70本目 大挑戦!アキハバラダンジョン攻略開始!!
「アキハバラダンジョンを攻略する」
ハロウィン前日。
SS級模倣者として秘密裏に証人喚問を受けた俺は探求省大臣の武崎の前で宣言した。
他にも佐藤、松實や生野、石狩など多くの探求省職員がいる中での発言だ。
先日の失態もあり、会議室内では動揺が広がっている。
「おぉ〜! いいねー!」
「やろやろー!」
と、隣の吾妻と松實だけは好反応を示す。
「ヨナグニダンジョンの模倣者よ。ハザマが渋谷で事を起こすと宣告したというのに、なぜわざわざ再びアキハバラダンジョンを攻略する」
「東くんだよ! 東くん!」
共に来てくれた吾妻が全力で名前を訂正させる。
「そうだったな」と武崎が軽く謝罪したところで、俺は答えた。
「渋谷で混乱を引き起こすことは間違いありません。シブヤダンジョンには仲間と思しき模倣者とも遭遇しました。そしてハザマには何らかの方法を用いてレイドボスを召喚することができます」
過程は分からずとも、シンジュクダンジョンで遭遇したムガテ型のレイドボスは、ハザマが連れて来たのに違いはない。
もし強力なレイドボスに対して尸戸の透過能力を使えば──誰にも認識されることなく、人や建物をすり抜けて渋谷に集めることができる。
「レイドボス、それにシブヤダンジョンやアキハバラダンジョンの魔物を一斉に出現させ、街中に解き放つことができる」
「なっ……! では、それを阻止しないと!」
「無理だ。ハザマがすぐに行動を起こさず約二ヶ月も置いたのは、着実に準備を重ねて確実に成功させるためだ。透過された魔物は全てシブヤダンジョンにいるはず。発動者の尸戸が能力を解除するまで誰にも見つけられない」
「さらに、模倣者への同情を誘って情報を拡散させた。当日は我々探求省が制限をかけようとも多くの人が訪れるだろう。パニックは避けられないか」
「はい。透過された魔物がシブヤダンジョンに配備されていることを、私たちのスタッフメンバーが見抜くことはできます。しかし──」
「攻撃は通らない、か。ハロウィン当日まで手出しできないのが現状だな」
「奴らはかなり慎重だ。アキハバラ襲撃も勝算があったからこそ実行したんだと思います。彼らには何年もの長い時間を与えている。次も間違いなく成功するはずです」
俺と武崎の会話を受けて「そんな……」と繁長は落胆。他の職員も同様の反応を見せる。
「しかし、東さんは考えがあって、アキハバラダンジョンを攻略しようというのですね」
佐藤の言葉に俺は頷く。
「はい。慎重なハザマは当日も表には出てこない。現在拠点としたアキハバラダンジョンで高みの見物をしているはずだ。そこを少数精鋭で突く。アキハバラダンジョンの魔物も連れ出しているから、いつもより手薄なはず」
「渋谷はどうする」
「戦える他の探索者や探求省職員にお願いしたい。主に佐藤さんが」
「なるほど……え、僕ですか!?」
「ええ。渋谷にはいくらかの模倣者が確実にいる。それをあなたに止めていただきたい」
「すみません、聞いてなかったんですが……」
「今、言ったので。佐藤さんならできます。顔出しが心配ならお構いなく。いい物がありますので」
佐藤は溜息をついたが、渋々了承を得た。
「やおくんなら行けるよー!」
「そうだな」
隣で生野がうんうんと頷いて、バシバシと松實は佐藤の背中をぶっ叩いた。
「他にも危険かつ勝ち筋の薄い策はあります。それでも、奴らのテロを止めるためにも、ここでやり通さなければならない。何よりハザマたちは必ずいるはずのアキハバラダンジョンの模倣者の能力が欲しいと考えて襲った。だからこそアキハバラを攻略する」
──そして、俺の推測は正しかったことになる。
渋谷に魔物は予定通り溢れ出し、帰って来れなくなるアキハバラダンジョンに共に行って欲しいと要請した頼れる探索者たちは皆、それぞれS級の模倣者と遭遇した。
『はっ! あそこ、みてみて! 誰かいる! お〜い!』
俺たちもまた模倣者と遭遇した。
ツインテールの髪型、フリフリの衣装、まるでアイドルみたいな中学生くらいの女の子が行く先に立っている。
当然、普通の人間であるはずがない。
『わぁ……! ホタルのライブにようやく来てくれたー! うれしい〜! それでは玉響ホタル、ファーストステージ! おにいちゃんたち、一生楽しんでいってね!』
一人称がホタルの模倣者──玉響ホタルが指を鳴らすと、ダンジョンの構造が変わりだす。
玉響が立つ場所はステージへと変化、周囲は観客席となり、まるでライブ会場へと変貌を遂げた。
どこからともなく現れた照明が玉響を照らし、今にも開演しそうだ。
『おー! すごーい! ダンジョン内でライブが楽しめそー!』
『もー、おにいちゃんたちったら〜。会場内は撮影禁止だぞ☆ でもでも、ホタルのかわいいとこいっぱい配信してくれたら許してあげる! だからさ。ホタルだけを映さないなら、その女消す〜。ファンのみんなー!』
玉響が呼びかけると、ファン──魔物がうじゃうじゃと湧いて出てきた。まだ、こんなにもいたのか。
いや、SS級模倣者だ。イズモダンジョンの天原と同様に、自分のホームであるダンジョン内ならば思うがままに創造できるのか。
多種多様な魔物は、共通にペンライトを所持している。
『むむっ、なかなか大変そうだけど、最強のわたしが全部倒すからね! それでは、アキハバラダンジョン攻略……まいります!!』
今までは俺が吾妻を映しながら配信作業もしていたので、動きが制限されていたが、今は優秀なオーデュイがいる。
彼女にパソコン等を預けた今、かなり自由に裏から守ることができる。
それに、吾妻も二つの宝具を携えて戦える。
取り逃がしたものは俺が仕留める。もちろん、吾妻の活躍は撮り逃さないように。
SS級ダンジョン攻略戦。
今や大人気のマイマイ生配信の同接数は10万人を突破して、まだまだ伸びを見せていた。




