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第二十話「生まれ故郷には気になることがいっぱいって話

 

「ただいま〜」


 俺は数ヶ月ぶりの故郷に帰省していた。

 数ヶ月の付き合いしかない故郷だが、それでもホッとするもんだな。

 多分、旅行に行って家が一番だと思うあれと一緒だ。


「おぉ! シヤか、長く出かけていたなぁ。いや、よく帰ってきたな。おかえり」


 俺を見つけた門番のおっさんが声をかけてくる。

 もちろん名前は知らん。


「何か変わったことはなかったかい?」


「いや、何もなかったぞ。平和なもんだ」


「そうか。それならば良かった」


 ひとまずは安心か。

 そう思って俺が胸を撫で下ろしていると、門番のおっさんが真面目な顔になる。


「しかし、一つ言っておくことがある」


 ……やはり何か問題があったのか?


「ここはホロンダ村だ」


「……」


 真剣な顔してこいつは何を言っているんだ?


「……知ってるけど」


「うん? そりゃ知ってるだろう。ここはお前が産まれた村なんだから」


 何を当然のことを言っているんだと言わんばかりに肩をすくめるおっさん。


「じゃぁ、なんでいちいち村の名前を?」


「そりゃ、俺が門番だからな」


 ……なるほど。

 日常の中にもしれっと役割(・・)が紛れているわけか。


「それよりも後ろの二人は友達か? ザ・ならずものといった風体だが」


 門番のおっさんは手に持つ握り直しながら、門の前に戻り、俺の後ろにいる二人に鋭い視線を向ける。


 言わずもがなブライトとロトンドだ。


「こいつらは俺の部下だ。今後一緒に商売をする」


「ブライトだぜぇ」


「ロトンドでさぁ」


 礼儀正しく頭を下げる二人に、門番のおっさんは驚いて目をむく。


「あんたら商人なのか。人は見かけによらないもんだなぁ」


 商売=商人この世界のルール。

 おっさんの勘違いもやむなし。

 二人の職業はまだ、ならずものだ。


「シヤの部下ってところが気になるが、次期村長候補だった奴だ、そういうこともあるだろう。ブライトさんようこそ。ここはホロンダ村だ」


「こいつはご丁寧にどうもだぜぇ」


 そういって二人は握手を交わす。


「ロトンドさんもようこそ。ここはホロンダ村だ。歓迎するよ」


「ロトンドでさぁ、よろしくお願いしまさぁ」


 俺たちはひとしきり門番と挨拶を交わした後、その場を離れる。


 門番から距離があいたところで、ブライトが小声で言ってくる。


「なぁ、兄貴。今のが兄貴の言ってた役割ってやつかい?」


 聡明なブライトはすぐに気づいたようだ。


「村の名前を何度も繰り返して変でさぁ。なんか言わされてる感がありまさぁ」


 ロトンドも目ざといな。


「おそらく、村を訪れた人に村の名前を言えって役目なんだろ。会話に不自然さが出たとしても強制されるんだろうな」


 それを疑問に思わないけど、普通に人生を送る人達か……。


 いや、前世でも同じか。特に疑問に思わず満員電車に乗って仕事行くしな。


 前者は強制的に与えられた役目、後者は一応自分で選んだ役目。

 さてどっちが良いのやら。


「きっと、前までの俺らなら気にも留めなかったんだろうが。確かにこいつは歯車ぜぇ」


「確かにでさぁ。なんか、女神様も酷なことをなさるんでさぁ。こうなると、女神様に不信感ってのも、うまれてきまさぁ」


 ロトンドが不服そうに言う。


 丸いほっぺがますます膨らんでいる。


 だがちと不味い。


「あ、まって、一応女神とは友好関係だから。険悪にはならないで」


 常時見られている可能性がる以上、印象は良くしておきたい。

 そしてあわよくばアイテムをもらいたい。


 俺の言葉に二人は驚いた顔をする。


「兄貴は女神様と知り合い……なのか?」


「いや、知り合いというか、政治的友好関係というか、観覧者と役者というか」


「あらためて、凄いお人なんだなぁ。兄貴は」


「でさぁ」


 感心する二人。

 うむ。敬われるのは嫌いじゃないよ。

 気分がいいからね。


 そういえば、さっきの門番で思ったが、NPCの行動についての検証してなかったな。

 村長のジジイはなんか特殊だったし、次に関わったのはこの二人だし。


 ふむ。思い立ったら矢も盾もたまらずじゃ。


「えー。今から自由行動になりました。お二方は別行動してください」


「えぇ? そんなこと突然言われても、余所者が村を無断で闊歩するわけにはいかねぇぜぇ?」


 さすが実は常識人のならずもの。

 筋を通す男ブライトだぜ。


 だが、しかしここでは俺がルールだ!

 なぜなら村長より偉いからだ!


「えー、この村では私が神なので問題ありません」


「神って……。分かったぜ、ぇ何か考えがあってのことなんだろう? 別もうどうするぜぇ、なんかあったらけつ持ち頼むぜぇ?」


「じゃぁ、俺は慣れない土地なんで情報収集してきまさぁ」


 ロトンドが情報収集してくれるのはありがたいな。

 俺では見落としてしまうところも拾ってくれるだろう。


「では行くが良い、我が僕(しもべ)達よ! 夕方までには帰ってらっしゃい!」


 そうして俺たちは集合場所を決めて解散するのであった。


「さてさて、まずは門番のおっさんで実験しよう」


 俺はどんなことが起こるのか、期待に胸躍らせながら村の入り口まで戻る。


「ん? シヤどうした? 忘れ物か?」


 俺は怪訝な顔をしたおっさんを無視して、村の入り口の門をスコップで叩く。

 こいつは木の門と言うアイテムなので叩けばアイテム化できるのだ。

 そして、三回叩いて門がアイテム化すると、それは起こった。


「ああ! 門がなくなった! これじゃあ、俺は門番じゃなくて、番になってしまう!」


 突然おっさんが大声を上げるとその場をクルクル回り出す。


「バン、バン、ババン、バン、ババン、バンバン、ババババ、バンババン〜」


 ……歌ってる。

 フリーズするんじゃなくて、歌い出した。


 門を戻してみよう。


「ん? シヤどうした? わすれ___あぁ!バンバンババン!」


 これは、この門の門番っていうプロトコルなのかな?

 俺は村からちょっと離れたところに門を立ててみる。


「うむ。今日も村は平和だ」


 すると、やはりおっさんは門の前に立ち門番をし始めた。

 こんなに離れて村の何を守ると言うのか。


 しかし、これは重要な情報だぞ。

 NPCはアイテムを起点に役目を担っているケースもあると言うことだ。

 これはゲームにはなかった要素だ。


 ゲームなら門があった座標に立ち続けていたからな。

 更地にしたとしても。


 なんかこれは悪いことができそうな予感!


 あ、そうだ、村人がこの門を村の入り口として認識するかも確認しよう!

 門がない間おっさんは歌って踊ってることになるけど、仕方ない!


 ん! 門を外したら、その場で踊り出した。

 村の前までは戻らない。

 これNPCを特定の座標に固定できちゃうんじゃないのぉ?


 こりゃあ、一発目から捗るぜぇ!


「ヒャッハァ!」


 俺は急いで村の中に突撃する。


「第一村人発見!! そいやぁ!」


 村を歩いていたおばさんの前に、門をぶっ建てる。


「おや、シヤ帰ってたんだね、おかえり」


 小さな村だからな、当然顔見知りなんだろう。

 俺は見知ってないけど。


「やぁやぁ、ただいまおばさん。こんな村の入り口で出会うなんて奇遇だねぇ?」


「あら? 本当。確かウケモチノカミ様のところに行こうとしてたのに、不思議ねぇ?」


 頬に手をやりながら首を傾げるおばさん。


「クククク」


 いやまて、この門は特別にそう認識されるだけかもしれない。

 決めてかかるのは早計だぞ?


 ふふふふ。


 城の門ぶっ壊して、別の場所に建てたら入り放題とか、まだ考えたらダメだ。


 俺がどうこの情報を使ってやろうと考えていると、意識の外から何か聞こえてくる。


「ん? なんだ?」


 それはだんだん近づいてきて……砂煙をあげている?!


 まさか、門をずらしたからモンスターが?!


 だとしたらマズイ! 俺はともかく、おばさんにとっては脅威になる!


「おばさん、早く逃げ___」


 おばさんの前に体を投げ出せっ!


「ババババババッババババアッババ! やあ、シヤ。ここはホロンダ村だよ?」


「……」


 ヘッドスライディングをする形になった俺は、地面を見ながら数を数える。

 6まで数えるといいらしい。

 アンガーマネジメントだ。


 いーち、にーい、さーん、しー


「それぇい!!!」


「いてぇ!!」


 俺の踵が門番のおっさんの脛にクリーンヒット。


「あ、ごめん当たっちゃった」


「ぐむぅ、その割には何かがこもった衝撃だった気がするんだが……」


 気のせいだ。

 だって6まで数えるといいらしいから。


 そして俺は、次の検証をするために、門をアイテム化した上でその場を後にする。


 さてさて、次はどんな仕様なのかなあ?

 まってろよぉ……


 ___壺


 割ってやるからなぁ?


 くひひひひ。

 俺はご機嫌なステップで、目的地を目指すのであった。

お読みいただきまして誠にありがとうございます!


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