表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/95

034 鮮度を保つため、留めはサクッとさしましょう。

ルーカスさん視点だと、ど~しても暗くなるのが分かりましたので、優さんに戻します。

温度差を読み取っていただければ幸いです。

 あらあらヤーダー。この(ナザルバエフ公爵とか言う御大層な名前の)豚さんたら、脂汗たらしてるじゃないですかー。

 プッ、ちょ~っと言葉で追い詰めただけなのに、今まで反論されたことなかったんですかね。メンタル弱っ。

 あぁそうか、面倒くさいから、ほっとかれてただけ? たぶん、隣で真っ白になってるお馬鹿さん二人もご同様かな?


 皇帝が君臨し、貴族がいて身分制がきっちりあって。その枠組みで生きている人々ならば、建前としてであっても、それがたとえどんなにお馬鹿さんな内容であっても、「拝聴」してくださっていたのかもしれないし。


 ふぅ~ん。この年までこんな唯我独尊の可哀そうな状態でこれたのには、ほんの少ぅしならば同情しないでもないかもしれないけど。あ、先達ろうじんは敬うべきなんてのは、この生き物たちには適用されませんから~。



 そんな失敬極まりないことを考えつつ、口角をニヨニヨあげて、死にそうな顔色の玉座周辺のひとびとを眺めておりましたらば。


 亀の甲より年の功。能力はなくとも、内務大臣と言う地位に昇りつめた手練手管は伊達ではなかったのか、顔を真っ白にしたままのナザルバエフ公爵が、ミニウィンナーのような人差し指をがたがた震わせこちらにつきつけてきましたよ?



「…っ貴、様…陛下の御前で、無礼であろう……っ、っ不敬罪だっ」



 あ~惜しかった。それ震えずに言えたなら、時代劇の悪役のキメ台詞みたいで、それなりに格好がついたのに。

 しかも自分が攻撃されているくせに「陛下」とか他人持ってくるあたり、いよっ小物だね! キングオブ小物だよ!



「…無礼……不敬罪…?」



 噴き出さないよう腹筋に力をいれながら、わたしは大臣ぶたさんがようやく放っただろうその一言をオウム返ししてあげた後、目をきっちりあわせてにやりと笑ってあげた後、さらに喉をのけぞらせて大笑いしてあげました。


 衣擦れひとつしない静まり返った広間に、わたしの妙に楽しげな笑い声が響き渡り。こっそり確認すれば、わたし以外のすべての顔色を一層悪くさせている様子であります。


 うんオッケーオッケー。わざわざ人を呼びつけて、貴重な時間を潰してくれたのだから、もう少し仕返しさせてもらいやしょう。

 まぁさっきから腹の虫が盛大に抗議しているから、ほどほどにね。



「…あ~おかしい。今更そんな事を言われたので、一瞬呆けていました」



 笑いすぎて滲んだ目じりの涙を、これ見よがしに拭いながら言う。

 わたしは女優! やればできる子。さぁ彼らの心をぽっきり折りましょう!



「まぁそうですよね。いままでわたしが長々と喋ってたのを聴いてなかったのかと言いたいところですが、神輿をかついでいる側にしてみれば、その神輿がきらびやかであればある程、その近くにいる者の『格』も上がったように見え、権力だか権威だかがまし、できることも増えると勘違いできる。いまはそれに必死に縋りつきたくなったわけですか」



 選民意識が強い人間ならば、そのプライドの源をたたき壊してやればいい。つまりは貴方ですよ、皇帝陛下?

 このお馬鹿さん達を野放しにし、尚且つわたしに関わらせた罪を、きっちり償っていただきましょう。



「…皇帝陛下におかれましては、わたしの先程からの物言いでご不興をこうむられたら、申し訳ありません。まぁ、わざとですけどね?」



 今度は玉座に縫い付けられたように座っている、顔だけなら好みと言えるオジサマに、かっきり目を合わせてほほ笑みかける。

 おや、一層顔色が悪くなりましたね? 横のルーカスさんは、「君子ではないけど危うきに近寄らず」精神なのか固まってるみたいですから、助けてくれないと思いますよ?



「なにも、御身がメッキであるとか言っているわけではありませんよ?

過去から最近の報告書見てもこの国では、餓死者も無益な戦で死ぬ者も、疫病による大量の死者も長らく出ていない。

 皇帝一家もしくは一族のみの存続のためにとりつぶされた家も、わたしが調べた限りにおいてはなさそうです。今回のことを置いておけば、わたしの世界で言うところのノーブレス・オブリージュ、上に立つ者の責務、上に立つからこそしてはいけないことを、よくご存知なのでしょう。それは、素晴らしいと思います」



 叩き落す前に一度あげる。良いとこはちゃんと褒める。これは基本です。

 だってその方が、堕とされた時の痛みと絶望がましますから☆



「でも……」



 はいここで一旦溜めて~。



「残念ながら、下に行くほどその素晴らしさが伝わっていないんですねぇ。まぁわたしが知るかぎり、数千年の歴史のあるわたしの世界のとて同じようなものですから、言えた義理ではないのですが」



 さらに気を持たせて~。



「まぁとりあえず。勘違いしている部下ぐらい、絞めとけよって感じです。ただ担がれているだけの神輿と違って貴方は生きて統治してらっしゃるわけですから、自分の権威を嵩にかける人間こものの手綱は、しっかり握ってくださいね? 迷惑ですから」



 仕上げはシンプルにはっきりと。スマイル0円のサーヴィスつきですよ!


またまたちょいと長くなりましたので、2話に分けます。

次で「突撃皇宮訪問!」の回は終わりです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ