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ダンジョンストリーマー!! 〜人気急上昇中のJK配信者はチート級に強い──なぜなら裏方の俺が暗躍しているから〜  作者: 杜 一樹
第8章 カルイザワダンジョン

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39本目 マイマイはどんな依頼も引き受けますよ!


「わぁ! マイマイの連絡先ゲット〜♪ い〜でしょ〜?」

「私も交換したけど」


 吾妻は松實と生野と。俺は裏方同士、佐藤と連絡先を交換した。


「じゃあ、この辺で。最近探索者(シーカー)が襲われる事件があるから、マイマイも気をつけるんだよ」

「うん! わかった!」

「いつかぜったいコラボしよーねー! バイバーイ!!」

「バイバーイ!!」


 今回、カルイザワダンジョンにはとある仕(・)事(・)で来たので、初攻略を目指す彼女たちとはすぐに別れた。


「ふっふーん♪ 友達増えて嬉しいな〜。ユキカナちゃんたちと絶対コラボしようね!」

「チャンネル登録者数も多いしな。ファン層も似てるだろうし、いい宣伝効──」

「もう! そういうの関係なくコラボは楽しくするもんだよ!」

「……ちなみに今回のはコラボではないからな。出演するわけじゃないし」

「わかってるよ! コラボじゃなくても誰かと冒険するだけでも楽しいよ! だってだって、ちょ〜人気の歌い手さんのソーソーさんだよ!」


 そう、今回は個人依頼《プライベートクエスト》でカルイザワダンジョンを訪れていた。

 探索者《シーカー》として実力やダンジョンストリーマーとしての名声が上がると、個人や団体から護衛や収集の依頼を頼まれるようになる。

 それを業界用語で〝クエスト〟と呼ぶ。

 依頼には三種類ある。


 企業や団体から、武具《ギア》紹介や魔晶石《アルカネストーン》の回収、ダンジョン研究のお手伝いなどの仕事が任される、案件依頼《オフィシャルクエスト》。


 国や探究省から出される、レイドボスの討伐やSS級ダンジョンの攻略など、早期に解決しなければならない重要性の高い仕事、緊急依頼《キークエスト》。


 そして、今回のような個人や少人数からDMで仕事を引き受ける個人依頼《プライベートクエスト》。


 この個人依頼は、閉鎖的な場で契約を結ぶため時折問題が生じることもあるが、ちゃんと人気歌い手の公式アカウントから連絡を頂いたし、おそらく大丈夫だろう。


「それにしてもダンジョンの中で待ち合わせなんて大丈夫かなー。入口から護衛したのにね!」

「顔出ししてないから、あまり人目に付きたくないんだろう。吾妻が騒いで周りにバラすだろうから懸命な判断だ」

「おぉー……って、そんなことしないよ!? でも、会うの楽しみだな〜わたし結構ソーソーの曲聴いてたりするんだよ〜。どんな人なのかな〜。ちょーイケメンだったりして!」



   **



「はじめまして。ソーソーの名義で活動しています葬倉聡明《そうくら そうめい》、だよね!」

「ゴ、ゴリゴリのハゲマッチョだぁ……!!」


 初対面の相手に失礼過ぎることを言ったので、吾妻の頭に軽くチョップする。

 ただ、彼女の発言に間違いはない。

 鉄骨みたいな腕、服がはち切れかけの胸板、根を張る大木のような足腰、そして光り輝く頭……筋肉がこれでもかと隆起し、主張が激しい。

 だが、笑顔は爽やか極まりない。清潔感には溢れた人物だ。


「歌うためには筋肉や肺活量が必要、だよね」

「そっかー! 歌い手ってみんなそういうもんかー!」


 事実そうではあるが、全員こうではないだろう。


「では、早速で申し訳ないのですが、目的地まで護衛お願い、だよね」

「おっけー! まっかせて〜!」


 吾妻が先頭を歩く。

 さっそく向かう方面が違うことを伝えると、ちょっとだけ頬を膨らませて戻ってきて、そのまま逆方向へと行った。


「それにしても、よくここまで一人で来られましたね。てっきり他に誰かいるのかと」


 B級ダンジョンではあるので、当然同級の免許証《ライセンス》所持者の同行が必要になってくる。


「あぁ、実は私、B級探索者(シーカー)、だよね。こちらをどうぞ」


 先程から独特な話し方をする葬倉が見せてくれたB級の免許証《ライセンス》。

 まぁ、探索者《シーカー》はみんな顔出し配信しなきゃならないわけではないからな。

 ちなみに探究省の統計ではダンジョンストリーマーの割合は探索者《シーカー》全体の4割だという。ダンジョンを探索して、魔晶石《アルカネストーン》を回収して生計を立てている人だってそれなりにいる。ほとんどは副業感覚だが。


「私でも攻略できる難易度ですが、やはり一人だと不安、だよね。歌う時は無防備、だよね」


 筋肉がピクピクと怯えている気がする。

 そのご自慢の体を駆使すれば何とかなりそうな気がするが。


「とりあえず目的地に着いたら、そこで歌う、だよね!」と語尾が伝染した吾妻が、数メートル先のところで振り返った。


「ええ。いつもはスタジオで〝歌ってみた。〟を投稿するのですが、たまにオリジナル曲を即興で作って歌うこともあります。そのためのインスピレーションを受け取りたく、時々こうして神秘的な場所に来ては歌うわけ、だよね」


 カルイザワダンジョンは緑が広がり、水質の良い川や滝が流れる自然豊かな場所。

 どこに行こうとも十分綺麗だが、ダンジョン奥地、危険な魔物《モンスター》が棲息する辺りに噂の名所が存在するという。



「──マイマイパーンチ!」


 ハコネダンジョン以来の小石ショットガンを繰り出して、俺は襲いかかる魔物《モンスター》を追い払う。


「マイマイさん流石、だよね」

「ふふーん、でしょー!」


 相変わらず調子に乗る吾妻。

 葬倉にもバレてはないようだ。


 ──そして、探索を始めて数時間。

 外の時間ではそろそろ夜になる頃、目的地にようやく辿り着いた。

 夏休みとなったし、今回は初めてダンジョン内での宿泊を試みようとは思っていたが、依頼だけは果たして無事に葬倉を指定のポイントまで返すとこまでは終えていたい。


「あぁ、ありました。ここ、だよね!」

「おぉ、キレイ〜!」


 頭上には色とりどりの傘らしきものが浮遊していた。

 上から差す光が傘の布を透過し、地面にできた影もカラフルに彩られている。


「おぉ、さっそくインスピレーションが、湧いてきた! だよね!!」


 葬倉は収録マイクをセッティングし、ボイトレをしたのちに歌い出した。



『──マヨネェェズ!! ……どうして、マヨネーズは美味しいのぉ! それは、自然の恵みに愛された究極の素材だけを使用した究極の食べ物だから〜♪ マヨネーズマヨネーズマヨネーズ♪ マヨマヨマヨマヨマヨマヨマヨマヨ、マヨネーズ!!』


 なんだこれ。

 事前に彼について調べてはいたが、カバー楽曲はまともに上手いのに、オリジナル楽曲は全てマヨネーズへの愛をオペラのように歌うものばかりであった。

 歌唱力は抜群のはずなのに耳がこってりとしてきた……。

 何でこれが流行っているのかはよく分からないが、ブームとはそういうものか。



「おぉ! うまいねー!」

「ええ、マヨネーズは旨いから、だよね」


 会話が噛み合っていない。

 とにかく目的は達成されたのならば、これ以上遅くなる前にさっさと退散しよう。


「とても気持ちの良い場所、だよね。マイマイさんたちにはお礼を言わないと、だよね。どうもありがとう」

「えへへー、どういたしまして〜」

「じゃあ、これからもう一つ撮(・)影(・)したいと思うから。マイマイさん、こっちに来て欲しい、だよね」

「ん? なになに〜?」


 葬倉が手招きして、俺の横にいた吾妻が彼にひょいひょいと近寄った──その時だった。

 

 ……彼女が、動かなくなった。


 腹部を拳で貫かれて、鮮血を垂れ流し、腕はだらんと、そのまま糸切れた人形のように──彼女はただ立ち尽くしていた。


「……っ!? 吾妻!?」


 左手を彼女の色で染め上げた葬倉は、あいも変わらず爽快な笑顔で宣言した。


「ここから先は、私の裏垢撮影を、始める……だよね!!」


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