第四話 予想外の想い
まとまりがないので書き直す予定ですが、一応上げてみます……
沈黙が場を支配する。
「……」
「……」
「はぁ……」
セレスとフレイヤが呆然としている中アルクは一人ため息を吐く。
「ん?あぁ、そう言えば、言っておらんだな」
ウルドは何処か気が抜けるようにそう言う。
「取りあえず、此処で話すような事では無いのでそちらに行っても?」
「あぁ、構わんよ」
「ありがとうございます。それでは、二人とも行きましょうか」
ウルドの了承を得たアルクはセレスとフレイヤの肩を軽く叩き呼び戻す。
「っえ……うん……そうね……」
「っは……はい……」
二人は未だ処理しきれない言葉を抱えながらアルクの後ろを呆然とついて行く。
「それにしても……まだ、この世界に溶け込む気は無いの?」
そう、アルクに問う言葉はアルクの脳へ直接語りかけるもので、フレイヤとセレスには聞こえない。
「……ありませんよ。僕はこの世界の人間ではありませんし」
アルクは用意していた言葉を告げる。しかし――、
「それは違うぞ?」
ウルドにすぐに否定される。
「お主も分かっておるだろ?」
「……」
「いい加減、逃げるのを辞めたらどうじゃ?」
「……」
アルクは答えない。図星だから。しかし、それを覆す事をアルクは決して行えない。
「怖いのか?」
「……」
「長く幸せを味わっていないとそうなるのか……なるほどな。約二十万年……」
「っ……」
ウルドが小さく呟く言葉にアルクは歯を食いしばる様な表情を見せる。
「アルク君?」
そんなアルクの表情に気が付いたのかセレスが先頭を歩くアルクの顔を覗き込む。
「……どうかしましたか?セレス様」
「いえ……アルク君の表情が険しくなったような気がしたので……」
後ろに居て見えないはずの表情を感じ取ったセレスが申し訳なさそうに言う。
「いえ、大丈夫ですよ」
そうこう話していると神殿……と言うより、日本風の社と言った方がしっくりくる建物が現れる。
「ここが、精霊様の神殿よ」
「おっきいですね……」
セレスが神殿に見とれていると、風が吹く。しかし、優しく包みこむような温かい風だ。
「来たね」
そう言い現れたのは、10歳くらいの少女だった。
「精霊様、お久しぶりです」
フレイヤはそう言うと片膝を付き、頭を下げる。
「うん、フレイヤ久しぶりじゃな」
満面の笑みを浮かべ、フレイヤの頭を撫でるウルドの姿っを見たセレスは、少し驚きつつも深く頭を下げる。
「初めまして。フェルス帝国皇女、セレスティーナ=ジャネット=フェルスです」
「うむ。見て居ったから知っておるよ」
そんな風に話している三人を横目にアルクは微妙な顔をしていた。
「また、のじゃロリかよ……」
小さく呟く、アルクにウルドは訝し気な目を向ける。
「お主、今失礼なことを考えたじゃろ」
「気のせいだと思いますよ?」
「ん?いや嘘じゃな」
「いえ、気のせいです」
「嘘じゃ!」
「気のせいですから」
「だから!嘘じゃろ⁉」
「いえ、いえ、気のせいです」
「むぅ……」
ムキになり、嘘だと言い張るウルドにアルクは何処か楽し気に同じ返答を続ける。
そんな、楽しそうに対応するアルクにセレスとフレイヤは目を見開いていた。
「はぁ……まぁよい。さて、如何する?」
ない胸を張り、威厳を漂わせようとしているウルド。
「あの、先に一つ聞きたい事が……」
「ん?あぁ、アルクの過去についてか?」
「はい……」
セレスは遠慮がちに言うが、その中には密かな決心があった。
例えアルクに嫌われようと今のアルクを救いたいと……。
「お主は良いのか?」
「はい。と言うか、ばらしたあなたが言いますか?」
「ハハ、確かにそうじゃな」
腕を組み大声で笑うウルドにアルクは若干ため息をつく。
「さて、話そうか……と言う前にここで話すには、ちと長い話になるでな。中に入ろうや」
ウルドがそう言うと共に社の扉が勢いよく開く。
「流石……精霊様……と言う事でしょうか?」
セレスは唖然とそう呟く。
「ハハ、違うぞ?先もアルクが言っておったがワシは精霊じゃ無い。それも、含め中で話そう」
そう言い笑みを見せるウルドを先頭に四人は社の中へと入って行く。
「はぁ……凄いです……」
セレスがそう漏らすのも、社の内装がセレスにとって珍しいものだったからだ。
「そうか、この国はこのような文化は無いんじゃったな」
フェルス帝国……と言うよりこの世界に今セレスが目にしている文化は存在して居ない。
なにせ、社の中は正しく神を祭る社の様式その物だったのだから。
正面に鏡が置かれ、酒や米、塩などが置かれている台などもある。
「さて……」
ウルドはその声と共に手を一回叩く。すると、四人分の座布団とお茶が現れる。
「あ……なんか、とんでもないものを目の当たりにした様な……」
「そうですね……」
そう言いなぜか諦めた様な表情になる二人。
「ハハ、これを見て驚かぬのはお主が初めてじゃな。アルク……いや二人目か」
ウルドはそう言うと楽しそうに笑みを浮かべ座布団に腰を下ろす。
「よっと……何、お主らも遠慮せず座るとよい。茶も好きなように飲め」
「分かりました。それでは失礼いたします。」
「分かりました……」
「……」
何処か恐れおののいているセレスとフレイヤに対しアルクは相変わらず堂々としていた。
「さて、まず何から聞きたいかのぅ?」
「「アルク(君)の事を!(お願いします!)」」
二人はウルドに迫る様に言う。
「ワハハハ、愛されておるのぅ……懐かしいわ」
ウルドはアルクを横目で見ながらそう言うと、最後小さく何かをつぶやく。
「分かった。それじゃぁ、アルクの事を話そうかのぅ。と言っても特に話す事は無いんじゃ。ワシが知っているのはアルクがもう一つの世界から転生してきたと言う事だけじゃ。他は何も知らん。ただ、一つだけ気になる事もある」
「転生してきた……と言う情報だけでも十分処理しきれないのだけど……気になる事って何ですか?」
「うむ、アルク。お主に父親は居るのか?」
何処か神妙な面持ちで問うウルド。
「ウルド様、それはどう言う事ですか?」
「いや、わしもいまいち分かっておらんのじゃ。ただの、お主の体に流れる血に現代の人間の血が一切混ざっておらん」
ウルドはそう言いながらアルクを観察用に凝視する。
「それは僕もよく分かりません。そんな事は初めて聞きました。それに、母は父親の事を一切話しませんでしたから」
「そうか……まぁ、それは良い。それより、お主ら二人から何か質問があれば答えるぞ?わしは話すのが苦手でな。聞かれた事に答える方がよいわ」
ウルドの言葉を聞き、いち早く手を上げたのは……
「では、私からよろしいですか?」
セレスだった。
「うむよかろう、ヴェルダンディ……」
「ん?」
「っと、すまん間違えた。あまりにも雰囲気が似とるもんでな。それでセレスだったな。気来たことは?」
「はい。アルク君はどうして転生したんですか?」
「それは、わしのも分からん。だが、一つ言えることはアルクはこの世界の人間じゃないと言う事じゃ。だから、異常な程の精神性を持っておる。これは、本人を前にして言う事では無いが……まぁ、アルクなら大丈夫だろう。二人ともアルクが一度死んでおると言う事だ。それは、消して消える過去では無い」
ウルドのその言葉は何処か重みがありセレスとフレイヤが息を呑む。
「まぁ、わしも既に死んでおるがな」
「「っえ⁉」」
「そんな驚く事でもなかろう。先も言ったがわしは人間でも無ければ精霊でも無い。正確には元は人間だったが人間を辞めたと言った方が良いかのう。ある人物に頼まれて……まぁそれは良い。そしてわしが成ったのは過去を司る神と言う訳じゃ」
「えっと……と言う事は私の魔眼って?」
「それは、わしの力で間違いないぞ?ただ、魔眼と言う言い方は正しくないの。名づけるなら神眼と言った所かのぅ?理屈は魔眼と一緒じゃただ、力の行使できる規模が違うと言うだけでな。それにもう一つ言えば、セレスお主もその目は神眼じゃぞ」
「っえ⁉」
と声を出し驚きつつも、ここに来てから驚いてばかりだと思うセレスだった。
「まぁ、その眼はわしの妹じゃな……とうに死んでおるが……想いを乗せたか……相変わらずロマンティックな事をする」
セレスの眼を観察するように見つめ、何処か懐かしそうに、しかし悲しそうに一人呟く。
「あの……」
「っと、すまんな。ワシの妹はお主にそっくりじゃったんじゃよ。見た目はまぁ、似ておらんが内面がのぅ。だからじゃろ。お主にその眼が宿ったのはな。大切に使ってくれるっと、私としてもうれしい」
笑みを浮かべそう言ったウルド。
「なぁ、いい加減その喋り方辞めたら?」
今までほとんど使う事の無かったため口をアルクは何食わぬ顔で言い放つ。
「っむ?それは何の事じゃ?」
「だから、そののじゃロリが鬱陶しいと言ってるんだよウル姉」
「⁉」
ウルドは驚愕した様に目を見開くと口をパクパクとさせる。
「すいません。お二人とも一度外に出貰っても良いですか?」
普段絶対にセレスに言う事の無い言葉にセレスは若干戸惑いながらもアルクのお願いに笑みを浮かべ、頭がショートしているフレイヤの手を引っ張り障子の向こうへと消えて行く。
「さて、ウル姉久しぶり……」
「もしかしなくても……ソロモン?」
「さぁ?どうだろう。正宗光希でもありアストルフォでもありソロモンでもある」
アルクは今までに無い笑みを浮かべそう言う。
そんな顔を見たウルドはゆっくりと立ち上がり、アルクの元へと足を進める。
「あぁ……………ああ…………あああああああああああああああああああああああ……っぐっぅ……ゾロボン……」
ウルドは大きな声を上げ、まるで見舐め通りの子供の様にアルクの胸に顔を埋め涙を流す。
今までのため込んだものをすべて吐き出す様に………………………。
諸事情により、この作品の更新をしばらく凍結します。
楽しみにしてくださっている皆様には申し訳ありません。
代わりと言ってはなんですが、現代隠密部隊的なものを更新していきます。
また、プロローグのみ投稿しております作品も更新する予定です
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