21本目 【緊急生配信】うそでしょ、暴露あるんですか……!?
「コラボ引き受けてくれてありがと。えりにゃんこと、野田エリナです。あ、ダンジョンの外で宝具使ったことは誰にも言わにゃいでよね」
野田の宝具:吾輩は猫なのだ。
コラボするからと事前に勉強と称して、彼女の動画を全て視聴して知った。
猫耳カチューシャ型の、一見すればただのコスプレ用品でしかないが、これを頭に装着すれば猫になれる力を持った宝具。
彼女の言うように、緊急時以外、街中での使用は法に抵触しているが、特に危険な能力ではないので今は見逃す。正義などを振りかざす道理など備えていないからな。
「わたしはマイマイチャンネルの吾妻舞梨です! えりにゃんのファンでずっと応援してました!」
「──へー、見てくれてたんだー。どもー、ありがとー。うれしいよ、アタシもマイマイのこと見てるよー」
「えぇ! ほんとですかぁ!?」
嘘だろう。
NewTuber同士の社交辞令みたいなものだ。
それに、明らかなトーンダウン。逸らした目線。引きつった笑顔──噂通りの人物かもしれない。
野田は初期の頃は明るく元気な……それこそ吾妻と同じような美少女ダンジョンストリーマーとして、投稿初期から人気だった。
……が、過激なファンやストーカー、アンチが付き出して、いつしか性格に歪みが生じてしまう。ポロッと吐いてしまった毒によって、一層彼らを過熱化させてしまった過去がある。
それは現在進行形でも、引きずっている──と、まとめサイトで拝見した。
だからこそ彼女は、吾妻の有り得る未来なのかもしれない。
気は進まないが、吾妻の成長のためにもここは利用させてもらう。
「今日はうちの吾妻を呼んでいただきありがとうございます。私はあず──」
「あ、よろしくでーす」
俺への挨拶は適当だった。
いや、この態度こそが本来の彼女か。
野田は俺を無視して、さっそく吾妻とオープニング撮影の打ち合わせを行う。裏方も含めての会議が良いと思うんだがな。
「……すみません」
「え? あぁ、いえ……」
その間、いつの間にか隣に来ていた野田のマネージャーらしき人が謝罪しに来てくれた。
彼女も野田と同様に大学生くらいの年齢で若い。線が細くて、目を離した隙に消えてしまいそうな儚さがある。
「庭白……リリナと申します。カメラマンと、チャンネルの編集……あと、エリナのマネージャーをしています」
「私と全く同じですね。東亮と言います」
「はぁ、あづま……。もしかしてマイマイさんとは……」
「おーい! 撮影はじめるよー!」
吾妻の呼び掛けで、俺たちの会話は打ち止められた。
今回はえりにゃんチャンネル側が全て撮影する。
俺はただ後ろで見守ってるだけだ。護衛には徹底しやすいが、構図は全て向こうが決めるので、映り込まないように行動するのは難しいか。
『──みにゃさんこにゃにゃちは。えりにゃんチャンネル〜えりにゃんです! さて、今回の生配信攻略では、ハコネを初攻略した人気急上昇中のあの子が来てくれました!! どぞ〜!』
『こんマイリー! マイマイチャンネルのマイマイです!』
【こんマイリー】といくつかコメント欄が流れていく。
事前にSNSでコラボ予告していたので、多くのマイマイファンも観に来てくれた。
だが、【こにゃにゃちは】のコメントが圧倒し、コメント欄を塗り潰す。
同接は既に6000人ほど。吾妻にとっては初めて見る数字。
心配だ……俺もスマホで配信を観つつ、二方向から様子を見守るしかなかった。
『──マイマイといえば、レイドボス倒したんだもんにゃー、そのはにゃしを聞いた時は大規模なパーティーだと思ったけど、バディさんって一人だけにゃんだね〜』
『そうなんですよ〜、もうわたしが守ってあげるの大変で!』
『へー……もうマイマイのバディさん、しっかりしてくださいよ〜、男、なんだからさ。女の子に守られてばかりじゃ、顔が立たにゃいでしょ〜』
彼女は、約束を破った。
今日までのやり取りにおいて、裏方である俺の素性は出さないことを口約束になるが言ったはず。
『おっと、これは秘密だったかにゃ〜?』
だが、忘れているのか……いや、あれはわざとだ。
アーモンド型の瞳でカメラ裏にいる俺のことをニヤニヤと見ている。
くそっ、こんなことなら契約書を書かせればよかった……!
【……え、マイマイのカメラマンって男……?】【ガチ恋勢死亡のお知らせ】【ふんふん、そうなんだー……え?】【マイマイそれは裏切りだわ】【はいwwオワターww】
急加速するコメントの嵐。
視聴者が見る中で、こんなにも早い段階で吾妻のことを貶めるとは。生配信だから誤魔化しも効かない。俺も表立って行動できない。
マイマイチャンネルに突如として、困難の嵐がやってきてしまった。




