アステマの哄笑
ぱたり。
オレは前のめりにたおれこんだ。スク〇ェア系の戦闘不能状態ばりにたおれこんだ。
……もうだめだ。こんどいうこんどはもうダメだ。
オレ異世界史上最大のピンチ。なんという試練だろう。精神ダメージが計り知れない。もう立ち直れない。
「ダイスケさん、だいじょうぶですか!」
「……ダメだ」
「お主。気をしっかりもて」
「……無理だ」
☆
……しばらく倒れ込んでいたオレは、ニケアとフェスに抱き起こされ、水を飲ませて貰った。
ニケアの膝枕で2人の顔を眺めていると、すこしずつ気持ちが落ち着いてきた。じぶんの心の中に、よりかかるための棒を立てるように考えをめぐらせる。
アステマが男の子だったというのは大ショックだ。しかし落ち着いて考えてみれば、本命嫁のニケアもいるし、オレを慕う新規メンのフェスもいる。そう、いわば十分に嫁リスクヘッジはできている。……だとすれば、ひとりぐらい昨今流行の『男の娘』枠が存在しても無問題ではなかろうか? むしろ、積極的にそうあるべきではないだろうか?
そもそもオレは頭が固いのではないだろうか? なにが大切か? そこをよく考えねばならない。
つまりのところ、可愛ければいいのではないだろうか?
可愛くない異性よりも可愛い同性。そもそも性別がどうこうなんて……いまどき、古いんじゃあ、ないのかな?
そうだ。アステマは悪魔だし……。オレ達人間のちいさな常識を当てはめることじたい意味が無い。可愛いことには変わりが無いわけだし……。
……でも、
……やっぱりオレ。
女の子がよかったです。西安先生。
そんな葛藤するオレの様子を、まばたきもせずにマジマジとみているアステマ。その紅い瞳と目が合った。こいつ、こんなに可愛いのに男の子なのな……。男だとわかったいまでも、ぜんぜん可愛いじゃんか……。
同性だとは驚きだよ。オレの負けだよ。考えを改めるよ。時代は変わったよ。時代の変化にオレもすこしづつ慣れていこうと思うよ。すぐにはムリかもしれないけどさ……。
「それにしても驚きました。アステマさんが男の子だったなんて……」
なぜかホッとしたような表情をみせるニケア。
「アステマどのは悪魔なのじゃろう? 珍しいことではないと聞く。そもそも性別がないとも聞くぞ」
……その情報。もっとはやく知りたかったよ、フェス。
「じゃあさーダイスケも納得したみたいだし。このタイミングであたしのやつ。みてみる?」
そんなことをいい、嬉々として自身の黒レザーのホットパンツに手をかけるアステマ。
「って、なにをするんだよアステマ!」
「せっかくだから、みせたげる。ダイスケがさわった……ヤ・ツ。キャハハ」
「いや、見慣れているオレはともかく。ニケアやフェスにみせるなよ! おまえ、そういう趣味か!」
「いいから、いいから。いい機会だからさ、みんなみてみて!」
無邪気にそういい。ぐいっとパンツをずらした。
オレ達の視線はアステマの下半身に注がれる。
――そこには。
ポロンと重力にひかれる黒いシンボル。
「フアッ!? オレのよりデカい!?」
「そんなのダメです!」両手で顔をおおっているニケア。
……指の間隔が広いよね。隠せてないよね。バッチリみえちゃうよね。
対してフェスは片眼でガン見「ほう、……これは。立派な」
「そう、立派な……って、え?」
アステマの黒いシンボルは、先っぽがトランプのスペードみたくなっている。
「!? 尻尾。ですよね……」
「立派な、尻尾じゃな」
そこには、悪魔のしっぽ。
「………………しっぽ」あ、これって。もしかして。
アステマの表情がいっきに緩み。その肩が震えた。
「ひっかかった!! ひっかかった!! キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
バンバンと地面を叩きながら、アステマはころげまわった。




