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断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊発売決定:商業ノベル&漫画化進行中
【続編】

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6:思いがけない発見

「残念な錬金術師と天才魔術師、接点があるとしたら、やはりロバートが錬金した何かをマーランが手に入れた……としか考えられないな。それに座標がここを示したなら、必ず何かがあるはずなんだ。そうなると……やはりロバートの石棺を探る方が良さそうだ」


 そこでアンディは魔法を使い、一気に地下納骨堂を明るくした。


 天井付近に無数のランタンがふわふわと浮いており、ホラーな雰囲気から一転、ファンタジーな世界に変わっている。


 アンディとディーン、それにパールがロバートの石棺に向かったが……。


 私は何だかアマナ・ランズベリーが気になってしまう。


 だって。


 石棺の蓋の、彫像で表現されたその姿。

 つまり彼女の横臥(おうが)彫像は、どう考えても美しいのだ。

 彫像でこの美しさなら、生前の本人は、相当な美貌だったと思う。

 しかも亡くなったのは二十四歳。

 前世ならまだまだこれからの年齢のはず。

 美人薄命というが、未婚で、しかも「悪の手により眠りにつく」とは……。

 病気ではなく、何者かに命を奪われたのかしら。

 そして「楽園での永遠を願う」――これは天国で永遠に幸せでいることを、遺族が願ったのかな。


「ナタリー、アンディ達のところへ行かないの?」


 肩に乗っているブラウンに問われ、「あ、うん、そうね」と返事をした私は。

 もう一度、アマナ・ランズベリーの横臥彫像をチラリと見て、気が付く。


 キラッと輝くものが彼女の指で光っている。


 未婚なのに、指輪?


 気になり、石棺に近づき、確認すると……。


 それは左手の薬指につけられている。

 ゴールドのシンプルな指輪だった。


 これはもしかして、彼女に想いを寄せた男性が、彼女の死を嘆き、贈ったのでは……?


 そう思うと、なんだかとても切ない。


「ナタリー、どうした?」


 アンディの声に振り返り、指輪のことを話すと……。


「ゴールドの指輪……?」と呟いたアンディが、その指輪をじっと見て、ハッとする。


「驚いた。これは……」


「どうした、アンディ?」「どうしたんだよー、アンディ」


 ディーンとパールも、こちらへ戻って来た。

 二人が到着すると、順番に私達の顔を見ながら、アンディが口を開く。


「メビウス・リングは、(無限)を示す黄金で出来た指輪と言われている。捻ったような緩やかなカーブを持つデザインだ。そしてこの指輪はまさにそのデザインでは!?」


 アンディの言葉に、私達は再度指輪を凝視し、そして「確かに、捻ったようなデザイン!」と叫ぶことになる。


「この地下納骨堂に、メビウス・リングを作った錬金術師ロバートの石棺がある。その上で、彼が錬金したメビウス・リングに似た指輪があるとなれば……。これが本物のメビウス・リングである可能性を考えてしまうよな」


 みんなが頷く。


「悪戯……も考えられるかもしれないが、地下納骨堂は神聖な場所だ。ここで悪戯なんてしたら、即懺悔することになる。そうなると錬金術師ロバートのことを知る何者かが、レプリカを作り、この接点がなさそうな女性につけた……というのは違うだろうね」


 ディーンの言葉にアンディは「悪戯ではないと思う」と断言する。


「こんな寂れた場所の、地下納骨堂の石棺に悪戯なんてしても、誰も気にしないだろう。悪戯なんて、誰かを驚かせたり、注目を浴びたいからすること。ここでやっても意味がない」


「それはその通りだね、アンディ」とディーンが応じると、アンディはこんな考えも披露する。


「そもそもメビウス・リングは、悪戯で使うレベルの指輪じゃない。もし本物のメビウス・リングを所有しているなら、自分が所有するか、権力者や魔術師に売りつけるはずだ。そして相手は喉から手が出る程、欲しがるはず。国家予算を超えるお金が動く案件だと思う」


「なるほど。悪戯ではないなら、なぜ彼女がメビウス・リングをつけているのだろう? 錬金術師ロバートと彼女の生きた年代には、約百年の時差がある。よって二人に接点はないはずだ。それとも何か関係が? もしくはメビウス・リングとは知らず、偶然つけさせることになったのかな?」


 ディーンの疑問にアンディは「うーん」と考え込む。


 メビウス・リングのことを知っており、これが本物だと分かっているなら。

 かつ我欲がなく、真面目な人間がメビウス・リングを所持していたと仮定した場合。


 錬金術師ロバートその人の横臥彫像の指に、指輪をつける気がした。

 生前は残念で終わっている。

 でもメビウス・リングは実在したと分からせるように。


 あ、でも……。


「もしかして錬金術師ロバートの横臥彫像につけようとして、サイズがあわなかったのでは? そこで彼の石棺に一番近く、かつ指輪をつけることができるランズベリーさんの彫像が選ばれた。彼女の指の方が細いから」


 私がそう口にすると、アンディが「ナタリー、惜しい! でもそれも一つの考察だ」と言い、メビウス・リングの特殊な力を教えてくれる。


「メビウス・リングは持ち主に合わせ、サイズが変化するそうだ。よって錬金術師ロバートにも、本物だったらつけることができたはず。とはいえこう見るとロバートの手は、左手に右手を重ねている。これだと指輪をつけることはできない」


「!」


 アンディったらよく見ている!


「対してアマナ・ランズベリーの横臥彫像は、胸の前で腕をクロスさせ、手は自身の上腕を抱きしめるようにしているが……。腕と手は接していない。だから指輪をつけることができたわけか」


 ディーンの指摘にアンディは「そうなのだと思う」と応じる。さらにこう続けた。


「王宮付き魔術師として、このメビウス・リングが本物なのかどうか、確認する必要があると思う。こんな廃墟の修道院に併設された礼拝堂に、まさかメビウス・リングがあるとは誰も思わない。放置しても見つかることはない――そうも考えられるが、万一にもこの指輪が他国の手に渡ったり、相応しくない人物が見つければ……この国のみならず、世界の平和が乱される」


 それはその通りに思えた。

 もし盗賊でもやって来て、メビウス・リングを発見してしまえば……一大事だ。

 ここは中立を保てるアンディが回収し、本物かどうかを確認。真偽の判定が出来次第、しかるべき対応をとればいいと思えた。


 これはディーンもすぐ理解できたようで、アンディの行動を止めることはない。


 つまりアンディは、アマナ・ランズベリーの横臥彫像の指から、メビウス・リングを外そうとした。


 するとアンディが指輪に触れた瞬間。


 眩い程の閃光が走った。

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