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SETSUー炎の姫と接続者《リンクメイカー》  作者: UMA20
第一章 満天を切り裂く陽炎星
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18-新たな修行

 


 百回の剣撃を止めた次の日、いつも通り、体力をつけるコースを走り込んでいた。

 今では6時間程度で走り終えるようになっていた。

 理由は単純、体力がついたこと、筋肉がついたこと、それら二つの理由により疲れにくいフォームを長時間維持できるようになったこと。

 プラスで言えば追いかけてくる魔物に対する恐怖心も減ったことだろう。


 いまだにブランクは彼らを倒せる気はしないし、何なら追いかけてきているのも、ファレーナから頼まれてのことと知れたのでいつも付き合ってもらってありがたい気持ちすら生まれていた。


 そんなコースを終わらせ、いつもであればひたすらファレーナの剣撃を受け続ける稽古へと、移行するはずだったのだが。

 ファレーナとブランクは道場で向かい合うようにして、正座していた。


「剣術の指導に入るわ」


「ついにですか!」


 剣の稽古をする中で、次の内容に移るためには百回のファレーナの攻撃を受け切ることが条件であった。

 その内容を、完璧にこなしたブランクは文句なしのステップアップを許されたのである。


「とはいっても、正確には初級をやってもらう感じだけどね。わかりやすく想像してもらうと、剣術という星を作るのが稽古として、その星の文明レベルが剣術の高さを示すのであれば、今ブランクは星が、土台がやっと出来た段階ね」


「それほどまでに……一応ブルブラックさんにもまがいなりにも半年教わっていたつもりですが」


「彼は戦士としては強い方だと思うけど指導者にはあまり向いてないわ。ほら、星も何もないとこに文明気づこうと人間を配置しても、真空で死ぬだけでしょ? 彼がやってたのはそういうことよ」


「つまり無意味!? 悲しいです」


 やれやれといった具合で、首振るファレーナ。

 ブランクからすればファレーナの稽古同様、ブルブラックから受けた修行も大事な記憶を失った後の生活だ。

 どちらも真面目に行っていた本人としては、納得いかない部分があるのも仕方ない。


「まぁ知らないことは良く吟味することが大事ってことよね」


「肝に銘じます」


「んじゃ早速稽古だけど、まず、知識の話をしたいわ。ブランクは主な戦闘技術である魔術、剣術、体術の違いって何かわかる?」


 ファレーナの問いは、剣術を行うために必要な違いの理解を知る為のものだ。

 記憶をなくしているブランクでは、それ等についての推測はやっぱり感覚的なものになる。


「やっぱり遠隔なのか、非接触なのか、接触なのか、とかでしょうか」


「ぜんっぜんだめね。こんだけ稽古してるのに分からないの」


「わ、分かりません……」


 悲しくなるほどの溜息を吐くファレーナに、げんなりと肩を落とすブランク。

 ファレーナは理論の説明はするが、基本感覚派の人間なので、やってるうちに伝わるだろうと思うところがあった。

 それだけ期待を寄せてくれていることは、嬉しいことではあるのだが、複雑な気持ちで胸中一杯のブランクだった。


 そんなブランクを置いて、またしても黒板を持ってきたファレーナは、人の身体を(おもむろ)に三つ描き始める。


「三つの術の違い、それはズバリ魔力を流す先にあるわ」


「流す先、ですか?」


「そう。魔術は体外に、剣術は物に、体術は身体に、といった具合にね。よく身体強化の魔術、なんてことを言ってる人がたまにいるけど、それは厳密にいうと体術だったりするのよ」


「なるほど。ということは、今から僕がする稽古では、剣に魔力を流すことが重要になってくるわけですね」


「その通り。そして──」


 ファレーナが木剣を構えた。

 一瞬の間を開け、直後。

 木剣には赤い炎のようなオーラが纏わり付いた。


「剣に流した魔力に属性を与えると、剣気、と呼ばれる物になるわ。これを扱う術を“剣術”と呼ぶのよ」


 その赤い剣気はファレーナを象徴とする炎のようにゆらめいて、木剣を振るう度にボォっ! と激しく燃え盛るような音を出した。

 木剣を振るうと共に踊り始める。

 その美しさに、ブランクは見惚れていた。


「道場“虹焔”が扱う剣気は“炎気”、初代フレアクラフトが初めて生み出した、“五大剣気”の一つよ」


 初代フレアクラフト。

 エリュシオンを作り、魔王を倒した剣の勇者一行、その一人。

 炎の勇者と呼ばれ、炎の魔術を多彩に操ったと伝えられているが、剣術にも長けていたのだ。

 時代の流れと共に道場を始めたわけではなく、そもそも剣術を扱っていた。

 そして勇者の剣術をこれから身につけていく高揚感にブランクは胸を高鳴らせる。


(これでもっと強くなれる!!)


 強くなりたい、かもしれない。

 そんな曖昧な願いが、苦痛を伴う厳しい鍛錬の果てに真なる願いへと昇華しようとしていた。

 記憶がないまま、どこへ向かうともしれない不安定な道が今、少しだけ補強されたような気がブランクはしていた。


 そんな見るからにワクワクしているブランクを前に苦笑しながら、ファレーナは言う。


「まずは魔力を流すことに慣れないとね。はい」


「ん? 何ですか、水の入った桶……?」


「水は魔力を流しやすいのよ。だから魔力を流す最初の特訓でよく使われるわ。そしたらここに魔力を流してみましょっか。一週間くらい」


 水を眺め、魔力を流すと言うただそれだけの特訓が、一週間も続く。

 その事実を想像して、ブランクは叫ぶ。


「思ってたより地味だぁーー!!」


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