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大好きな優乃ちゃん

「Gカップ?

 ほう…………。

 ずいぶんと“ゴキゲンなカップ”なんでしょうなぁ」







 木原優乃(きはらゆうの)ちゃんに名前を呼ばれると、かわいくって、ちょっとときめく


 優乃ちゃんはアタシと同じ一年六組で、高校に入学してから知り合ったお友だち。

 なんと言っても、まず、声がかわいい。

 キラキラとキレイな声は、細くて小さくて。

 優乃ちゃんと話すたびに、頭の中に線香花火の映像が浮かんでくる。

 あの、ぽってりとした光の玉の周(まわ)りをチリチリと現(あらわ)れては消える火花。

 あの、かわいくて儚(はかな)い光のような声は、なんか、一生懸命(いっしょうけんめい)聴いてあげなきゃって気持ちになる。

 一人っ子だったアタシは、心の中で、秘(ひそ)かに妹に任命しているのだ。

 アタシの、かわいい妹。

 で、そのかわいい妹の優乃ちゃんは、アタシたちと同じフツーの関西弁なんだけど、名前の呼び方だけアタシたちとちょっと違(ちが)う。

 アタシの名前は榎本舞夏(えのもとまいか)で、パパやママはもちろん、みんなも名字(みょうじ)ではなく“舞夏ちゃん”って名前で呼んでくれる。

 舞夏の“まい”に力(ちから)が入って一つの塊(かたまり)になって、オマケ的に残りの“かちゃん”がついてくる感じ?

 優乃ちゃんは違(ちが)う。

 “まいか”がおとなしくて、後ろの“ちゃん”が急に高い感じ。

 話すのもまだ得意じゃない小さな子が、一生懸命に話しかけてくる時みたいな。

 アタシの中の母性本能というか“姉”的な何かが刺激されるのだ。

 特に会話の途中じゃなくて名前だけ単独で呼ばれるのが好き。



「舞夏ちゃんッ!!」


 そう、こんな感じッ♪。



 名前を呼ばれて顔を向けると、教室の後ろの入口から登校した優乃ちゃんが入ってきたところ。

 体育の授業とかで列をつくる時は優乃ちゃんが先頭でアタシが二番目。

 このクラスで唯一(ゆいいつ)、アタシより小さな女子、優乃ちゃん。

 そんなに差はないんだけど。

「舞夏ちゃん!舞夏ちゃん!舞夏ちゃん!」

 優乃ちゃんはアタシの名前を何度も繰り返しながら、自分の席にカバンを置いて駆(か)け寄ってくる。

 両方の掌(てのひら)を胸の高さで開き、

「舞夏ちゃん、舞夏ちゃん、舞夏ちゃん!

 あのな、あのな、あのなっ」と、ワチャワキャを求めてくる。

 ワチャワキャはアタシたちのグループだけが使う呼び方。

 命名 by ウチのクラスの男子の陣内(じんない)。

 女のコがテンションがアガッた時に友だちとやりがちなアレのことだ。


 

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