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ダンジョンストリーマー!! 〜人気急上昇中のJK配信者はチート級に強い──なぜなら裏方の俺が暗躍しているから〜  作者: 杜 一樹
第5章 シンジュクダンジョン

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25本目 【救助配信】ダンジョンの奥底に落ちました。誰か助けてください!


「──リリ……リリナ!」


「うぅ……、え、エリナ……大丈夫……?」

「平気よ……よかったわ、アンタはいつも通りで」


 一体どれだけ落ちたか分からない。

 ただ落下中、野田が猫獣人《ウルタール》に変身し、側にいた庭白を抱えて最下層に着地した。

 これも猫の力、だが……


「……っ、エリナ、足が……!?」

「ちょっとしくっただけよ。気にしないで」


 建物を支えるはずの鉄筋が折れて、野田の左脚を深く刺している。

 出血は止まらない。このままでは命が危ない。


「す、すぐに治療を……!」

「無理よ。治療キットはどっか行った。けど、そこにパソコンとカメラはあるから」

「分かった、待ってて……! ……大丈夫、どっちも無事」

「そりゃ、いいの使ってるからね。壊れてたらクーリングオフよ」

「すぐに救助配信を行うね」


 救助配信とはダンジョン探索中に何か起きた際、視聴者に助けを求める配信である。

 もちろん同時に救助隊も要請するが、救助配信だと偶然近くにいる別の探索者《シーカー》に連絡が行って早く助けてもらえたり、スパチャで稼ぎやすかったり──この界隈ならではの方法である。


「あっ! えりにゃんのバディさん無事だったんだね!」

「出られそうなとこは?」

「ない!!」


「あっそ……」と野田は溜息を吐く。


「吾妻さん、はお怪我はないですか?」

「うん! 手首捻ったくらいかなー」


 吾妻はちょっと曲がりにくそうな右手首を見せて、ニパッと笑う。


「ははっ、さすがレイドボスを舐めプしただけあるわ……」

「えっへへ〜、いやー、それほどでも〜」

「通信良好、良かった……。配信……始めるよ」


 庭白はカメラを回す。

 上層の天井と同じ、光る鉱石が周りにあるお陰で、顔が見える程度に明るいのは助かった。


『ちょっと今緊急で回してるんですけど。巨大な魔物《モンスター》に襲われて、シンジュクダンジョンのヤミトチョウから穴に落ちてしまいました。誰か助け、いっ!』

『えりにゃん!? だいじょぶ!?』

『大丈夫よ……ご覧の通り、アタシは脚を怪我して動けません。出口も分かりません。観てくれるみんにゃ、ぜひとも拡散よろしくお願いします』


【救助隊は呼んだ?】


『はい、バディがすぐに連絡してくれたので現在は救助待ちです。ですが、来てくれるかは分かりません』


 探索者《シーカー》が遭難した際に助けてくれる救助隊だが、助けられる確率は全体の2割、そもそも救助要請を受けて現場に来られるのですら半数もいない。

 ダンジョン内で遭難するということは、それだけ難易度の高い場所であることが多い。生半可な実力では助けられない。


 探索は自己責任。

 これが鉄則である。


【自力で帰れない自分たちが悪いんじゃん】


『もちろん、それは自覚してます』

『せめて出口さえあれば出られるの! 誰か教えてー!』


 野田たちを心配するコメントは多く流れてくる。

 だが、彼女の目に止まるのは心ない言葉ばかりだった。


【知らん、んなとこ。誰か行ってあげてー】【見返り何?】【マイマイだけでも助けなきゃw】【救助隊は無能だし、生還すんのは無理だろなー】【これは乙】【救助隊は民間の方が助かる確率高いよ。値段も高いけど】【そろそろ配信切れよ。デス配信だけはすんなw】【脱いだら考えてやらんこともない】【すまん、そもそも君たち知らないで観にきたわw】【大草原不可避wwww】


【【悲報】人気(?)ダンジョンストリーマー、実力不足で死去】



『うむぅ〜、空を飛べたらいいんだけどなー。あ! もしかしたらレリクスがこの辺にあるかも!』


『……ぅるさい』


『えりにゃん……?』と吾妻が引き続き声を掛けるも、彼女には届かない。



【お、なんだ?】

【これはヤバい気がするぞww】


『自己責任、自業自得、自己顕示欲、自己中心的、自意識過剰……おまえら無責任に言葉を好き勝手投げてるけどさ、おまえらが思ってるよりも届くんだよ……』


【キャラ崩壊】

【怒った顔もかわいいねーww】


『ずっとずっとアタシの心を抉り続ける。忘れたくても忘れられない。アタシはずっと覚えている。顔のないおまえらの嘲笑う声がいつまでも聴こえる……』


【これは炎上確定】【あー、そういうキャラ変ね、おけ】【人前に出るならそれくらいの覚悟はないと】


『うるさい……うるさいうるさいうるさい!!』

『え、えりにゃん!?』

『うるさい! アンタも何でずっとヘラヘラしてられるの。意味分かんない。アンタに、アタシは嫉妬してばかり……もうイヤ……大嫌いっ!』


 荒れるコメント欄。

 吾妻への同情の声が増える中、野田を庇う声はチャンネル登録者数と共に減っていく。


 撮影を中断するべきだと、庭白は分かっている。

 ただ、こうでもしないと注目を集められず救助が来ない。

 それに彼女が抱えているものは全て知っていた。

 だから、もし吐いたことで気持ちが少し楽になれるならばと淡い期待を込めて……後戻りはもうできない。

 庭白は涙目になりながら撮影を続行する。



『えりにゃん……』

『……何よ。ガッカリした? アンタが好きだって言ってたえりにゃんは、本当はこんな性格なの。幻滅したでしょ』

『んー、確かにビックリしたけども、でもえりにゃんの知らない一面が見れて嬉しいよ!』

『はっ……これを利用しての聖人アピールね』

『えっとえっと……よくわかんないけど、えりにゃんに嫌われちゃったなら好きになってもらうようにがんばるっ! 誰かの気持ちなんて関係ないもんね。だって、わたしはえりにゃんのことが好きだからさ!!』


 裏表のない吾妻の全力笑顔。心を蝕む呪いが浄化されるようだ。そして自分の惨めさがより一層際立った。

 ただ、少しだけ冷静を取り戻した野田は、目をまだ合わせられないけれど謝罪の言葉を述べる。


『マイマイ……ちょっと言い過ぎた、ごめん』

『だいじょぶ! 一緒に出ぐっ──』


 突然、野田の目の前にいたはずの吾妻が消えた。


『っ、マイマイ!?』


 ……違う。

 先程、上で襲ってきた巨大なムカデがここまで降りてきて、尾で吾妻を吹っ飛ばしたのだ。


『ム、ムカデ!? アタシ、ムカデだけはムリで……!』

『……こっち!』


 裏方であるからと黙ってられない。

 庭白はカメラ前に飛び出し、野田を背負って逃げる。

 再び突進してきた魔物《モンスター》にカメラは三脚ごと遠くまで飛ばされる。

 偶然にも全体を映す構図になるようカメラは瓦礫の上に倒れて落ちるが、小さく映る二人と比べて、ムカデの魔物《モンスター》はいまだ全体像が伺えない。それに声も拾われない。

 コメント欄もさすがに【ヤバい】と、慌てだす。



「──いっ!?」

「エリナ!」


 左脚の怪我は走る庭白の振動に耐えきれず、腕に力が入らなくなった野田は後ろへと崩れ落ちてしまう。


「ごめんエリナ、ごめん……!!」

「なんでアンタが謝るのよ……。ダンジョンストリーマーになった以上、これくらい覚悟してるっての……。はぁ、最期は訃報のネットニュース止まりか……」


「──そうはさせない!」

「ま、マイマイ!? 無事だったの!?」

「うん! 最強のシーカーはこれくらい効かないよ!」


 しかし、全身砂埃に塗れて擦り傷だらけ、切れた口からは血を流している。

 遠目になるが、コメント欄もマイマイが生きてたことに歓喜する。


「マイマイ、おねがい。アタシが引き付けてる間に、リリナを連れて逃げて」

「ダメ、エリナも一緒に……!」

「心配しなくてもだいじょぶ! わたしが二人をぜったい守るから。だって、わたしはマイマイだからね!!」


 獲物に狙いを定めた魔物《モンスター》は口を開け、うねうねと体をくねらせたのちに、食い尽くそうと突進してきた……!






【チャンネル登録しました。マイマイ頑張って】



「んんっ!? ……ってあれ!?」


 チャンネル登録者数10万人を超えたNewTuberにはあるものが贈られる。


 ──いつの間にか左手に持っていた銀色の盾が、魔物《モンスター》の突進を弾き逸らしたのだ。


「おぉ、これは銀の盾! よぉし、これでモンスター倒しちゃうもんね!! まいります!!」

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