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眠り姫と瓜二つの魔法使い  作者: shiori@


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10、夢の地図

 春夏秋冬、季節は巡り、青春の日々は瞬く間に駆け抜けていった。


 晴れやかな青空と春の陽光と共に桜の舞う景色が目の前に現れた。

 舞台の幕が上がるように浮かび上がる卒業式の情景。

 クラスメイトの答辞、卒業証書授与、保護者や先生達の感極まった姿。

 壇上に立ち、日の丸の下で歌う在校生。

 あたし達は卒業の日を迎え、凛翔学園を旅立ち大人の仲間入りを果たしていく。

 

 卒業式が終わり、卒業アルバムの入った紙袋と卒業証書を手にして、あたしはマリーちゃんと一緒に先生を探すために教室を出た。


「行こう! マリーちゃん。先生に会いに行こう!」

「分かったよ、仕方のない奴だな」


 あたしが待ちきれないために満面の笑みで言うと、マリーちゃんはいつものやれやれといった表情で優しく微笑んで承諾してくれた。


 マリーちゃんを引っ張って先生を探す。

 美術室にも理科室にも職員室にもいない先生。

 あたしは相変わらず世話が焼けるなんて思いながら屋上へと上がった。


「先生みーつけた!!」


 守代先生の姿を見つけてあたしは無我夢中で駆け出していく。


 白やピンクなど色鮮やかな色彩を放つユリの花束を持ったまま、あたしは先生に抱きついた。


「奈月……アンナマリーも一緒か」

「もう! 先生ってば酷いですよ! 今日であたし達卒業なんですよ!

 こんなところに隠れてないで、教室まで会いに来てくれたっていいじゃないですか!」


 あたしは意地になって頬を膨らませて訴えかける。

 やっと会えた喜びで既に胸はドキドキしっぱなしだった。

 

 先生は抱きつくあたしの身体を離して、花束を受け取ると真っすぐに視線を寄せる。

 スーツ姿の凛々しい先生にはセーラー服の胸元にバラのコサージュを付けたあたしと少し後ろで立つマリーちゃんが映っている。

 黄色のコサージュを付けたマリーちゃんと薄ピンク色のコサージュを付けたあたし。自画自賛だけど両手に花と言っていいくらい今のあたし達は可愛いと思う。

 

 身長差で見つめ合い上目遣いになるあたし。

 先生が潤んだ瞳をしているあたしに顔を寄せていく。

 そして、待ち遠しかったキスを分けてくれた。

 不意にやってくる強引さ、それが先生らしくてあたしはまた受け入れてしまう。

 唇と唇が重なり、愛おしい感情が湧き上がっていく。

 

「ううぅ……ちゅ・……ちゅ……あむぅ……ううん……ううううっ…」


 息切れしそうなくらい長いキスが終わると、潤んだ唇から唾液が零れ、艶めかしく糸を引いた。

 

「もう……不意打ちすぎですよ」

「分かっただろ? 教室に入っていきなり抱きつかれでもしたら、キスしたくて我慢できないじゃないか」


 それは勘違いされるどころではない。もうこの日まで愛し合ったことを隠してきたのが台無しだ。

 

 あたしは先生の言葉を聞き、全身がざわつくと共に、顔を真っ赤にさせた。


「本当に先生はどうしようもないんだからっ!

 もう、あたしは卒業していなくなっちゃうんですよ!」


「なぜ怒り出す」


「この感情のぶつけようがどこにもないからです!!」


 恥ずかしさでいっぱいになったあたしはそう言葉にするのが精一杯だった。


「お前ら、本当にどうしようもない馬鹿だな。ここで一生そうやってるか?」


 プライベートな愛情表現を見せ付けられマリーちゃんが呆れ顔で言う。これだけ大胆な行動をしていれば呆れられて当然だ。とはいっても、自制が全く効かないんだけど……。


「おい、アンナマリーに呆れられてるぞ」

「先生がいきなりキスするからです」


 そんな軽口を交わしながら互いの手を絡めるあたしと守代先生。

 その姿を見て、さらにマリーちゃんはやれやれといった調子で冷めた眼差しを向けた。


「それはそうと、うちらに言う事があるんじゃないか? 変態教師」

 

 すっかり感情豊かになったマリーちゃんがわざと素っ気なく言う。

 先生の贈る言葉が聞きたい。そういう事を真面目に言うのは先生らしくないけど、マリーちゃんの気持ちとあたしの気持ちは一緒だった。

 

 あたしは期待を寄せた目で先生の事を見つめる。

 それで観念したのか、先生は大人しく口を開いた。


「あぁ、分かったよ……沢城奈月、アンナマリー・モーリン。

 卒業おめでとう。これで晴れて大人の仲間入りだな。

 二年前に沙耶の卒業式で見た時に似て、二人とも綺麗だよ」


 恥ずかしそうにしながら、先生は言葉を紡いだ。

 少し棒読みなところもあったけど、会心の気持ちが込められているようにあたしは感じた。

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