優乃ちゃんの告白
向き合って大きく開いた両方の掌で、掌を合わせるでも指を絡め合うでもなく、いや、最終的には絡め合うのだけど、指同士がぶつかり合う心地よさを楽しむみたいに手を細かく前後する、アレ。
四月頃だったか、お昼休みに男子のグループと女子のアタシらのグループで話が盛り上がった時に、前の日の夜のドラマの話になった。
人気の男のコが主役で「カッコよかったなァー」「カッコよかったやんなー」「きゃ~っ♪」っとテンションがアガッたら、「ワチャワキャするな、ワチャワキャっ!」と陣内が笑いながらツッコんだのだ。
このツッコミワードはアタシたちにウケて、しばらくアタシたちの間で流行った。
以来、名前はワチャワキャ。
そして、このワチャワキャは、仕掛けてきた方には、話したくて話したくてたまらないことがあるのだ。
アタシたちはワチャワキャしながら、「聞いて聞いて聞いて!」と優乃ちゃん。
「何々??」とアタシ。
「あのなぁ……」と優乃ちゃんが周りを見ながら声をひそめたので、アタシは指を絡めながら「うん」と息を殺して大切に聞く。
どーしたの優乃ちゃん?
舞夏おねーちゃんに言ーてみ?
優乃ちゃんは、赤ちゃんができた報告をする新婚の奥さんみたいな、キレイな照れ顔で言った。
「アタシな、Gになってん………」
あ、あれ?
しまった、聞き逃した。
何て言ったんだろう?
大切に大切に聞いたつもりだったのに、アタシの中に優乃ちゃんの言葉が残っていない。
優乃ちゃんの声は確かにアタシの両方の鼓膜に届いた記憶はあるのに、アタシの中で意味にもイメージにも文字にもならずに通り抜けて、アタシの遥か後ろへ駆け去っている。
あれぇ? おかしいなあー。
考え事してたかなー。
なんとなく「もう一回言って」って言い出しにくくてワチャワキャの時の優乃ちゃんのテンションを思い出して、そのテンションに合わせた笑顔と声で「うわぁー、そーなんだー!?」と当たり障りのない返事をする。
そして、優乃ちゃんの口から続けて出るだろう言葉たちから、優乃ちゃんが何て言ったのかを導き出そうと神経を研ぎ澄ます。
優乃ちゃんの口が開いた。
唇がかわいい。
「最近なぁ、運動とかしてたらイタタタタってなることがあってなぁ、みてもらいに行ってんな。
じゃあ担当のおねえさんがな、「うわー、スゴーい!! いろいろ痛かったでしょー! Gになってるって、自分じゃわからなかったんやー?」って。」