬ。」
その身がアメリカの本土に到達した際に、何やら振動を感じた。
核兵器の実験である。
「これは大きなエネルギーだな。まさか人間がここまでのものを生み出すとはな。だが脅威と判断するにはまだまだだな。」
……、ただ嫌な予感がした。
このアメリカと日本は戦争しているようで、アメリカ
この兵器を日本に使用しようとしているようだった。
暫く日をおき、広島に原爆が投下されるのも見届けた。
「ふむ…。一瞬にして数十万人が死んだか。残った放射能でさらに多くの人が死ぬだろう。」
「これで日本は降参し、地球規模の戦争は終結するだろうな。だが地球の脅威は検知できなかったな。もう一度日をおき、地球に来てみるか。」
そう言い残し、一旦宇宙空間に戻ろうとする。
その瞬間、何かを察知した。
「……!これは…」
明らかに科学文明とは異なる大きなエネルギーが一人の人間に集約されていく。
「まさか、これなのか? しかし…。」
急遽、原爆投下現地に向かい、その目の先には人間の赤ん坊がいた。
辺りは焼け野原になっていて、人影も見当たらない。光としても目に見えるエネルギーが赤ん坊に入り、その身を守ったのだろう。
「……。これも何かの縁か。」
代行者の手は赤ん坊を抱き、そして光とともに姿を消すのであった。
これが人間の世界における大きな転換となることは代行者自身も予想していなかった。
代行者自身が人間の親として赤ん坊を育てることにした日から数十年後ー。