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ダンジョンストリーマー!! 〜人気急上昇中のJK配信者はチート級に強い──なぜなら裏方の俺が暗躍しているから〜  作者: 杜 一樹
第12章 シブヤダンジョン

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66本目 人語を話せるモンスターがいたよ!


『こんマイリー♪ マイマイです! 今日はシブヤダンジョンにやってまいりました! てか、ダンジョン配信するの久しぶりなんだって! わたしはそんな感じしないんだけどな〜』


 危険等級B級、攻略間近のシブヤダンジョン。

 洞窟や森、水辺に砂漠と、環境が闇鍋状態になっている当ダンジョンの最大の特徴は、とにかく魔物《モンスター》の数が多いところだ。一体一体は弱いが、倒しても倒しても短い間隔で永遠にポップし続ける。

 厄介ではあるが、修行にはうってつけの場所、のはず。


『うーん、今日あまりいないねー』


 珍しくほとんど魔物《モンスター》と出くわすことはなかった。

 吾妻は新しく買った、アーリークローン製のちょっといい剣を振るいたそうにしてるが出番がない。

 本当はもうオーダーメイドの天空堂製品が良いし、金銭的にも余裕はあるのだが、彼女はすぐに武具《ギア》を壊すか失くすかするから簡単に与えられない。


 しかし、このままじゃリハビリにもならないな。

 月末には、この街でハザマ主導のデモが行われる。

 模倣者《われわれ》のホームとも言えるダンジョンに何か仕掛けがあるかもしれないから、よく目を凝らさないといけないのだが……。


『よーし、今度はあっちの方に行ってみよっかな! ……ん? あそこにもモンスターが! とりゃあ!』

 

 草むらから覗く水色のスライム。

 吾妻は遠慮なく剣を振り──


『わわわっ! ストップストーップ!』

『おっとと……お兄ちゃん声変わりしたー?』


 否定の意を込めて、カメラを左右に振る。


『こっち! こっちだよ!』

『んん? ……ふぇっ!? 今スライムが喋った!?』

『スライムじゃないよ! ……いや、今はスライムの姿なんだけどさ……ワタシは立派なにんげんだ!』


 草むらから完全に姿を現したスライム。

 全体はプルプルとした水色のボディ。いかにもスライムの見た目であるが、クリッとした瞳がこちらを見ながら(斬らないでぇ……)と懇願している。


『はっ! 人語を話せるモンスター……もしかしてイミテーター!』

『いた? よく分かんないけど、ワタシはにんげんだって! 大出結衣《おおで ゆい》、学生! 女子高生!!』

『オーデュイ?』

『大出結衣だっ!』

『お兄ちゃん! この子かわいい! うちで飼おうよ!』

『人の話聞けよっ!!』


 スライムはポヨンと縦揺れしながら、プンスカ怒っていた。

 とりあえず敵意もなければ危険性もなさそうなので、彼女の話を聞くことにした。

 何が素材になるか分からない以上、大出の許可を得た上で撮影は続行する。



『それで、オーデュイは──』

『大出……もういいよ、それで』

『どうしてスライムになったのー?』

『いや、詳しくは分かんないだけどさー。渋谷にいたんだけどダンジョンに入っちゃったみたいで。で、気付いたらスライムになってたんだよ!』


 シブヤダンジョンの主な入口はファッション最先端の聖地、シブヤ10Q(いちまるきゅー)の建物内にある。

 地下二階までのはずのエスカレーターが地下三階に続いており、下りればそこがダンジョンとなる。

 だが、シンジュクほどではないが、ここ以外にも入口は複数見つかっている。きっと未発見だった入口の一つから迷い込んでしまったのだろう。


『なるほどなるほど。つまり、オーデュイは人間に戻りたいってことか』

『そりゃ、もちろん! できそうかな?』

『もちろん! だってわたしは最強のダンジョンストリーマーだからね!』

『おぉ〜! やっぱりダンジョンストリーマーだったんだ!』

『ふふーん。チャンネル登録者数100万人突破! 今1番勢いのあるマイマイチャンネルのマイマイだよー!』

『おぉー! マイマイ〜! 知らないや』

『ガーン』


 凄いドヤ顔で自己紹介した吾妻だが、100万人超えていても知らない人の方が圧倒的に多いんだ。調子に乗るな。


『うーん、ワタシ配信とか色々見てたんだけどなー。最近始めたの? ならすごいね!』

『えっへへ〜。そうでしょ〜。それにしても、どうやってオーデュイを人間に戻そうかなー? わたしだったら最強だから気合いで何とかなるけどなぁー』

『気合いでなんとかならないから困ってるんだよぉ……』

『まぁ、そうだよね。お兄ちゃん、何かいいアイデアないー?』


 撮影する俺に尋ねる吾妻。

 大出……オーデュイも目をパチパチさせながらこっちを見る。


『恐らくだが、オーデュイ……大出さんは怨呪《ダンジョンカース》にかかっている』


 ダンジョンを探索していると、前触れなく災厄が降りかかる。

 何を以て?

 条件は?

 かかる共通点は?

 解明が難解しており、狙われてしまえば不可避の呪い……それが怨呪《ダンジョンカース》だ。


 周囲では、辛い記憶ばかり思い出させ続けられる野田や、五感が不自由になった来海の従者など。

 ただ、野田の場合は庭白が側にいることでストレスを緩和させているし、鈴鹿たちの場合は宝具《レリクス》:白湯華があれば治る見込みがある。


 ただ、オーデュイのように体全体がスライムに変容した場合は、治療作用のある白湯華では効果があるとは思えない。

 身体が丸ごと変貌した怨呪《ダンジョンカース》といえば、子供になってしまった探求省の今川が挙げられるが、未だ元に戻れていない。


『怨呪《ダンジョンカース》を解呪するには効果によって様々だ。まずはスライムになった経緯を詳しく思い出すことと、身体を細かく調べないとな』

『おぉ、わかったよ……。でも、あんまり覚えてないんだよなぁ。クレープ食べながら渋谷を歩いててぇー。近道しよーっと思って、んー……? 思い出せないや』


 オーデュイが疑問に思うと、それに合わせて水色の〝?〟マークが頭に実物となって浮かぶ。


『なら、身体を調べるか。見たところ普通のスライムと違って核は見えないし、そういった点からも何かヒントが──』

『わわわわ……』

『こらお兄ちゃん! ダメ!』


 俺がオーデュイに手を伸ばそうとすると、吾妻がギュッとスライムを抱き寄せる。


『オーデュイは女子高生なんだよ、JKスライムなんだよ! 触ったら変態だよ!』

『そうだぞー! ……あれ? スライムJKじゃなくて、JKスライムなの? それスライムじゃん、ワタシ』


 確かに吾妻の言うとおりだ。

 配慮が欠けていたとしてオーデュイに謝罪し、吾妻にスライムの体を調べてもらうことにした。


『モチモチでヒンヤリ〜』

『のわっ! くすぐったい!』


 ろくに調べもせず、ただ自分の欲望のままにオーデュイを弄ぶ吾妻。さっきのセリフは何だったんだよ。

 とりあえず側から見る限りでは、何か紋章や魔法陣が刻まれているわけもなく、原因も解呪のヒントもなさそうだ。


『んんっ!?』

『どうした吾妻?』

『わ、わたしの手が……すっごいスベスベになってるー!』


 元より綺麗な吾妻の手が、さらに磨きがかかって光り輝いているように見えた。


『オーデュイのこの体には美容成分が含まれてるって分かったね!』

『おぉっ! ワタシすごっ!』


 ……そうか。

 特に意味のない情報を得られたところで、ひとまず荷物を持って立ち上がる。


『おっ? お兄ちゃん、どうするの?』

『シブヤダンジョンを一旦探索だな。ここで怨呪《ダンジョンカース》にかかったわけだし、危険だが細かく調べてみよう』

『そうだね! だいじょーぶ! わたし最強だし、呪いなんて倒しちゃうからね!』


 物理的なものではないんだが……まぁ、多分吾妻なら大丈夫な気はする。


『おぉっ……! ありがとう! 3(・)人(・)に勇気出して話しかけてよかったよ!』

『うん!! ……ん? 3人?』

『え? マイマイチャンネルって3人組じゃないの? ずっと後ろにいるじゃん──今も』


 ──次の瞬間、俺たちは頸を深く斬られ、血で辺りを赤く染めた。


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