96本目 空飛ぶ遺跡!天空遺跡に舞い降りたマイマイ!!
『おぉ〜! たっのしいぃー!』
空を駆け抜けるウォータースライダーに吾妻はご満悦だった。
ほぼ一直線の航路だが、彼女がはしゃいで重心を右に左にと勝手に傾けるので、落ちないように舵を取り直す。
ちなみにオーデュイが吾妻を、俺が先行く道や他の配信者達を撮影している。
別に吾妻以外なら撮影するのに緊張などしないが……原因は分かっている。これ以上考えないようにしなければ。
そして──
『着いたぁー!』
ウォータースライダーの終着点は天空遺跡の広場に目掛けて落ちる滝だった。
飛び出した俺たちだが、オーデュイが変身してクッションとなってくれたので怪我なく済んだ。
『ふふふ〜オーデュイありがと♪』
(どういたしまして〜)と誇らしげな表情のオーデュイは、吾妻に『よしよし〜!』と撫でられた。
『ふぅ〜着いた着いた〜』
『おい松實! 早く降りろ!』
俺たちより先に到着した二組。
松實・生野ペアは着陸に失敗したようで、ただいま生野に松實が跨っている状況だ。
『怖かったね……』
『リリナ、もう降りていいのよ?』
『怖かったね……』
『再放送?』
飛び出した瞬間、猫獣人へと変身した野田は猫の能力らしく、庭白をお姫様抱っこした状態で見事高所から着陸に成功した。
ただ庭白がしがみついたまま降りてくれない。
水着姿に猫耳、猫手、猫の尻尾が生えている状態だ。
露わになっている肌を密着させ、庭白は今の状況をしっかりと堪能していた。
ちなみに全ての浮き輪がまだ使えるくらいには無事だった。
俺は猪俣にチャットで到着の連絡をして、宝具:侘び寂びの力を止めてもらった。
来海にはしっかりと休んでもらおう。彼女には付き人たちがいるし大丈夫だろう。
ここのダンジョンも問題なく電波が入る場所で良かった。SIMカードの変更は余儀なくされたが。
『おぉ〜来てみるとここ、すっごくおっきいね〜!』
──セブダンジョン上空
空に浮かび上がる遺跡群の中央に聳え立つ石造りでできたアジアンめいた城。
廃城となったこれら一帯がどうやって浮かび上がっているかは謎だが、今更ダンジョン内でそのような疑問を持つのは無粋である。
『マイマーイ! 来て来て! この雲泳げるよ〜!』
『えぇ! ほんとぉ!?』
この辺をフワフワと浮かぶ小さな雲の中に入った松實は、同じようにフワフワと宙を泳いでいた。
なるほどな。恐らくこの雲のようなものが驚異的な浮力を生むのだろう。
晴れた今でも、この遺跡群の下部は雲に包まれているから、まだ浮いていられるんだな。
にしてもだ。
『うわぁ〜ヒンヤリしてて気持ちいい〜!』と雲を泳ぐ吾妻たちだが……上着、やっぱり持って来て着させればよかったな。
『って、遊んでる場合じゃにゃいでしょ。あいつらここにいにゃいし、攻略、先越されるよ?』
『たしかに! そうなんですよ皆さん! 実は今、タイガー?』
『ディーパー』
『そう! シープウェブの』
『ディープウェブ!』
『そー! ディープウェブの人たちが来ててレリクスを横取りしようとしてるんです! 負けないように、わたしたちが先にレリクスを手に入れるよー! それではマイリます!』
野田が言葉を修正してくれて、視聴者に現状と目的を伝えることができた。
吾妻を先頭に、いざ城の中へ入った瞬間──
『ん?』
『マイマイどしたのー?』
吾妻の動きが止まり、声をかけた松實含めて演者である野田が彼女に近付く。
『多分トラップ踏んじゃった! すまいりすまいり〜♪』
吾妻が足を上げると、何かが起動した音がして床が突然開いた。
『うわぁぁ〜!!』
『うぎゃー!』
『にゃぁぁあ!?』
暗闇の底に真っ逆さまに落ちていく三人。
追う隙もなくすぐに穴は閉じてしまった。
「エリナ!? きゃっ!?」
すると残された俺たちは体が突然として浮き出す。
さっき吾妻たちが遊んでいた雲が、風でこちらに流れてきたのだ。
俺はすぐに脱し、オーデュイは背丈的に囚われなかったが、庭白と生野が天井に開いていた穴へと飲み込まれるようにそのまま連れて行かれてしまった。
さらには入口から通路奥に向かって、猛烈に風が吹き出した。
「わぁぁ!? 助けて〜!」
スライムの身体では耐えきれずオーデュイが遺跡奥へと吸い込まれてしまった。
ものの数分でこうもバラバラになるとは……撮れ高の神に愛されているというか何というか……。
全員心配だが、戦えないオーデュイを一人にするのが一番危険だ。今の吾妻はもう十分強いし、野田と松實もいるなら大丈夫なはず。
救助優先度を考えて、俺は遺跡奥へとオーデュイを追いかけた。




