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ダンジョンストリーマー!! 〜人気急上昇中のJK配信者はチート級に強い──なぜなら裏方の俺が暗躍しているから〜  作者: 杜 一樹
第8章 カルイザワダンジョン

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40本目 人を傷付けるようなことをしたらダメ! だよっ!


 ──どうして何も気付かなかった。

 手を伸ばせばすぐに引き止められたというのに、何故一人で向かわせた。何を俺は見落としていた。

 これは、俺の油断が招いた最悪の結果。


「よし、邪魔、だよね」


 葬倉は貫いた左腕を振り払うと、その方向に吾妻が飛んで行く。

 地面に落ちる前に急ぎ、受け止める。


「……吾妻、おい、しっかりしろ……吾妻!!」


 何度呼びかけても、吾妻は反応しない。

 でも、まだ微かに息はある。助かるかもしれないが、腹に大きな穴を空けられており、その猶予はそう長くない。


「おっと、このままでは顔バレ、だよね」


 葬倉はポケットから赤と黄色の覆面マスクを取り出しては被る。

 プロレスラーのようなその姿に、俺は一つの動画を思い出した。


 ディープウェブで名を轟かせる虐待系ストリーマー、ジャスティスマン。

 他の探索者《シーカー》を襲う様子を配信する、こちらもブラックリストに載る人物だ。

 見せてくれたあの免許証《ライセンス》はソーソー用に偽装したもの。入口では本性を騙って侵入し、カルイザワダンジョンを一人で悠々とここまで来たのだろう。

 すれ違った他の探索者《シーカー》がどうなったかは分からない。


 何よりこいつは、俺と同じ──


「お前、模倣者《イミテーター》か……!」

「その通り。トットリダンジョンの模倣者《イミテーター》、だよね!」


 危険等級S級、内部が砂に埋もれたトットリダンジョン。

 S級の模倣者《イミテーター》ならばかなり危険な力を有しているはず。なのに気付けなかった。

 それもそうか──本当の強者は悪意や殺意を隠し、相手に能力を悟らせない。

 だからこそ容易に懐に近付けるのだ。


「いいのか。人気歌い手が模倣者《イミテーター》だとバラしても」

「構わないさ。何故ならば……みんなここで葬るから、だよね!」


 今すぐにでも吾妻を連れ出したいが、彼に背を向けて逃げるのは難しい。救助配信する余裕もない。

 こいつを早急に倒さないと、彼女は助けられない。


「まぁ、そう敵視しないで欲しい。実は私、同じ模倣者《イミテーター》としてあなたをスカウトしにきただけ、だよね」

「スカウトだと……?」

「我々、模倣者《イミテーター》は世界から存在自体をなきものにされてきた。中には捕縛され、監禁、拷問を受けて帰らぬ者となった仲間たちもいる……」


 ……あぁ、確かにそうだ。

 俺と、それに庭白はS級の免許証《ライセンス》を持(・)た(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)。

 S級ダンジョン以上で緊急依頼《キークエスト》があった際、先発隊として滞りなく行かせるための人柱に過ぎないからだ。

 月に一度は必ず探求省の元に赴き、色々と検査だってさせられる。

 もし、害をなすようなことをすれば……即刻処分だ。


「許せない……許せない、だよね! だから我々は模倣者《イミテーター》の世界を作りだす! そのためにはまずは力や仲間が欲しい! だよね! どうだ、東亮……あなたはSS級の模倣者《イミテーター》だ……! そんな雑魚は放っておいて、手を組もう! だよね!」


「断る。世界なんてどうだっていい。ただ──彼女と共に、色んな世界《ダンジョン》を冒険したい。それができれば十分だ」


「……そうか。それは残念だ。ならば、ここで消しておくべき、だよね」


 葬倉は懐から、ただのマヨネーズを取り出した。

 赤い蓋を外し、直接口内に注入する。


「チュゥゥゥゥゥー……ぷはっ、やっぱり力が漲るのに必要なもの、それはマヨネェェズ、だよねっ!」


 隆々とした筋肉が、さらに肥大化する。

 マヨネーズをドーピング剤として、葬倉が凶暴化しだす。


「あぁぁ……魔与怒厨《マヨネーズ》……これだから、マヨネーズはやめられない! だよね!!」


 巨大な拳で殴りかかる葬倉。

 すぐ後ろには倒れている吾妻が。彼女を抱えて避けても傷を拡げるだけかもしれない。

 俺は葬倉の攻撃をその場で受け止めっ!? ぐっ!?


「うん、今日も良い調子、だよね!」


 ……なんて重さだ。

 あまりの衝撃にその場で耐えることはできず、相当後ろまで飛ばされてしまった。


「──東、くん……」

「っ! 吾妻!?」

「だい、じょうぶ、だよ。わたし……さいきょ、だから、まもってあげる……ね」


 息が混じった消え入りそうな声をあげる吾妻。

 だが、彼女のすぐ側には葬倉が立っていた。


「複数を相手する場合、最初にやるのは弱い方からが相場だよね。数も減らせて、強い奴の動揺も誘えるから、だよね!!」

「やめろっ!!」


 吾妻に向かって、腕を振りかぶる葬倉。

 次が当たれば確実に彼女は死ぬ。

 俺の悲痛な叫びに答えることはなく──葬倉の動きは止まる。


「──宝具《レリクス》:回線遅延《ラグアクション》」


 突如として現れた男性が、停止した葬倉の顔面を蹴り飛ばす。

 さっきの俺と同じように、今度は向こうが吹っ飛んでいった。


「すみません。遅くなりました」

「……佐藤さん、どうして」

「このダンジョンを攻略しました。その帰りですよ。松實が電話が繋がらないからと心配して、探してたんです。もちろん彼女たちもいますよ」


「ぐぅっ、私の自慢の喉が潰れたら、どう責任を取るつもりだよねぇ、ぷぅっ!!」


 砂煙の中、立ち上がる葬倉が詰まった鼻血の塊を飛ばしたところに、影が迫る。


「おっしゃぁ! ぶっぱなすぜぇ!! 宝具《レリクス》:海月《かいげつ》ぅ! ──〈アクアクリア〉!!」

「あー、ねみゅいよー。レリクス〜:海日《マンボウ》〜。──〈パラレルパラレルゥ〜〉」


 宙に浮く傘に飛び乗った生野が透明な弾丸を大量に撃ち込み、松實が双剣で斜めに平行で敵を斬りつける。


「……あれ、本当に彼女たちですか……?」

「すみません、あの二人、太陽が沈むと性格が逆転するんです。またご迷惑をおかけします」


 冷静だった生野が狂気的なハイテンションになり、そのハイテンションだった松實が眠くなってローテンションになるローテーションを毎日繰り返してるという。


「この状態だと生野は全く寝なくなるんですよ。困ったものです……」


 そういえば佐藤の目の下には濃い隈がある。四六時中、苦労しているようだ。

 ただ、あの二人を世話するだけでなく、巨体を蹴り飛ばせる彼もまた、相当な実力者だと窺える。



「おらぁ! どうだてめぇ! もっと撃ち込んでやろうかぁ!?」

「しょーのちゃん、うるさいよぉっ、うぇっ、わぁぁ!?」

「あはははは!! おまえ飛ばされてやんのぉ! ぐへっ!?」


 仰向けに倒れていた葬倉に腕を掴まれた松實は、浮遊する傘に乗って見下ろす生野の元まで投げ飛ばされた。


「ゲホッ、ゲホッ! いってぇな、おめぇ!」

「うぅ、腕折れた気がする……眠いよぉ……」


「……そんな、僕の宝具《レリクス》は対象を減速するもの。あんなに動けるはずが……」

「かーんたんな話、だよぉね。もぉっと速く動けばぁいいのだからぁ。筋肉があれば宝具《レリクス》をも凌駕する、その筋肉を作るにはマヨネーズ……だよね!」


 S級探索者(シーカー)が助けに来てくれたものの、それでも相手は危険等級同等のS級の模倣者《イミテーター》。

 模倣者《おれたち》はダンジョンを体現したような存在だ。S級探索者(シーカー)数人で攻略できるものではない。

 ……だが、絶望してられない。


「佐藤さん。減速対象を吾妻に変えることはできますか」

「ええ。できますが……」

「それで吾妻の傷が開くのを遅くしてほしい」

「分かりました。ただ、すみません。減速対象は一人までです。そうするとあいつは元の速さに戻ってしまいます」

「大丈夫です。……松實さん、生野さん」


「ふぇ?」「んだよ!」と傘の持ち手に引っかかってぶら下がる二人が返事した。


「片方ずつ宝具《レリクス》を貸していただけませんか。そして、できれば吾妻を守りながらこの場を離れて──」

「いいよ〜」「別にいいけど!!」


 俺が言い切る前に、二人はそれぞれ片方の宝具《レリクス》を投げてきたので、それを掴み取る。

 右手に剣を、左手に銃を携え、近接格闘の要領で構えた。


「東亮ぉ……今ならぁ、心替えしたら許してあげよう……だよね!」

「どの立場で言ってんだよ。お前らの掲げる理想や正義なんて知ったことではない。ただ、彼女の邪魔をするなら、俺はお前をぶちのめすだけだ。……来いよ、格下」


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