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ダンジョンストリーマー!! 〜人気急上昇中のJK配信者はチート級に強い──なぜなら裏方の俺が暗躍しているから〜  作者: 杜 一樹
第9章 ビワダンジョン

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47本目 わたしも知らないお父さんを紹介するよ?


 ──模倣者《イミテーター》は突如としてダンジョンに生まれ落ちる。

 能力はもちろんのこと、性別や年齢、知能などに統一性はなく、法則性も存在しない。

 理由など、探索者《シーカー》も政府も、俺たちですら知る由もない。


 ヨナグニダンジョンにいると自覚した時は、人間でいう5歳ぐらいの頃だろうか。

 日焼けした上裸筋肉男が、俺を見た途端に失礼な発言をした。


「そうかそうか! お前も模倣者《イミテーター》かぁ! いやー、ガキンチョのもいるんだなぁー」


 もう一瞬で距離を詰めてきた。

 最初から言語能力を身に付けていたので、言葉は理解できたが、たまにノリと勢いに任せた造語を話すので、意味が理解できないこともあった。


「んで、ガキンチョ……って、面倒だな。名前あんのか?」


 俺は首を横に振った。


「言葉は分かるみたいだな。とりあえず俺の自己紹介するか! 吾妻大悟《あづま だいご》だ。お父ちゃんと呼べ」

「なんでだよ」

「やっと喋ったか! てか喋れたのか!? ま、それはいいとしてだな。頼むからお父ちゃんって呼んでくれよ〜。俺には娘が、ちょうどお前くらいのがいるんだけどよ。それが、まぁ〜かわいいのなんの!」


 大悟は自分の娘のことばかり一方的に話す。

 俺ではなく、彼には見えている娘の妄想に向かって延々とデヘデヘしていた。


 ……そこに忍び寄る影。

 ヨナグニダンジョンには異常な進化を遂げた動植物型の魔物《モンスター》がそこら中にウヨウヨしている。強さはどれもレイドボス級だ。


「──まさしく金色《こんじき》の愛娘《まなむすめ》でさ〜。いやー、ほんと恋しくて恋しくて……うぉぉおぉ、代わりにお父ちゃんと呼んでくれよ〜ん。頼むよ〜」


 鬱蒼と生い茂るジャングルの木々を薙ぎ倒しながら真後ろまで接近した巨大なムカデ型の魔物《モンスター》に、大悟が気付いている素振りは未だない。

 俺には真正面から戦える力など当時はなかった。

 逃げて、隠れて、時には別の魔物《モンスター》を囮にして生き長らえてきた。

 申し訳ないが、今回はこの男を見捨てる。


「おいおい、娘の話をまだしている途中だぞ。いいから座ってろ。邪魔する奴はもういねーから」


 その言葉の前には、魔物《モンスター》は遥か彼方へと吹き飛んでいた。


「……っ、あんたは……」

「吾妻大悟だ! って自己紹介したよな。で、お前はなんて言うんだ?」

「さっき、ないと伝わってたよな。……ずっと一人だったから名乗るようなこともなかったし」

「おーそうか。じゃあ、これから一緒に冒険するからな、俺が付けてやるよ。そうだなー、じゃあ今日から俺の息子ってことで、吾妻良《アヅマ リョウ》って名乗れ。もし息子だったらこの名前を付けるって決めてたんだよなー」

「アズマ、リョウ……。え、冒険?」

「良い子に育ってほしいって意味を込めて、ん? おう。そうだぞ。あ、俺ダンジョンで配信活動してるんだけどな? いつもソロだからカメラぶれぶれでよぉー。ちょっとカメラマンとか話し相手とか欲しいんだわ。あと、ついでに編集作業もしてくれると楽だな!」

「待て待て、一気に何か分からないものを押し付けるな」

「だいじょぶだいじょぶ。ちゃんと教えてやっからよ。それに、ダンジョンにいる間は俺がお父ちゃんとしてお前を守ってやる。だから安心してついてこい!」


 俺の意見を聞き入れることなく、勝手にこの先を決められてしまった。



 ──それから約2年間。

 ヨナグニダンジョン内のあちこちを回りながら、撮影機材の扱い方、編集作業、魔物《モンスター》との戦い方や一人でも生き抜くためのサバイバル術など、俺は数々のことを教えてもらった。

 SS級の模倣者《イミテーター》だからなのか、彼の雲を掴めないような話も理解して、俺も肩を並べて戦えるようにはなった。

 だが、今でもそれは、あいつを追い越すことは叶わないだろう。

 そして、そんな奴であっても、どれだけの時が経とうがヨナグニダンジョンを攻略することはできなかった。


「いやー、困った困った。なかなかに広いなー。それに深いところに潜れば潜るほど魔物《モンスター》は強いわ、罠は多いわ、何より電波はほぼ届かないしよ。投稿すんのにいちいち上まで戻るのは面倒だな」

「一度、ヨナグニダンジョンを出ないのか? 娘にも長らくあってないんだろうし」

「そうしたいのは山々なんだが……ガッハッハー! このダンジョンはソ(・)ロ(・)専(・)用(・)なんだわー! ここを出るには、中と外で同時に出入りするしかないんだよなー! 中の俺が死なねぇ限り、新しい奴は入って来れないみたいだしよ!」


 ヨナグニダンジョンがSS級たる所以、それが一人しか入れないという縛りがあることだ。ピッタリ外の人と合わせて交代する以外、途中で出ることもできない。

 このルールを破るには当然攻略するしか手段がない。

 そんな高難易度のダンジョンに長らく囚われている大悟だが、呑気に笑っていた。

 事前に知っていたかどうかは関係ない、ただダンジョンを独り占めできる現在の状況に彼は満足している。

 途中で寂しくなって、俺を連れ回しているのだろうが。


「模倣者《イミテーター》のお前はこのソロ縛りの影響は受けないみたいだな?」

「……分からない。出た途端に適用されるかもしれない」

「そうかそうか。まぁ、俺はお前と冒険できて楽しいよ。次のダイブでは一気に最下層まで行く。だからもう少しだけ付き合えよ」

「……ああ」

「よぉし、このまま攻略──っ!? 走れ!!」


 俺よりも早く異変に察知した大悟に言われるがまま走り出すと、溶岩の波がどこからともなく現れた。


「おいおい、急に本気出しやがって。攻略されるのにビビってんのか? ダンジョンさんよ!」

「くそっ、上に逃げるしかない……入口は近い! 模倣者《イミテーター》の俺なら一度は出れるはず。先に出るから、それから交代してダンジョンを出ろ!」

「……なるほどな」


 この時は逃げるのに必死で、彼が何を企んでいたのか気付かなかった。

 溶岩が迫る中、なんとか入口まで辿り着いた。


「大悟、すぐに出られる準──」

「だからお父ちゃんって呼べ、よっと」

「ぐっ!?」


 彼は俺を足蹴りして、ダンジョン入口となる大木の幹に開かれた穴へと突き飛ばす。


「なっ!?」

「お、ギリギリ声聞こえるな。じゃー、もうちょっと冒険するわー。これくらいの荒波、ちょうど乗りこなしてみてぇと思ってたんだよ。まぁ、もし俺になんかあったら家族によろしく伝えといてくれ」


 ヨナグニダンジョンの外に叩き出された俺はすぐに戻ろうとするも入れない。

 予想通り、一度出てしまったことでルールが適用されてしまったようだ。


「おい、ふざけるな!! 誰が暴力を振るう父親の言うことを聞くかっ!」

「舞梨をよろしく頼む」


 入口越しに、姿は見えずとも声だけが聞こえてきた。


「あいつは俺の娘だ。いずれダンジョンに行きたがる。だが、止めて欲しい。可愛い娘に危険なことはさせたくないからな。……まぁ、でも、きっと俺に似て諦め悪いだろうからよ、どーしてもの時は俺の代わりに支えてやってほしい。頼むぞ、お(・)兄(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)」


 それから、彼の言葉は聞こえなくなった。

 勝手に任せるな、と罵詈雑言を浴びせたが届かない。

 年相応に号泣したけれども、不思議と彼が死んだとは思わなかった。

 それならば今すぐにダンジョンに入れるわけだし。どこかでしぶとく生きていると、目の前のルールと過去の記憶から信じてはいた。



 しばらくして、探究省の人間がやってきた。

 大悟から存在だけは聞いていたので、抵抗などはせず、東京へと秘密裏に連れていかれた。

 軽い拘束をされてから軍用ヘリに乗せられた俺は、月明かりのみに照らされた与那国島を空から見下ろしていた。


 ……突然として、ヨナグニダンジョンがさらに難易度を上げてきた理由。

 それは攻略されてはもう一緒に冒険できなくなるという俺の恐れが、溶岩となって牙を向けて来たのだろう。

 なんとも感情的で子供らしいものだと、振り返ってはそう思った。


 

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