7:何かが……起きている!
アマナ・ランズベリーの手から指輪を外そうと、触れた瞬間。
閃光が走った。
その眩しさに目を閉じ、再び開けると――。
光は収まっている。
でも、何だろう。
ものすごく息苦しさを感じた。
「これは……空気が……突然薄くなった……?」
ディーンの声に、パールとブラウンが叫ぶ。
「「アンディ、この空気、何かおかしい!」」
そう叫んだそばで、二人とも、ぐったりしてしまう。
私はブラウンを肩から胸に抱きしめ、ディーンはそばで倒れ込んだパールを抱き上げる。
「ナタリー、ディーン、今すぐ地上へ戻ろう。魔力をどんどん吸い出されている感じがする。空気が……おかしい」
アンディの言葉に驚愕し、地上へつながる階段へ向かおうとしたが。
体に力が入らない。
それに……とても息苦しくなっていた。
「……アンディ、力がはいらない」
ディーンが私の気持ちを代弁してくれる。
「それに……息苦しく、意識が……」
呼吸がうまくできないことで、確かに意識が朦朧とし始めていた。
「このおかしな空気の影響だ。俺は魔力を吸い取られているが、呼吸はまだ苦しくない。順番に担いでいくよ」
アンディがそう言ってくれたが、ディーンと私は同時に床に座り込み、それぞれ近くの石棺にもたれる状態に。
「ナタリー嬢を……はや……く」
「ディーン!」
アンディがディーンに駆け寄るが、既に彼は意識を失っている。
私も意識が飛びそうだ。
腕の中のブラウンは、完全に意識を失っていた。
ディーンの肩を掴み、揺すりながら、アンディが私を見た。
「ディーンを……さ……き……に」
それを言うだけで精一杯。
呼吸ができず、話すことも、ままならなくなっていた。
ひどく頭痛もしている。
「魔法を使えれば、全員すぐここから出られるのに!」
アンディの悔しそうな声。
それが最後に聞いた言葉だった。
私はそこで意識を失う。
◇
「ナタリー嬢、大丈夫ですか!?」
ディーンの声に目が覚める。
体に感じていてあらゆる不調から解放され、肺を満たす空気に清々しい気持ちになっていた。
この場所に着いたのは朝だったが、今は昼頃だろうか?
陽射しが強く、影は私の真下にできている。
「おかしいよ、なんでさっきまであった入口がないんだ!」
パールの声の方を見る。
するとジャングル状態の廃墟の修道院……礼拝堂には、しゃがむようにして入ることになった入口が、あるはずなのだが……。見当たらなかった。
ブラウンも蔦を伝い、建物のあちこちを見たのだろう。
「どこにも人間が出入りできるような穴はないわ。かろうじて鳥が出入りできるような、小さな穴があるだけ!」
ブラウンの言葉にハッとする。
「ディーン様、アンディは!?」
「それが気づいたら、地下納骨堂からここにいて……」
意識を失う前の状況を思い出す。
アンディは「魔法を使えれば、全員すぐここから出られたのに!」と叫んでいた。
先にディーンは意識を失っていた。
私もその後を追うように、意識がなくなっている。
あの時のアンディは、魔法を使えない状態だった。
ディーンと私を順番に地上まで担ぎ、逃げたはずだ。
順番に私達はここまで、アンディにより運びだされたのなら……。
アンディもここにいると思う。
でもここにいないということは……。
「ディーン様、アンディは!?」
「アンディはナタリー嬢と私を順番に地下納骨堂から運び出した後、改めてメビウス・リングを取りに戻ったのかもしれません」
「戻って……魔力を吸い取られ、まさかそこで力尽き、倒れているのでは!?」
ディーンもその可能性を考えているようだった。
「アンディを助けに行きたいのですが……。今のこの様子だと、礼拝堂に入るための入口が、そもそも見つからない。それでも中に入ることができたとしましょう。地下納骨堂に着いたらどうなると思いますか? 再び意識を失ってしまう可能性が高いのでは?」
「えっ……そうなると今、何も、何もできないのですか!?」
「アンディがナタリー嬢と私を必死の思いで助け出した。それなのに無理をして地下納骨堂に戻り、意識を失えば……。アンディの努力は水の泡です」
ディーンは冷静だった。まさにその通り。
そうなるとただただ無事を祈り、ここで待つしかないの……?
その時だった。
「分かったぞ! 魔法で閉じられているんだ! ブラウン、魔力をここに一点集中! そうすれば礼拝堂の中に入る穴を、開けることができるぞ!」
「オッケー! やるわよ、パール!」
ブラウンとパールが、礼拝堂の正面に集合し、共に力を合わせて魔力を込めると……。
空気が歪み、振動を感じた。
ぐにゃりと蔦が回転するように一点に向け、吸い込まれていくと思ったら……。
あのしゃがんで入ることになった入口が、ぽっかり現れた。
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