迎撃
「なんだぁこのクマちゃん、アタシらは触んなって事か?」
「意思でも持ってるんですかね……?」
「どっかいったように見せかけてまだこの中に入ってんじゃねぇか?レイ、危ねぇからちっとそれ地面に置いて離れてな」
「え、あっはい」
僕は言われた通りその場にぬいぐるみを置いて少し離れる。
ミザリーさんはそれを確認すると、能力で適当な長剣を創り出し構えた。
「いっぺん斬ってみんのが手っ取り早いだろ」
そう言うと容赦なく剣を振り下ろした。
ぬいぐるみは正中線から真っ二つになったが、断面は至って普通の綿が詰まっていただけ……。
……だったのだが、突然綿を掻き分けるように中から何かが飛び出した。
それは先ほども見たネズミのぬいぐるみだった。
両断されたクマのぬいぐるみから完全に独立し、地を這いミザリーさんに飛び掛かる。
「うおっ!?」
間一髪、アリオーシュさんが間に入り盾でガードした。
それでも爆風に押され、2人でもつれるように倒れた。
「ってぇ……、わりぃなアリオーシュ。……相変わらずクソ重いよなその神器」
「まったく。貴様もあまり迂闊な事をするんじゃない」
「ぐえっ!おい!今わざわざアタシの上で膝立ててから起き上がる必要あったか!?」
2人がそんな事をやってる一方、僕はクマのぬいぐるみがひとりでに修復されていったのを目撃した。
断面から糸や綿が伸び、絡み、引っ張り合い、分離した右半身と左半身を縫合していく。
そして最終的に切断される前の状態に戻り、今は何も無かったかのように地面に寝転がっている。
……元の世界でこんな現象目にしたら完全にホラーだ。
「……どうやら斬ったところで無駄なようだな。おそらく衝いても同じ事だろう」
「うわっ、いつの間に元通りになってやがる」
「このぬいぐるみ自体に自己修復機能みたいなのが付いてるみたいですね……」
「その上何か攻撃を加えようものなら反撃してくるぬいぐるみか。火で燃やし尽くそうものなら大爆発でもしそうな代物だな」
たしかに、あのネズミ爆弾はこのぬいぐるみの中から出てきてたし、これそのものも爆弾と見做しても間違いではないのかもしれない。
「ん~、もう放置でいいだろ放置で。別にあっちから何かしてくるわけじゃねぇみてぇだしよ」
「巫女としてあまり放置するわけにもいかないだろう」
「いやそもそもここリベルグの領地だぜ?リベルグが何とかすんだろ」
「だとしてもだ。一応だがあれの原因は我々にあるんだぞ」
「じゃあどうすんだよ」
「……考えておく。置いておくわけにもいかないし、悪いがレイがそれを持っていてくれないか?」
「大爆発しそうとか言ってたものを持たせるのはあんまりでは……?」
とは言っても現状僕にできる事なんてろくに無いし、一抹の不安はあるがこれくらいの事なら引き受けよう。
今のところ危害を加えようとしなければ迎撃機能は発動しないし。
むしろ他人がこれに近付かないように僕が管理しておいた方がいいかもしれない。
お仕事が、たいへん。




