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褐色のイリア  作者: カラスの子
序章
2/2

保護

 森の中で意識を失う事は大変危険な事です。


 森には肉食の竜がいるのですから、魔法が使えても倒れているところを襲われれば終わりです。


 「起きたみたいね」


 目を覚ますと強い光を放つ焚火が目に入りました。

 声のした方を見れば、鎧姿の女性と周囲には数人の男性と女性。


 竜に襲われなくても、人攫いだっています。

 私は、逃げ出そうとしましたが男の人に簡単に捕まってしまいました。


 「こらこら暴れるな」


 「そうよ、ほら、これでも飲んで落ち着きなさい」


 暴れて逃げようとする私の前に差し出されたのは、とても良い香りのするスープでした。

 その臭いに、お腹がキュルキュルと鳴きました。

 は、恥ずかしいです。


 「飲みながらでいいから聞いて、私たちはこの先の砦の兵士なの。地震が起きて、砦から此方の方に凄い土煙が見えたから、様子を見に来て貴女が倒れているのを見つけたのよ」


 確かによく見れば、男性も女性も同じ様な鎧を着ています。


 「兵士さん?」


 本物でしょうか?偽っている可能性も否定できませんが?


 「お名聞いても良いかしら?」


 「ルルエラ」


 「ルルエラちゃんか、見たところ南方の人みたいだけれど、何処から来たのかは分かるかしら?」


 「たぶんブルーアークの何処かの街」


 「ブルーアーク?街の名前は分かるかしら?」


 女性兵士さんの言葉に、私は首を振る。お母さんと幾度も村や街を転々とした為に、最後に辿り着いた街の名を知りません。街の人達も別に名前を言う事なんてありませんし。


 「よく聞いてね。ここはグリーンスラスなの」


 グリーンスラス!

 ブルーアークの隣国で、ブルーアークが攻め込んだ国です。

 この国に負けた敗残兵が村を襲ったのです!


 「ところでお嬢ちゃんはどうしてこんな所で倒れていたんだい?」


 「そうね、こんな所で倒れているなんて、陥没のおかげで竜共が逃げ出したから良かったものの普通なら餌になるところよ」


 兵士さん?たちに言われ私は地下であった事を省いて、誘拐されて逃げ出した事だけを伝えました。


 「まだいたの本当にゴキブリの様な奴らね」


 誘拐の話に怒ったのは女性兵士さんでしたが、直ぐに周囲の探索に兵士さんたちを振り分けます。一応、私の話は信じてもらえた様です。


 「陥没の後を調べて来たぞ。子供の方はどうだ」


 数人の兵士さんを連れて、他の兵士さんとは違う鎧のお偉いさんがやって来ました。


 「子供の方は誘拐されて逃げ出して来たようですが、そちらはどうでした?」


 「よく分からんが空洞があって潰れたのだろうな。もしかすると誘拐犯共が係わっているのかも知れないが、だとすれば全ては地の底だ」


 兵士さんたちは頃く周囲を調べていましたが、誘拐犯たちは見つからない様で、私はそのまま兵士さんたちに保護されて砦へと向かいました。


 誘拐犯とその襲撃者たちはどこに行ったのでしょうか?


 砦に向かいながら、女性兵士さん・・ライナさんと少し話しました。

 私は、病気のお母さんの事を話して、ブルーアークの街に戻りたい意志を示しますが、ここは隣国のグリーンスラス。

 しかも、戦争の火種があるせいで国交はそれ程無いとの事。

 街の名前も分からないのではどうにも出来ませんし、戻っても、また誘拐される恐れがあるのでこのままグリーンスラスの孤児院に預けられるそうです。


 「所で、ルルエラちゃんは元は何処に住んでいたか覚えている?」


 「元居たのはポトポです。確か、エベンス領だったと思います」


 「エベンス領?」


 「はい」


 「小さいのによく覚えているな。でも、エベンスって何処かで聞いたよな」


 私の話を聞いたライナさんと兵士さんは、何かを考えていますがどうも考えが上手く行かないようです。


 「隊長!エベンスって知りませんか?」


 仕方なく、ライナさんは隊長さんに話しを振りました。


 「エベンス?それは先の侵略時に逆進行して、休戦調停で我が国が得た新領地だ。覚えとけ!」


 え?!

 衝撃的な話が出ました。エベンスがグリーンスラスの領地に成っていたのです。

 ポトポに残った人達は大丈夫なのでしょうか?


 「あ、あの、ポトポの名は知りませんか?」


 「ポトポ?お嬢さんはポトポの出身か?」


 隊長さんの言葉に肯きます。村が逃げる自国の兵士に襲われ焼かれ村とはいえ、残った人達もいた筈。


 「ポトポは復興しつつあるはずだ。ブルーアークの連中、エベンスで一番大きいイスラをも襲いやがって、略奪をしたらしくてな。ブルーアークの兵士に襲われたポトポとイスラには、グリーンスラスから兵士が回され復興に当たっている」


 更に話を聞くとポトポとイスラは、グリーンスラスからブルーアークへ進行する際に大事な拠点になるらしく。それ故に、襲われた可能性もあるとのことでした。


 「ポトポには戦災孤児院があるはずだが、この砦からは遠いしな。三年前の保護と同じで何時もの孤児院に送るしかないぞ」


 ポトポには戻れないようです。

 お母さんの所に戻りたいという子供の感情は、同情には成るようですが叶えられる話では無い様。

 一度、砦に保護された後は、孤児院に送られる事が決まっているようです。


 魔法で、お母さんの所に戻れたら良いのに。


 風を起こせようが、光の剣を使えようが。

 お母さんの所に戻る魔法なんてありません。

 魔法も使えても、よく知りませんし。どこまでの事が出来て、出来ないのかが分からなければ、ここから逃げ出してもお母さんの所には戻れないでしょう。

 地理もよく分かりませんし。

 結局、私が出来るのはこのまま保護されるだけのようです。




 砦に保護された私は、色々聞かれた後。

 施設から迎えが来る二日の間、砦で保護される事と成りました。









━━━砦の女性兵士。




 本日、お昼すぎに轟音と共に地震が発生。

 砦から周囲を見渡せば、北の方に大量の土煙が上がっていた。

 距離にして、約二百クラグ。ブルーアークへの街道沿いに近い場所の様子。

 隊長から緊急招集が掛り、十人程で現地へと向かう。


 始めは大規模な魔法の使用を疑ったが、現地に着いて観測すれば周囲が陥没した形跡がある。

 更に、周囲を調べていたところ。子供を発見。


 子供の名は、ルルエラ。

 話を聞いて見れば、ブルーアークから奴隷として捉えられ輸送中に、何者かたちの襲撃を受けて、馬車が転倒。

 人攫いたちが混乱している隙を着いて逃げ出したとの事。


ルルエラちゃんの証言を確かめるべく、周囲を探索したものの証拠は得られず。

 ルルエラちゃんの証言に疑問が残った。


 「あれ?」


 「どうした?」


 「いえ、ルルエラちゃんの証言が何だか三年前の違法奴隷を運んでいた連中に似ているなと思って、覚えている?」


 「三年前?あぁ、誘拐奴隷を運搬していた連中か?」


 「そうそう、馬車が転倒したところとか。後、覚えている?子供が一人森の中に逃げて行った事。声をかけたけれど留まってくれなくって、後で探したけれど見つからなかった子供がいたじゃない」


 「居たか?」


 「いたのよ」


 確かにいた。

 それにルルエラちゃんの証言が似ていることも。


 「でも、あれって三年前の話だろう?肉食竜がいる森の中で、三年も生きられるか?しかも、三年前ならルルエラは二歳だぞ」


 そうだ。

 普通なら生き延びれる奇跡は起きない。

 ですが、証言が似すぎている。


 三年前、私たち砦の者たちはブルーアークの侵攻を受けて通常以上の警備体制を取っていた。

 そこに砦を避けるように移動する馬車を発見。

 声を掛けたところ、そのまま戦闘に突入。

 捕らえて見れば、この東方諸国では、どの国も禁止している誘拐奴隷しかも子供を輸送していたことが判明。

 その戦いの際に、逃げ出した馬車が転倒し子供が一人。森の中に逃げて行くのが見えて声を掛けましたが、子供は止まってはくれなかった。


 結局、子供は見つからないまま探索は終了。

 誘拐奴隷を運んでいた男たちは、そのまま犯罪奴隷として鉱山送りに成った。

 三年前の事なのに良く覚えているのは、私がこの砦に赴任して最初の大きな事件だったからだけれど。

 森の中に消えた子供の事が忘れられないからだ。


 敵国とはいえ、ブルーアークも奴隷法宣言は順守しているはず。


 奴隷法宣言は、誘拐奴隷を禁止し、子供の奴隷を禁止。

 借金奴隷は、元金のみ支払うまでとされ国が検査。利息分まで働かせた場合、その利息分の返金まで明言している。

 犯罪奴隷も懲役刑内の事だが、違法奴隷の関与した場合。

 ほぼ、開放される刑が降りることは無い。


 ただ、誘拐奴隷が後を立たないのは、西方諸国が奴隷法宣言を未だせずに、高値で取り引きしているからだ。


 奴隷法宣言の発祥の地である。グリーンスラスは東方諸国では最大の国で発言力も高いけれど。流石に、中央諸国や西方諸国には発言力は殆ど無いのが現状。


 中央諸国の場合は、西方に比べては多少は発言力はあるらしいけれど。

 奴隷法宣言が出ていないくらいの発言力しかないとも言える。


 グリーンスラスで奴隷持ちはほとんど居ない。

 持っていても借金奴隷なので国の監視が厳しいし、商売などをしていると評判も悪くなるので、貴族等に奉公に出される事が多い。


 因みに、ブルーアークや東方諸国から誘拐奴隷を中央諸国や西方に連れて行こうとすれば、グリーンスラスを通らないと行けない。

 輸送方法とすれば船もあるが、これは南方諸島連合が奴隷法宣言をしていて厳しい監視をしているので、こちらもそうそう楽には運べない。

 いえ、南方こそ厳しい。

 南方の人達は、ルルエラちゃんの様な褐色の肌をしているので、古くから白色主義者の餌食に合い。多くが奴隷として扱われた歴史がある。

 東方諸国の大国グリーンスラスが奴隷法宣言をした時に、真っ先に同じ宣言をしたのが南方諸島連合だった。


 考えが逸れた。


 ルルエラちゃんの証言に話を戻すけれど、考えれば考える程に三年前の状態に似ている。


 「でも三年前か。無理よね」


 二歳くらいの子供が一人で生きていける場所ではない。

 私は、妄想だと頭を下げる振って、今日の日報を仕上げることにした。

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