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⚔️伝説の剣。福引きしたら、ドラゴンスレイヤーだったらしい……。  作者: 黒武者
第6章:襲来

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第71話 臨界の咆哮、あるいは祈りの残響

フェリオスの意識は、泥の底に沈んでいた。


どこまでも重く、暗く、輪郭すら曖昧になっていく。

だが、その奥底で――異様なほど鮮明に響く声があった。


『汝、我に対するその悪意、我らドラゴンに対する敵意と見なし参上したが……お主が元凶であったか』



地層の奥から響くような、重く古い声。


だが、今のフェリオスにそれを理解する理性は残っていない。


(殺せ……)


ただ、それだけが残る。


(殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ――!!)


「‡§¶Δ……!!」


視界が潰れる。

世界が剥がれ落ちる。


仲間も、街も、空さえも消えた。


最後に焼き付いたのは、地下で見たあの不吉な文字。


――【ERROR】


フェリオスはキラーを振り上げた。


全てを叩き潰すための、一撃。


だが。


振り抜く前に――力が抜けた。


「……あ」


膝が折れる。


糸が切れたように崩れ落ち、キラーが手から離れる。


重い音を立て、地面に突き刺さった。


「フェリオス!!」


ルシアが叫び、地を蹴った。


思考よりも先に身体が動く。


一直線に距離を詰め、そのままスレイヤーを振り抜いた。


「この……っ!!」


確かに、当たった。


手応えがあった――はずだった。


だが、その瞬間。


ドラゴンの動きが、止まった。


空中で、不自然な静止。


巨大な首がゆっくりと下がり、その瞳がルシアを捉える。


怒りでも、敵意でもない。


ただ、見ている。


測るように。確かめるように。


(……なんだよ)


背筋が冷える。


身体が、動かない。


スレイヤーが脈打つ。

まるで、その視線に応えるように。


次の瞬間。


――光が弾けた。


違和感が走る。


斬ったはずなのに、押し込めない。


それどころか。


「……っ!?」


ズルリ、と。


ドラゴンの傷口から溢れる血が、スレイヤーへ吸い込まれていく。


まるで、喰っている。


「なんだよ、これ……!」


剣が勝手に“啜っている”。


もっと寄越せとでも言うように。


鼓動が乱れる。


ルシアの意思と、剣の衝動が噛み合わない。


その一瞬の隙。


「ルシア!!」


横から衝撃が叩き込まれた。


ロゼリアが盾で尾撃を受け流し、ルシアを強引に押し退ける。


直後、さっきまでいた場所が抉り飛ばされた。


「何してるの! 下がって!!」


リフルの怒声。


だがルシアは、すぐに動けない。


(……剣が、おかしい)


その感覚だけが、頭にこびりつく。


戦場は、崩れ始めていた。


ユシャーン、リフルたちは魔物の群れを食い止めるだけで手一杯。

ストーリアの魔法も、致命傷を逸らすのが限界。


誰も、“届いていない”。


「……魔力が、持たない……!」


ルミナス、ティア、エルド達、後方支援が削られていく。


確実に、じわじわと。


その時。


ドラゴンの喉奥が、太陽のように輝いた。


圧が膨れ上がる。


空気が歪む。


「離れて!! 来るわ!!」


ストーリアの叫び。


だが、間に合わない。


距離が足りない。


その時


ロゼリアが倒れたフェリオスへ駆けよった。


迷いはない。

考えるより先に、身体が動いていた。


だが――影が落ちる。


見上げるまでもない。

頭上から振り下ろされる、圧倒的な質量。


巨大な爪。


(――受けきれない)


理解した瞬間には、もう遅い。


それでも。


「……させないッ!!」


咄嗟に剣を構え、全力で迎え撃つ。


激突。


ガギィィィィンッ!!


空気が弾けた。


腕に伝わる衝撃は“重い”などという次元ではない。

骨ごと砕かれるかと思うほどの圧力。


踏み締めた地面が抉れ、靴底が滑る。


耐えきれない。


次の瞬間、愛剣ごと弾き飛ばされた。


身体が宙に浮き、背中から地面へ叩きつけられる。


「……ッ、かは……!」


肺から空気が抜ける。


視界が白く弾け、呼吸が一瞬止まる。


それでも――


(立たないと……!)


腕に力を込める。


だが、その隙すら与えない。


ドラゴンが咆哮を上げ、上空へ跳ね上がる。


空気が震える。


熱が渦巻く。


そして、そのまま。


一直線に、ロゼリアへと降りてくる。


「ロゼリア!!」


ルシアとストーリアの叫び。


間に合わない。


距離が、致命的に足りない。


ロゼリアは、歯を食いしばる。


逃げ場はない。


剣も、ない。


それでも――


(ここで終わるわけには……!)


指先が、何かに触れた。


硬い感触。


冷たい。


だが同時に、ぞっとするほど“嫌な気配”。


素早くそれに視線を落とす。


そこにあったのは――


『DRAGON KILLER』


(……これを?)


一瞬で理解する。


“使ってはいけないもの”だと。


触れただけでわかる。

これは、剣じゃない。


だが。


迫る影が、すべてを塗り潰す。


「――それでもッ!!」


掴む。


瞬間。


全身に異物が流れ込んだ。


「ぁああああああああああああああッ!!!」


焼ける。


血が沸騰する。


骨の内側から、何かが食い破ってくる。


聖騎士としての本能が、全力で拒絶する。


それでも、ねじ伏せる。


腕を振る。


――ザシュッ!!!


空気を裂く音が、明らかに変わる。


これまで弾かれていたはずのドラゴンの肉が、確かに裂けた。


鮮血が噴き出す。


ドラゴンが、初めて“痛み”に反応した。


咆哮。


怒りと苦痛が混ざった、耳を裂く絶叫。


だが――止まらない。


空中で体勢を立て直し、再び大きく口を開く。


その奥に、光が集まる。


膨れ上がる。


圧が、空間ごと押し潰す。


「ダメよ……!」


ストーリアの声が震える。


距離が足りない。


間に合わない。


全てが、遅い。


「ダメよ! ダメよ! ダメよ!!」


声が裏返る。


それでも止められない。


「逃げて!! ロゼリア!!」


叫ぶ。


喉が裂けるほどに。


それでも――届かない。


(……そうだ、アレよ!)


震える手を、無理やり押さえ込む。


呼吸を整える。


崩れそうになる意識を、引き戻す。


「……大丈夫、大丈夫、ここにある」


自分に言い聞かせる。


「まだ、終わってない……!」


胸元に手を伸ばす。


取り出す。


渡された小さなお守り。


それを、強く握りしめる。


「お願い……!」


声が、かすれる。


それでも、絞り出す。


「届いて……!!」


祈る。


その瞬間。


キラーの“殺意”。


スレイヤーの“飢餓”。


そして――祈り。


相容れない三つの力が、無理やり引き寄せられる。


一点へ。


収束する。


次の瞬間。


――光が、落ちた。

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