24-とんでもない提案
「決闘? はは、本気で言ってるのか?」
決闘。
古来、まだ魔王がいた時代にて、騎士と騎士がお互いの意思がぶつかった時、正悪を決める命を賭けた戦いだ。
現代では闘技場のルールを用いたエンターテイメントが大半の意味合いをしめるが、その戦いにかける重さは変わらない。
普通の試合と大きく違いがあるのが、賭けるものがあるというところ。
今回の場合、“商品”に該当するのはファレーナ。ひいてはフレアクラフトの存続に関わってくるものになる。
「魔女。お前は恐らく、妙案を提示したと、息巻いてるかもしれないがそれは違う。この場で君が、ボクを制裁した方が何倍もフレアクラフトが助かる可能性があるというのに、それを放棄したんだ! それに、魔女、君は戦わないんだろう?」
「勿論。現代最強が闘技場に出てくるなんてある意味じゃあ、興行に良いかもだけど、その相手が君なら不釣り合いさ」
「チッ。いちいち苛立たせるなぁ」
額に血管を走らせるプーサーだったが、その憤りも一瞬だ。
静かに呼吸を整えて、ニタリと笑う。
「じゃあつまり、ボクはそこのゴミ虫含めたフレアクラフト陣営に決闘を申し込む、という意味合いで間違いないな?」
「もちー。その理解であってるよん」
「お前、フレアクラフトを助けたいんじゃあないのか?」
「しつこうざー」
「しつ……はぁ?」
突然出てきたギャル語? に意図を汲み取れなかったプーサー。
その反応さえ、エマには煩わしいらしく、あからさまな溜息をついて、
「あのねぇ、あーちはめんどくさいのが嫌だって言ってんじゃーん。このままだと協会どもが出てきてマジうざいの。んであーちが戦うなんて、論の外なわけよ。そしたら、これを上手くまとめるのは、双方が魔術的な契約で納得できる、決闘しかないわけってことよ! 尤も」
いやらしくニタリと笑うエマには迫力があった。
プーサーは顔を引き攣らせる。
しかし、
「それが本当に君にとって有利なのかは、知らないけどねぇ」
(は、バカが!)
エマの提案は荒唐無稽なものに変わりはない。
この場で決着がついたであろう結末が先延ばしになっただけ。
楽しみをすぐ味わえないのは癪だが、結果をすぐに求めようとするのは三流のやることだ。
多少、メインディッシュを口にするのが遅くなる。
ただそれだけのことだ。
「なら、ボクから仕掛けてやるさ」
そう言って、
プーサーは白手袋をブランクにぶつけた。
術式は起動し、魔法陣がプーサーとブランクの間に展開される。
契約決闘の取り決めが始まる。
「決闘はプーサー・ブラックナイト。相手は一人。フレアクラフト陣営の誰でも良い。ブラックナイト側の商品はファレーナ・フレアクラフトの全人権! それ以外は要らないね」
その要求を虚空に呟くと、目の前の魔法陣が赤く点灯し、警報を鳴らす。
それを見てエマは納得した、というよりも呆れ顔で頷く。
「まぁ、当たり前だよねぇ」
「これは……?」
「見た通りの警告だよ。報酬と実力を掛け合わせ、対戦に於ける天秤の傾き度合いが極端な場合鳴るんだ。つまり、旨みがないし、勝てないからやめとけって言ってるのさ」
とはいえ、現在はまだ対戦相手も、フレアクラフト側の報酬も提示していない。
だからこそ不釣り合いの警告が鳴っている。
ならばブランク側も提示すればある程度、釣り合いは取れるのではないか。
そう思って、ブランクは、
「対戦相手は僕。報酬は、プーサーさんのファレーナに対する謝罪と、全資産、プラスで、ファレーナさんの地位向上に助力してもらう……でどう?」
「は。甚だ、いやらしい要求だ。正しく虫らしい、不躾なことだな。とはいえ」
やれやれと顔を歪めるプーサーはどことなく、機嫌が良さそうに見えた。
それは正しく、笑みを浮かべて、
「そんな程度の要求では、警告は収まらないようだね」
赤く光る警告を指差す。
未だに魔法陣は赤く光り警告している。
やめておけ。お前では無理だ、と。
「ならせっかくだし、もう一つくらい要求出せば良いじゃん」
「え?」
「だってー。今の要求じゃ、この契約は釣り合わないっていうのなら、引き上げるだけ引き上げちゃうってこと」
エマの言うことは尤もであり、ブランクの要求は今のところ、無欲と言っても過言ではないほど消極的だ。
とはいえ、これ以上ブランクから捻り出せるものなどなく、それを見かねたエマが笑顔で提案する。
「それじゃあ、ブラちんにプーサー負けたら死ぬまで奴隷ね!!」
と、とんでもないことを言いだしたのであった。
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