第1章 第11話 『魔針盤』
第1章 第11話 『魔針盤』
ヴァニシウス暦601年2月18日12時30分
王都ラズシーマ貴族院邸宅街
「なんか…さっきからやけに見られているような………⁇」
「ここはこの国有数の貴族たちが住む絢爛なゾーンだ。奇怪な服を着てるミズキや村娘の格好をしてるカヤちゃんは少し悪目立ちしてるかもな。」
教会を出てミズキたち一向はアンドレア・ヴォルスに連れられ北に向かっていた。そしてアンドレアの解説にあったようにどうやら現在は少々自分にとって身分違いな場所を歩いているらしい。
「奇怪……。そりゃそうですよね〜。」
ミズキの衣装コーデを今更ながら紹介すると上はオーバーサイズのフード付きパーカー、下は細身で黒色のパンツ、くつも黒のスニーカーである。もちろん未だこの世界で同じような服装をした人には出会っていない。
チラリとカヤの方に目をやるとカヤは少し拳を握りしめ何やら悔しい表情をしていた。確かにこんなに不快な目線を向けられると腹が立つのもわかる。ミズキもメンタル的に強い方ではないのでこの状況は普通に辛い。
「そうだな。ただ無言で歩くのも退屈だしいくつかこの世界について説明してやるか。」
「本当ですか⁉︎ありがとうございます。ヴォルスさん‼︎」
「ははっ。ヴォルスって言いにくいだろ。俺のことはアンドレアって呼んでくれ。」
「わかりました‼︎アンドレアさん。」
この国最強の騎士にここまでフレンドリーに話しかけていいものなのか。いまいちコミュニケーションを取るのが苦手なミズキは今の距離感が正しいのか分からず、ずっと小さな緊張感を保ち続けていた。まぁ本人がそう言うのだから大丈夫だろう。
「最初に聞きたいのはやっぱ魔法についてだろ⁇お前が俺たちの言葉を理解できるようになったのは強化魔法の一つ、翻訳を使ったからだ。」
強化魔法⁇翻訳⁇早くも魔法の便利さに驚愕である。まさにこの異世界において生きる上で外せないスマートフォンのような存在なのだろうか。
「自分はどうやって魔法使いになったんですか⁇」
「それは魔針盤に手をかざしたからよ。」
今度はカヤが返答してくれた。魔針盤。おそらく教会で儀式を行った際に自分が手をかざしたあの大きな謎の物体のことであろう。
「魔針盤はね、才能とかセンスとか一切関係なく、どんな人間でも身体の中の魔臓を強制的に活性化させ、その人の魔法の使用を可能にする発明品よ。」
一つ単語を理解すれば、また一つ知らないワードが出てくる。魔臓⁇勉学でこんな教わり方をされると絶対にやる気を削がれているところだが、流石に異世界に来て魔法の話となると、全てを理解しようと脳が完全に集中するものである。
「………一応聞いておくけど、あなたの世界にも魔素ってあったわよね⁇」
「………。あはは…、なんですかそれは⁇」
はぁ。カヤは少し呆れたようにため息をついた。仕方ないでしょうが‼︎知らないものは知らないんだから‼︎
「魔素っていうのはこの空気中に含まれている気体の一種よ。人間はそれを取り込み、魔臓で蓄え、それを放出することで魔法を使ってるの。」
なるほど。要するにRPGゲームなどにおけるMPのことを指しているのだろう。しかし酸素や窒素と同じような扱われ方をしているのは中々興味深い。
「ちなみに魔素を身体に取り込むスピードや魔臓の貯蔵量は本当に人によって個人差が激しいです。熟練の魔導師なんかは取り込むスピードを異常に早めたり、貯蔵量を増加させたりなんてこともできるみたいですけど。」
今度はルイスが補足を加えてくれた。しかしそう言われると自分の魔臓の貯蔵量などが気になってくるものである。
「ちなみにミズキ。俺くらいになるとある程度魔素がよく貯まっている場所を視認できたり、他人の魔臓の貯蔵量を透視することができるんだが、お前の魔素の貯蔵量はハンパじゃない。というかもう身体全体が魔臓なんじゃないかってレベルだ。」
「えぇ⁉︎うそ⁉︎俺20年生きてきて魔臓でっかいですね〜なんて言われたことないですけど。」
「魔臓って言っても他の臓器のように物体があるわけじゃないんです。それこそ血液のように魔素は身体全体を流れているので、身体全体イコール魔臓と思ってもらっても案外間違いじゃないかもしれません。」
魔素を人よりも沢山蓄えることができる。言い換えると人よりも総MP量が多い。これが自分、本郷瑞樹のこの異世界における人よりも秀でており、天から授かりしチート能力なのだろうか。それにしては少し地味な気がしてならないが。それに魔法の使い方がいまいちわかってないので宝の持ち腐れのような気分である。
「もう一つ言っとくが、貯蔵量は確かに多いんだが体内の魔素が異様に少ない。お前ここ2、3週間の間に魔法を唱えずに無理矢理魔素を解放しなかったか⁇」
「へ⁇さっきまで魔素が何かもわかってませんでしたしそんなことしたかな俺。」
「ミズキくん。巨大オオカミを威圧で追っ払ったってドヤ顔で言ってたじゃない。多分その時よ。」




