037 適度な休みが明日をつくるんです。
お久しぶりの本編。なんちゃって続編スタートです。
「あ、そうだルーカスさん。近々お休みいただこうと思いますんで」
麗らかな午後のひと時。皆様いかがお過ごしでしょうや。お久しぶりです、越谷 優もうすぐ29歳です。
美味しいご飯を好きなだけ食べるため、そして愛する家族(セバスチャン・ヤスミーナ、アヌリン、銭形・北斎・写楽ですがなにか?)との生活を守るため、今日も元気に働いております。
で。本日の打ち合わせの主題、カマキリみたいな魔獣が定期的に出没する街道の巡回計画も組み直し、ナイス執事のグレアムさんが相変わらず絶妙なタイミングで追加してくれた花茶を一口ふくんだ後、わたしは最近温めていた計画、先日夕食にご招待(まぁ仕事帰りについてきただけだけど)した時に、食前酒代わりのリンゴジュースの美味しさにうっかり話忘れた計画をいよいよ始動すべく、クライアント様にお伺いをたてることにしました、と。
いやだってほら。仕事は大切ですけど、働いてばっかりじゃ、身体に悪いじゃないですか。ほら、適度に休んでこそ効率よく働けるって言うかね? わたくしなにせフリーランスですから、お休みは自分でもぎとらなきゃね?
で。休みを気持ちよくもぎ取るには、事前の根回しが必要ですよね。そんな事はないと思うけど、休み明けに「あ、もう君いらないよ」なんて言われないためにもね!
ルーカスさんのお義理姉さん特製のブレンド花茶の馥郁たる香りに包まれた今ならば、ワーカーホリックのルーカスさんでも少々の休暇くらい快く了承してくれることでしょう。
ほのかに立ち上るマンゴーに似た甘い香りを満喫しつつも、重厚な机の向こうに座る麗人の顔色をこっそり窺うと。
「は? 休み、ですか。優さんとはフリーランス契約を結ばせて頂いていますから、もちろん好きにお休みを取って頂けますが……」
わたしにとっては実に都合のよいことに。なにやら急ぎの提出物でもあるのか、手元の書類とおぼしき羊皮紙の束に目をおとしたまま手繰って、こちらを見ようともしない。
いや~今日は朝から曇り空で庭に面した大きな窓のあるこの書斎も若干薄暗いのに、ルーカスさんのまわりだけスポットライトでもあたっているようですねぇ~~。「美人は三日で飽きる」なんて言葉があるけど、人外の美には通用しないんだなぁ……。
相手が目を伏せているのをいいことに、「おぉ睫毛で影が! どんだけ長いのか一度はからせてくれないかなぁ」などと顔をじろじろ見ながら失礼なことを考えていたら、
「魔獣は相変わらず頻出していますし、人員配備の都合もありますから、何日くらい取られるかお聞きしてよろしいですか?」
花も恥じらう顔がひょいっとあがり、しごくまじめな表情で問い返されてしまいました。
「あ、はいそれはもちろん。いま計画中ですけど、決まり次第お知らせしますよ」
とっさに出そうになった笑いをカップで隠して、あくまで真面目にお答えする。
「…計画中……と、言うことは、二三日のお休みではないんですか。それですと人員は…」
サカモトさんとイクタさんだけでは心もとないですね。マシタさんにでも協力を仰ぐ必要が……。
少々失礼な試みが気付かれることはなかったようで、ルーカス氏はそう呟きながらふっさりとした金色のまつ毛をふせてまた目線をおとすと、手元の書類になにか書きこんでいる。
いやいや…さすが若干27歳にして、栄えある皇国魔導団の実質ナンバー2を務めておられるだけあって、真面目ですねぇ~。
でも最近もともと細面なのに頬が若干こけてる気がしますし、たまにはのんびりしないと、早死にしますよん?
余計なことと思いつつも、万一ルーカス氏に倒れられたとあっては、せっかく割の良いいまの仕事が危うくなるかもしれないので、後で忘れずに忠告しておこう。
心の中で大きく頷くと、わたしはコップに残った花茶を飲み干し、本題に入った。
「えぇ。ちょっと旅に出ようと思いまして。期間はそうですね……半年くらい?」
良い交渉にはかかせないのは、笑顔! 相手にNO! を言わせない、一点の曇りもない満面の笑みを浮かべて、わたしはルーカス氏をみつめた。
少々短いですが、次の説明回が長めですのでいったん切ります。




