第四話:貴方は誰?
崖から落ちた私を救ってくれた貴方は誰? 不精髭が不潔な貴方は誰なんですか?
「・・・・・・んっ」額に冷たい感触に私は目を覚ました。
ここは何処だろう?見た所だと建物の中のようだけど・・・・・・・・
「あれ?確か私、崖から落ちて死んだんじゃ・・・・・・・・」記憶を辿るが誰かに助けて貰っても下にクッションの様な物も無かったから落ちたら確実に死んでるはずなのに・・・・・・・・
「訳が分かんない!!」頭を抱えて唸る私。
「起きたのか」人の声が聞こえるっ!!
声の方向に視線を向けると全身を真っ黒の服で包んだ二十代後半の男の人が立っていた。背格好は黒のコートに黒の衣服、髭は手入れをしてないのか伸び放題で不潔に見える。
腰まで伸びた黒のストレートヘアーも手入れをしてないせいで乱雑だ。
ただ片方しかない闇の瞳が気風を漂わせていた。
「あっの、ここは・・・・・・・・?」半身を起き上がらせて尋ねた。
「あんたが落ちた所にあった俺の家だ」家?下は地面だった気が・・・・・・
「まぁ、簡単には分からないように作ったからな」男は私の思考を読んだ如く答えた。
「・・・・・あの、改めて助けてくれてありがとうございます」私は頭を下げて礼の言葉を言った。
「別にあんたが俺の家の下に落ちたから介抱しただけだ」男はぶっきら棒に答えると私に歩み寄った。
「天界から来た姫さんってあんただろ?」私の花嫁衣裳を見て聞いた。
贅沢の限りを尽くした衣裳は見るも無残な形になっていた。
こんなのを主人様が見たら卒倒しちゃうよ!!
しかもまだ皇帝陛下を始めとする王侯貴族に挨拶だってしてないのに!?
こんな恥ずかしい格好で行けないよっ・・・・・・・・・・
「やっぱり頭から落ちたから気が狂ったか?」混乱する私を男は物珍しそうに見る。
「違います!大切な花嫁衣裳がボロボロになったから哀しんでるんですっ」涙ながらに男に半ば八つ当り口調で言う。
「何んだ、そんな事か。それなら直ぐに元通りにしてやる」男が手を振っただけで花嫁衣裳は元通りになった。
嘘ッ!?呪文も言わないで魔法を発動させるなんて一部の実力者にしか出来ない芸当なのに!!
「あ、あのぅ、質問なんですが、貴方の階級は・・・・・・・・?」こんな芸当を出来る階級は必然と・・・・・・・・
「階級?階級は“レリウーリア”だが?」男の階級を聞いて私は眩暈を覚えた。
レリウーリアと言えば六階級の内の最高位に位置するエリート中のエリートなのですっ
そんな方に怒鳴るなんて・・・・・・これから私は無事に魔界で生きていけるのかな?
「まぁ俺の階級の話よりなんでこんな荒野の果てに姫さん一人で居るんだ?」男の質問は当然と言える。
「・・・・・信じてくれないかも知れませんが聞いて下さい」私は男に有りの儘に説明した。「ふぅーん。随分といい加減な護衛だな」話を聞き終えた男は懐に手を伸ばし普通の倍はある大きさの煙管を取り出し蒸かし始めた。
「事情は分かった。俺が姫さんを万魔殿まで連れて行ってやるよ」口から大量の白煙を出しながら男は言った。
「ほ、ホントですか!」男の言葉に私は歓喜した。
やった!これで条約は守られる!!
心の底にあった使命感が甦ってきた。
「まぁ、今からワイバーンに乗れば夕方には着けるだろう」喜ぶ私を見ながら男は再び煙管を吸い始めた。
嗚呼、神様・・・・・・・・・・・先程は大馬鹿野郎なんて言って御免なさい。
やはり貴方は心優しき神様であられました。
不精髭さん(あだ名)に助けて貰って次回、私は魔界の皇帝陛下に謁見しますのでこうご期待!!