94本目 【男子禁制!】マイマイおすすめ!今季の水着を紹介しちゃうよ〜☀︎
「──えー! やだよこれ!」
「やだじゃないだろ。それは露出が多すぎる。上からこれを着るんだ」
セブダンジョンにある着替え(場所に勝手にしていた)小屋の前で、ピンク色のフリルの付いたビキニを持つ吾妻に対して、俺は青色のラッシュガードを渡そうとしていた。
「可愛くないじゃん!」
「可愛いとかじゃなくてだ。未知のダンジョンに挑むんだぞ。これは露出を抑えるだけじゃなくて、防御付与や緊急時の救命胴衣に様変わりする天空堂の製品だ」
「わたし最強だし……!」
「何より吾妻さんも嬉しいUVカットも付いてる……!」
「あ、それは嬉しい。でも、可愛くないもーん!」
「ちょっとアンタたち、にゃに痴話喧嘩してんの」
呆れた野田に俺たちは
「していない」「してないもん!」
と返事をした。
「えりにゃん聞いてよー! 東くんが可愛くないの渡そうとするんだよー!? あと、わたしチワワじゃないよ? チワワ喧嘩ってなにー!?」
「あー、はいはい。そうねー。マイマイは絶対ピンクの水着が似合うんだから、それにしにゃ〜。ほら、更衣室入って」
「うん!」
吾妻が一度受け取ったラッシュガードを投げ捨てて、小屋の中に入る。
「あ、おい……!」
「はーい、ここからは男子禁制でーす。にゃに? 変態扱いされたいの? ド変態」
「既に最終進化してるじゃねぇか」
「マイマイが好きにゃの着せたらいいじゃん。言ってること束縛彼氏みたいにゃんだけど、キモい」
「遠慮なく言うな……。まぁ、確かにやり過ぎたかもしれないが、吾妻はもう1000万人以上のファンがいるストリーマーだ。でもまだ女子高生だ。彼女は何も悪くないのは分かっている。しかし、好きなことが吾妻を危険に晒すかもしれないんだ」
「……そうね。それは分かる。アタシもいっぱいそういうのは経験してきた。けどさ、それでもやっぱ好きにゃことして生きてたいのよ。だって人生一度きりだし! よく知らにゃい奴らのために気を遣うのとか、もったいないじゃにゃい?」
「エリナー、まだ外にいるのー? こ、これ前後分からないんだけど……」と小屋の中から庭白の呼ぶ声がする。
「それにマイマイとアタシには、過保護な人外がいるし! にゃんかあったら守ってくれるんでしょ? それでいいじゃん♪ いるよー! すぐ行くー! ……じゃ、覗いたら殺す」
物騒な挨拶をして、野田も小屋の中に入った。
**
『こんマイリー♪ マイマイです!』
そして、吾妻が着たい水着のまま、撮影が始まった。
昔、ビキニアーマーで配信したら数字が取れるかもなんてほざいてたが、そんなの使わずとも8桁までファンを伸ばすことができた。
俺としては、やっぱりラッシュガードでも良かったとは思う。
彼女はどんな格好でも、魅力的であるのは間違いないのだから。
……だからカメラで今の彼女を捉え続けるのは、俺の心が保たないと判断した。
はぁ……てか、結局ビキニアーマーではなく、ビキニで攻略することになるんだな。
一旦の撮影としては、この砂浜から次のエリアに行く場所捜しだった。
セブダンジョンは、目に見える範囲のビーチに閉じ込められたダンジョンだ。
ビーチ沿いに歩いてもボートで水平線の向こうに行こうとも、気付けば帰って来てしまう。海底に潜ったり、砂浜を掘ってみたりなど、さっきまでの遊んでいる最中にも探してみるものの手掛かりは何もなかった。
さすがにただのプライベートビーチ止まりなダンジョンなわけはないと思うが……。
「──いいわね。アンタたち。目的は分かってるでしょうね」
「もちろんだとも。僕たちはディープウェブの住人〝ディーパー〟──華麗に宝具を盗んで転売してやるさ……!」
「うん」
「よぉし、アイツらが宝具見つけたら、アンタの入れ替わりマジックを使って奪うわよん」
「イェス、ライス」
……と、三人がコソコソしているなと思い、耳を傾けているとこのような会話が聞こえてきた。
馬鹿だろ、こいつら。
作戦会議は誰もいないところでしろ。こんな大股3歩で届くような距離で話すな。
しかし、こいつらディープウェブに通じていたか……。
海外ダンジョンの影響で宝具を手に入れやすい状況に陥ったため、ディープウェブ界隈が活発化してるという。
一攫千金を狙って一般人も出入りするようになった問題もあるらしいが、彼女たちもその口だろうな。
武崎中心に日本の探求省が躍起になって、法の制定と取り締まる組織作りをしているが、世界相手になるとかなり難しい。全ての国がおいそれと従うわけがない。
ただ吾妻の言う通り、この三人はさほど脅威ではないな。
『ぷへーっ! 海の中にはなさそうだよ〜』
『そだねーマイマイ! 綺麗なお魚さんはいっぱいだったね〜!』
『絶対もう行かない……海の底、暗くて怖すぎ……』
『ビビりだな〜しょーのちゃんは! じゃあ、もう一回行こっか』
『鬼かてめぇ! ……ん?』
海中探索組である吾妻、松實、生野の面子が帰ってくると、空が分厚い雲に覆われ始め、終いには大雨が降って来た。
熱帯特有の気候、スコールだ。
『うわー! 雨だ!』
防水ではあるが本能的に機材を先行にして、みんな小屋へと避難する。
「……あれ?」
「吾妻さん、早くこっちに。風邪引くぞ」
「東くん! 雲の中! なんかある!」
吾妻が一人指差す雲の中には、巨大な黒い影が微かに見え隠れしていた。




