ディン日本来訪
時は平成の中盤。
人間社会は着実に文化を発展させ、異能者達も恩恵に預かろうとするものが大半であった。
ディンは日本の九州を来訪していた。
戦後から復興した日本、そして故郷であるところに一度立ち寄りたかったからだ。
我は異能者になった時点で歳の取り方が遅くなり、いまだに青年の姿を保っている。
戦後から60年が経過しており、当時の血縁者は大半が他界している。存命の人がいたとしてもかなり高齢で、今の我と会ったとしても思い出せないだろう。
先祖の墓参りを一通りすませると、東京に戻り、暫くは人間社会に身を埋めて暮らすつもりである。
身分を証明するものや当面の金は裏のツテで用意してもらったが、問題は住居と仕事だな。
そうこうしているうちに東京に着くー。
並び立つ高層ビルに、以前とは比べ物にならないほど街並みが清廉としている。
九州も見てきたが、はるかに比べ物にならない。
「テレビで見ていたが、実際に来てみると違うものだな。」
不動産とアポはすませているので、今日下見して、よければそのまま契約するつもりだ。
明日からは職探しかー。いろいろ気が滅入る。
以前とは比較にならないほどテクノロジーが業務に取り入れられている。我についていけるだろうか。
いや、死にものぐるいでついていかなければならない。
…、何やら先ほどから頭に音らしきものが聞こえる。
響いてくる、といった表現が正しいだろうか。
それがだんだんハッキリし、声らしきものに変わる。
(……ィン。…ディンよ…)
(…!?貴様は何者だ!?)
ディンは辺りを見渡すが、怪しき人物や影らしきものは見当たらない。
(ようやく通じたか。私は…、最後の通り名はカタンであった。そう呼ぶが良かろう。)
(何の用だ?)
(そういきり立つな。近い将来、地球に大きな災害が来る。その時の為に力を貸して欲しいのだ。)
(根拠もないのに何を言ってるのだ?お前は?)
(根拠なら…ある。これを見るがいい)
突如、ディンの視界に宇宙が広がる。
目の前に青き地球が浮かぶ。
(ーっ!?)
(慌てるな。其方の意識だけ宇宙に飛ばした。肉体は地球にあるから心配する必要はない…さて、時間を進めるぞ)
地球が少しずつ赤みを帯びていく。
(これはー…!)
(地球の内部が表面に出てしまっている状況だ。)
見る見るうちに地球は赤くなっていき、青いところや白いところはどこも無くなっていく。
もはや地球の姿はしていなかった。
(こんな…、ばかな!)
(…、そしてもう一つ。キンメリーやアレクサンドルは知ってるだろう?)
(ああ、昔世話になった。)
(彼奴らがこの事象に関与する確率が高いのだ。)
(あの2人が…!?確かに突如消息を絶ち、こちらからは連絡不能となってしまったが。)
意識が肉体に戻り、ディンはハッとする。
(…、荒唐無稽に思われるが、先程の内容は事前に共有しておいた。今すぐ信じなくても構わぬ。だが信じる時が来るだろう。その時にまた相見えよう。)
(!?ま、まてー)
念話のようなものが終わる。
「なんだったんだー…。」
もどかしさを残しつつ、下見を行い、そのまま住居を確保するのであった。
このカタンこと、代行者とディンの接触は後のナンバーズ設立に繋がるー。




