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第1章 第26話 『村娘の裏の顔』

第1章 第26話 『村娘の裏の顔』




数刻前、



「起きなさい。早速今日からあなたも使用人ですよ。」


 そう言われてカヤは目を覚ました。目の前にいるのは昨日宮廷内でで会ったメガネをかけた女性である。確かアンドレアはメイド長と呼称していた。


「あの副産物の坊やに仕えると会議で話したそうね。そしてこの王宮で働きたいと。」


「は、はい‼︎その通りです。」


「彼の顔見知りという理由だけで、あなたは採用されている。本来王宮で働くということがどれほど難しくどれほど名誉なことか。それは一介の村娘であるあなたでも流石に理解できますよね⁇」


「はい…。もちろんです。精一杯働かせてもらいます。」


「そちらの服に着替えたらすぐ出てきなさい。」


 そう言ってメイド長は部屋を後にした。


ちっ。


 カヤは舌打ちをした。自分が身分の低い人間だとは自覚している。しかし、昨日の貴族どもの眼差し、10連星会議の時の男もそうだ。ああいう目をされると沸々と怒りの感情が沸き立つ。

 カヤ・ディスパーデ。ディスパーデという姓はあまり人に話してはいけないと過去にヨシュアに言われ、カヤはそれを守っている。そのため昨日、アンドレアに尋ねられた時も言わなかった。

 両親は幼い頃に死んだらしく、物心つく前で全く記憶にない。その時に世話になったのがヨシュアである。どうやら私を保護してくれたらしいのだが、その経緯も全くわからない。その後は祖母とサンフィルド村で2人暮らしである。

 だが、正直その暮らしは退屈を絵に描いたようなものであった。毎日毎日同じことの繰り返し。村を回って野菜を配るだけ。時々王都にも野菜を配るが、その度に貴族どもの裕福な暮らしを眺め、いつからか憧れを抱いていた。


「………。私は今日から生まれ変わる。」


 ホンゴウミズキに出会った時、はじめは恐怖しか感じなかった。見慣れない服装からか、マカヤオ皇国の兵士なのではとも思った。だが、祖母に止められ、翻訳魔法を使った時、訳のわからないことばかり話しだして困惑してしまった。

 大魔法の副産物というものの存在は、色んな村を渡る職業のおかげで知っていた。そのおかげですんなりと話を聞けたが、中でもあの祖母の存在は大きい。いつも無言で心を開かないあの祖母が、一緒に暮らしていたのには驚いた。

 そして冷静になり、話を聞き終わった頃には、何か自分の人生が劇的に変わるような、そんな気さえした。こいつを利用しない手はない。そう本能が感じとった。

 そこからは多少強引なことをしてまで今の現状に漕ぎ着けることができた。だが、本当の戦いはこれからである。


「まずは、仕事で有能さをアピールして、その後は金持ちそうな人に取り入って気に入ってもらおう‼︎そっからはミズキくんとはもう関わらなくてもいいかな。あはは。」


 独り言を言いながら廊下を歩くカヤ。その表情はとても悍ましい笑顔であった。こんな顔は絶対ミズキたちには見せないものであろう。

 しかし遠目にミズキの姿を確認し、とっさに口を塞いだ。よく見ると、隣にはヨシュアがいる。


「ヨシュアさ〜ん‼︎」


 こうしてカヤの壮絶な成り上がり計画が始まった。

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