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高嶺さんのWEB恋愛小説は実話です。ークラスメイトの美少女が俺との日常をWEBに投稿している件ー  作者: 朝霧いお


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これは休日デートですか?④

「瀬崎くんは、甘いものもお好きですよね」

「そうだね」


 アイスは、女子高生やカップルらしき人が並んでいた。ケースは少し遠いので、俺はスマホの画面でアイスのメニュー表を高嶺さんと眺めていた。

 定番のチョコアイス、フルーツ系のシャーベットまで様々だ。


「大路くんが作られたアップルパイも……全部食べられてましたし。お土産のものも、家で瀬崎くんが食べられたんですか?」


 アップルパイの味のアイスを見つけて、高峰さんが俺に尋ねる。


「……実は秘密なんだけど、あれは妹にあげたんだ」


 俺は、こそっと高嶺さんに話した。

 

「俺の妹、昔からアップルパイが好きで。本当は半分だけ渡そうと思ってたけど、皿ごと奪われて部屋に逃げて鍵かけられてさ」

「そう……だったんですね。瀬崎くんのおうちは、兄妹揃って甘いものがお好きなんですね」


 そうです。だからネットでは、『甘味好き』として生きています。

 ……とは、言えるわけがない。


 一つ気になることがあるんだが、今一瞬、大路がつくったアップルパイを天音に取られたと聞いとき、高嶺さんがほっとした顔をしたように見えたのは俺の見間違いだろうか?


 考え事をしていると、すぐ俺たちの順番が来た。俺はいつもどおり、綿菓子味のアイスを注文した。高嶺さんは抹茶のようだ。


「瀬崎くんのアイス……すごく紫ですね」

「一口食べてみる?」

「いいんですか!?」

「うん。まだ俺は食べてないから大丈夫だよ」


 俺がアイスのカップを差し出せば、高嶺さんは恐る恐るそれを口にした。


「すごく甘いです!」

「ほんと甘くて、綿菓子みたいだよね」


 高嶺さんの新鮮な反応に、俺は嬉しくなってしまった。

 この店には沢山のフレーバーが存在するが、俺は一番これが好きなのだ。


「俺、昔から綿菓子好きでさ、夏祭りの時なんかは何時も買ってて。袋にキャラクターが付いてるのは少し困るんだけど、大きな祭りだと綿菓子屋さんが複数出てるときがあるから、そのときは見た目でどこが一番量は入ってるか見定めるのもガチャみたいで楽しくて――」

「……」


 だが、俺が夏祭りの思い出を話し始めると、途端高嶺さんが無言になった。


「ごめん。俺の話つまんなかったかな?」

「い……いえ! 違うんです。私、瀬崎くんがおっしゃるような夏祭りの綿菓子、というものを食べたことがなくて……」


 どうやら俺の杞憂だったらしい。


「じゃあ高嶺さんは、綿菓子食べたことない感じ?」

「お料理のうえに乗っているものなら見たことはあるかもしれません」

「お料理?」

「ええと、すき焼き? のうえに乗っていたような……?」


 高嶺さんの世界では、綿菓子はすき焼きのうえに乗っているらしい。なにそれ。逆に知らないんだけども。


「その、夏祭り……には、そういうお菓子屋さんもあるんですね」

「いきたいなら、俺が案内するけど」

「え?」


 何も考えずに返したら、高嶺さんが目を瞬かせた。

 …………ん? 

 思わず口から出ただけだったが、冷静になって考えたらこれってもしかして夏祭りデートのお誘いなのか?!


「あの、高嶺さん、これは……」


 俺は、声が裏返ってしまいそうだった。

 二人で出かけるシチュエーションが、友達か妹なせいで、何が正しいのか全くわからない!(その距離感で話したら失敗する!)


「そう……ですね。案内していただけるのであれば、ご一緒したいです」


 高嶺さんのなかではセーフだったらしい。よかった(よくない)。


 ――駄目だ。

 

 俺は、己の実現を悔いた。これ以上高嶺さんと二人で出かけて、それを周囲に見られようものなら、高嶺さんの純粋さを利用する下衆男と罵られても文句を言えない。

 話を変えるため、俺は基本一つ咳払いして、高嶺さんにある提案した。


「ご飯のあと、ゲーセンもいいけど、高嶺さんはもっと好きかもそれない場所に行かない?」

「私がもっと好きな場所……ですか?」



「わあ……! すごく綺麗です。瀬崎くん!」


 高峰さんを連れてきた場所。

 それは、紅葉が綺麗だという神社だった。


「よかった。喜んでくれて」


 桜と紅葉で検索した結果、この神社がヒットしたのだ。


「もう少し早かったら、桜も咲いてたらしいんだけど……」


 残念な点をあげるなら、ネットの観光情報では桜と紅葉が綺麗だと書かれていたけれど、桜はもう散ってしまっている点だろう。


「もしかして……私のために、わざわざ調べてくださったんですか?」


 高嶺さんが楽しそうに、俺を見て尋ねる。清楚な格好も相まって、なんだかまるで本当のデートみたいだ。


「うん。……青もみじが好きって、言ってたから」

「……ありがとうございます」


 高嶺さんは俺の答えを聞いて、少し驚いたあと――胸を押さえてから微笑んだ。

 春の柔らかな風と光。青もみじの作る柔らかな影と色合いのなかにいる彼女は、まるで一枚の絵のように綺麗だった。


「きゃっ」


 ただ、高嶺さんはやっぱり少しドジっ子なのかもしれない。しみじみと俺が眺めていたら、彼女は木の枝に髪の毛が引っかけてしまったらしい。

 

「大丈夫? 高嶺さん」

「せっかくマリに整えてもらったのに……」


 高峰さんの髪は乱れてしまっていた。

 引っかけたせいで結んでいた髪を解くことになり、高嶺さんは肩を落とした。

 せっかくおしゃれをしてきたのに、途中でこうなれば落ち込みもするだろう。

 だから、俺は――。


「高嶺さんにこれをあげる」


 高嶺さんに、こっそり買っていた桜のヘアピンを差し出した。

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