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出会い

「・・・7~!8~!9~!10っ!」



レフリーが両手を交錯し、ゴングが打ち鳴らされた。



「弘、お前もう辞めた方がいいんじゃないか。」



男の名は中村弘。



連敗中の嚙ませ犬ボクサー。



バンテージを外しながら、トレーナーは呟くように哀れむように弘に言った。



もう何度このセリフを聞いたのかさえもカウントしたくなかった。負けることに何の感情も抱かなくなってきている。



初めて負けた時。悔しくて涙が止まらなかった。



いつからかな・・・あんなに練習していた自分が無気力になってしまったのは・・・



「へ~ボクサーやってるんだ。」



人からこう言われたい。



ただこの言葉を言われたいだけで、しがみつくように続けているのかな?



でも、戦績は恥ずかしくて言えない。



戦績2勝(2KO)5敗



リアルアンパンマンみたいに腫れ上がった顔のまま電車に乗って家に帰る。



好奇の目で見てくる乗客にも馴れていた。車窓から見える夜の景色をボーっと眺める。



自宅のアパートがある駅に着く。



歩いて20分。



また、負けちゃったか・・・



いつも試合が終わり、打たれ過ぎて頭が朦朧としながらも、帰趨本能があるのか自宅までの道をオートマチックに帰っていた。



弘が駅前の繁華街をオートマチックに歩いていた時。



「ちょっと!止めて下さい!」



女性の怒気を含んだ悲痛な叫び。



弘は声のする方を見た。



若い女性が2人組のチャラそうな男たちに絡まれていた。行き交う人はいたけれど、皆、関わりたくないのか素通りしていた。

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