↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
売られ(未遂)妻は逃亡中!〜外つ国の王子と魔法研究旅〜  作者: たろんぱす


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/38

三十二、危機一髪、からの危機

 狐達に体を拭かれて、食事を出された。食べる事は我慢できたが、どうしようもない吐き気に思わず水だけ口にしてしまった。

 その後軽く意識が飛び、再び起きた時、また水を出された。迷ったが、渇きを我慢する事が難しく、口にしてしまった。

 口にして、後悔した。微かな花の香りに反射的に吐き出すも、少し飲んでしまった。

 何を盛られた!?と警戒していると、腰の辺りがざわりと粟立った。体温が上がり、益々喉の渇きを感じる。


(これは…媚薬、か?)


 頭が朦朧としていたとは言え、危機感が低かった。飲んだ量が少なかったのが幸いだ。意識が飛ぶ程ではない。

 そうこう考えている内に、女が満足気に部屋へ入ってきた。

 仰向けに寝転がるエディに横に腰を下ろし、鎖骨の下を撫でられると、体がビクリと反応した。

 エディの反応を愉しみながら、あちこちつついていると、不意にざわっと空気がかわった。

 次いで人の話し声がし出す。


「妾の結界を破りおったな…許し難い」


 目が釣り上がり、口の端が裂けていく。形相が狐のようになり、四つん這いになると、障子を破り外へ飛び出して行った。

 エディはこの隙に逃げなければと思った。甘ったるい匂いが晴れて、気持ち悪さは無くなっていた。頭の痛みもない。だが、昇った血がなかなか冷めなかった。頭を振って、ふらつきながら立ち上がる。

 だがガクリと膝の力が抜けて倒れる、と思うと同時にその体をガシリと支えられた。


「エディ!大丈夫!?」


 知ってる、黒い髪、黒い瞳。

 小さいと知っていたけど、抱きしめたらもっと小さかった。何時もは高く一つに纏めている髪が、今日は緩く肩上で纏められていた。髪に指を差し込むと、あの日の夜を思い出す。


 触れたくて、髪を梳いた。


 差し入れた手を下げてうなじを指先で擦る。


「え、エディ…?」


 本当は、声だって可愛いと思っていた。

 エディはそのまるい頬に手を添えて口付けた。




***




 外の騒がしさに、ジークは格子窓から外を見た。


『何だ?何があった!?』


 一同はとりあえず荷物を身に付ける。ジークが剣を構えると、牢の外にイアンが現れた。


『イアン!』

『リツさんがいらしました!詳細はよくわかりませんが、村人が次々に正気を取り戻しています。エディ様の元にはリツさんが向かいました』


 手早く牢の扉を開け、全員が出ると、イアンの先導でエディの元へと向かった。

 そして一同はエディがいる部屋の前で固まった。


『え、な、何が起きている?』


 ジークは混乱した。それもそうだ。自分の主人が全裸で女性に熱烈にキスをしているのだから。凄いディープなヤツ。

 珍しくアインとイアンも固まっていて、レリファムは仕方なく大事な楽器でエディの頭をゴン、と叩いた。エディは真っ赤な顔で目を回し、その場でばたりと倒れた。


『殿下、一服盛られましたね、これは』

『あ、そ、そーだよな。まさか殿下がこんな変た…ンンッ、ゴホンえー、こんな事する訳ないよな』


 レリファムは部屋を物色して、適当に着物を出すとアインに渡して着させる。そして未だ固まったままのリツの肩を揺さぶった。


「リツさん、大丈夫ですか?」


 ゆっくりとリツの視線が焦点を結ぶと、ゆるゆると顔が赤く染まっていく。


「あ、だ、だいじょぶれしゅ」


 噛んだ。


「その、エディ様は薬を盛られていたみたいです」

「そ、そうですか。あの、だいじょぶです。わたし、あの、きつねのほうに、むかいます」


 リツはぺこりと頭を下げて、ヨタヨタと走り去るのだった。




 走りながら千律は冷えた掌で頬を押さえた。


(び、びっくりした…びっくりした!)


 危険な場所に居るというのに、放心してしまった。

 押さえていた頬を叩いて気合を入れ直す。

 村長の屋敷から村人達の家が並ぶ広場へと向かうと、ぼたんと噂にあった狐であろう、が対峙していた。人と獣が半々で混じった様な姿で、派手な着物を身に付け四つん這いで威嚇していた。

 ぼたんの横に並ぶ千律を狐は睨みつける。


「妾の可愛い亜種ちゃんと契約したのはお前かえ。主に差し上げようと思っていたのに」


ーーぼくが契約したいといったのさ、かあさま。


 ぼたんのかあさまという言葉に内心驚く。

 自分の子を解剖させようと思っていたって事?


「こぉんなヤツの言う事聞いて。しかも三尾のくせに妾の結界を壊しおって。大人しく戻っても許さんえ」


 憎々しげに千律を見る。

 千律は答えず脇差を構えた。


「おぉ、忌々しい。日翠の婆ぁの護符じゃないの。ん?……娘、お前日翠の血を引いておるね」


 狐は目を見開いて千律の胸元を穴が開くほどに見る。流石に千律も眉間に皺を寄せる。


(なんだ?)

「ほほっ、そーかえそーかえ。日翠はこんな面白いモノを隠していたのか」


 裂けた口が益々裂け、にぃと笑む。見開いた目は金に爛々と輝いた。女狐の周りに狐火が次々現れる。

 千律は腰を落として構えた。


(来る!)


 現れた狐火が一斉に千律に襲い掛かった。

 幾つか斬り伏せらが捌ききれない。千律の背後にぼたんが立ち、水を膜の様に広げ周りを覆った。

 じゅわっと派手に蒸発する煙の影から狐の爪が襲い掛かる。脇差で軌道をそらし、懐に飛びこむが、狐は素早く身を返して千律から距離をとった。

 そしてまた、無数の狐火を巡らす。

 もう一度来るかと身構えたが、ズンッと足元が揺れた。


「!?」


 地面が隆起し、千律の足を拘束したのだ。


「主様への手土産にしようぞ」






 

いつかヒロインを助けるヒーローな話も書きたいです(*´ω`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。