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北の町へ

 フォマルハウトの葬儀が終わった頃――双子とマルケブは北の町にいた。大海嘯が襲った後、住民による復旧作業が行われている。

「うわああ!」

 断末魔は、町の外れで聞こえた。双子が1人の男を追い詰めていたのだ。

「ま、待て! ガクルックス、私が悪かった、話せば分かる!!」

 その男――双子の父親は必死に命乞いをする。が、ガクルックスは暗い笑顔で魔剣を一振りし、父親の首をスパッとはねてしまったのだ。首は宙を舞って木にぶつかり、地面に転げ落ちた。

「あーすっきりした」

 ガクルックスはまるで用を足したような気楽さでつぶやいた。アクルックスは、転がった生首を踏みつけ、ぐしゃっと潰してしまった。

「フォマルハウトに引き続き、これで復讐その二は完了だね」

 そのそばには、上半身が裸になったマルケブがいる。

「さ、その死体を吸収しなさい。その後は、私がなぐさめてあげる」

 コラプサーに死体を吸収させた後、双子はマルケブの二つの胸に吸い付いた。こんな生活をするようになってどれほど経ったのだろう。殺人と色欲におぼれ、双子はもはや後戻りできなくなっている。


 北の町に向かう船上――潮風が向かい風となって顔面に当たる。

 カノープスは額に手を当てて顔をしかめていた。当初、北の町には1人で行くつもりだったのに、ミモザ、ミアプラ、アヴィオールも行くと言ってきたのだ。カペラも「フォマルハウトの仇をとる!」と息巻いてついてきた。さらに、アルセフィナを1人ほったらかしにできないと思い、連れてきた。総勢6人のパーティとなった。

「お兄ちゃん、あれが北の町?」

 アルセフィナが指さす方向に陸地が見えてきた。少し前、紫微垣の七星剣を精錬するために1人で乗り込んだ。あの時は七星剣を作ることしか考えていなかったが、まさかこんな形で再び乗り込むことになるとは……。

 巨門の祠に近い港に着岸し、全員が降りると、カノープスを先頭に歩き出した。行き先は北辰の祠である。何か手がかりがあるかもしれない、という望みを抱いて。

 3時間後、一行は北辰の祠に到着した。台座には――やはりポラリスがない。

「この前見た時と同じね。誰かが持ち出したのよ」

 とカペラが手で自分の肘を抱えるようにしてにつぶやく。妖星疫の蔓延を経験している彼女は、不安で仕方ないようだ。

「でも…手掛かりはなさそうだね」

 アヴィオールが祠とその周辺をうろうろするが、盗んだ者の手掛かりは見当たらない。もしフォマルハウトがいたら、洞察力や取材能力を総動員して調べるだろうが……。

 山を降りると夕暮れになっていた。一行は近くの民宿に泊まることにした。

(あれ、ここは……)

 カペラが目をみはる。15年前、フォマルハウトとの出張で泊まった宿だ。あの時、フォマルハウトに体をさらし、一緒に床についたのに何もなかった。まあ、既婚者だから彼も何とかがまんしていたようだけど。その後、告白したり元妻が出ていった家におしかけたりして両思いになり、再婚にこぎつけた。

 でも……と思う。タイミング的には不倫になっていないと思うけど…果たして許されることだったのかしら?

 一方、カノープスはそんなカペラのことなど気にもとめず、部屋を割り当てていった。2階の少し大きめの部屋は4人泊まれ、廊下を渡った先にある離れには2人か3人は泊まれそうだ。カノープスが大部屋に女性、離れに男性と割り当てようとした時――。

「私、離れに行く」

 と、ミアプラが荷物を持ってさっさと行ってしまった。

「ちょ、おい!!」

 カノープスが慌てて追いかけようとするが、もう姿が見えない。

「ったく、困るんだよな。こういう時に単独行動とるのは……」

「カノープス、ミアプラは僕が見るよ」

 ミモザが言った。カノープスは彼をにらみつける。思春期の男女が一室にいるなんて大丈夫か……? と思ったが、他に方法がない。それ以前に、この男はあの小娘の心に寄り添うようにしていたようだし…仕方ない。ただ、心から賛同できなかったので、「頼む」ではなく「勝手にしろ」と突き放すように言った。残る4人は大部屋に入った。荷物をおろし、すぐに食事である。が、ミアプラとミモザは食堂には来なかった。

「どうしようか、カノープス?」

「こっちから行くのも面倒だな。おかみさん、離れに持って行ってもらえるか?」


 その頃、ミモザとミアプラは抱き合って口づけしていた。服を脱いでいないのは、誰かが来るかもしれないからである。

「ごめんねミモザ。きっとみんなに怪しまれるよね…」

「気にするな、ミアプラ。君が一番大事だから」

 そう言うと、彼女の服の胸元を少しはだき、唇を押し当てた。

「んっ……」

 恥ずかしそうにするミアプラ。すでに一線は越えているが、やはりまだ羞恥心の方が強い。もう少ししてほしいな…と思った矢先――。

「お客様」

 と、戸口の方で声がして、2人はびくっとうろたえる。

「夕食を持ってきました。ここに置いておきますね」

 そういうと、人の気配は足音と一緒に去って行った。


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