余章 その後
ーその後の世界ー
その後、世界中のソナリスは、全て人間に戻り、少しずつ世界の形を取り戻していく為の復興が主軸となった。
復興に必要な知識は、全て地下施設の住民が知っていた為、セクターアーク世界連合を
設立し、世界の復興と支援を目的に躍進していく事となる。
ー視覚酔いー
世界が取り戻された事によっていくつかの課題があった。
今まで目が無く、超音波で視覚を得ていたソナリスだった人々が突然眼球を介した視覚を得た事によって
問題が発生していた。
視覚に慣れる人間が約二割、視覚酔いに悩まされる者が約八割とその比率は明らかに適応限界を示していた。
視覚酔い対策、視覚酔い手術、視覚酔いグッズなど、視覚のケアグッズが数多く発売されるも視覚が異端だと唱える者まで現れ眼球を摘出し、超音波を脳に直接投影する技術まで現れた。
セクターアーク世界連合は、この "脳に直接投影する技術" を禁止するも、秘密裏に開発され闇市で売買されていく事となる。
その事態を助長していた企業がいた。
表には中々出て来なかったが裏社会ではシェルフドッグと呼ばれている。
ーソナリスと人間、出生の違いー
世界がテスカトリポカによって変異させられていた頃、世界にはソナリスと人間の2種族がいた。
当時世界の九割がソナリスだと云われてきたが、そもそもの出生に違いがあった。
当時の世界はテスカトリポカが呪文を唱える事によって世界中を禍々しい姿へと変えていた。
世界中に呪いの魔素を振りまいていたのだ。
その魔素が世界中の上空に蔓延っていた黒と橙の空だ。
あの空は全て魔素で構成されており、蛾の鱗粉のように魔素が振りまかれていた。
呪いの魔素を浴びる事で世界は変異していたのである。
その呪いの一貫で魔素を吸った女性は子宮に呪いを受ける事になった。
子を宿した時、赤子は子宮の中ではまだ人間の姿であったが、子宮から娩出される時に生きた胎児がトリガーとなり、子宮から出た時点でソナリスへと変異した。
一方、人間の姿で生まれた者たちには1つの共通点があった。
産まれる際に命の灯火を失っている事。
たったこの条件でトリガーを回避して、人として誕生する事が当時のセクターアークの研究で判明している。
ーエヴァンと沙羅ー
テスカトリポカが消滅した直後、エヴァンは全速力で地下施設に戻る。
地下施設の天井に空いている穴から飛び込み、飛び降りたそこには愛しの沙羅が横たわっていた。
以前、沙羅の遺体が横たわっていた場所には、代わりに禍津花が生えていたが、世界が正常化した今、禍津花が消え、裏世界に移動していた沙羅が戻ってきた。
「沙羅⋯⋯おかえりなさい⋯⋯」
エヴァンは暫く沙羅を抱きしめ泣いていた。
その後、エヴァンは沙羅の遺体を抱えて、アガルタの屋敷に赴く。
沙羅の遺体をどうにかできないか相談すると、斑鳩鵺から "自身の遺体もアガルタに保管してもらっている" と助言を得て、沙羅の遺体も同じように保管してもらった。
その後、伽耶が体に戻れなくなってしまった事を伽耶本人から聞いた事で、エヴァンはまた泣いていた。
ーエイティのその後ー
ナシアのクローン技術によってエイティは度々復活をした。
ただし、エイティのクローン技術は唯一無二の特殊な手術が施された。
神さまの御力を転用して、蘇生技術に使用し、老衰で亡くなったエィティを復活させたのだ。
エイティという人物は人という枠の中にとどまったまま、歴史に何度もその姿を現す事になる。
そして、神さま復活の旅においてナシアをサポートし常に友で有り続けた。
しかし、神さまの呪いの力をエネルギーに変えていたとはいえ、数百年経った時、生身の体には限界がきていた。
その為、エイティは一大決心をする。
クローンの体を手に入れようと、計画したのだ。
ナシアは、賛否の意思を示した。
その理由は、クローン体になることで記憶を失う可能性が高いためだ。
脳を移植するものの、術後の拒絶反応や合併症、高熱などによって死に至る者も少なくない。
たとえその困難な道のりを乗り越えたとしても、脳に細菌感染などが起これば記憶障害が残る可能性もある。
決して、成功例の少ない手術というわけではない。
手術の精度も、以前と比べて大きく向上している。
それでも、失敗する可能性が残されている以上、軽々しく受けることを勧める気にはなれなかった。
それが、ナシアの想いだった。
エイティはシェルフドッグの研究施設で秘密裏にクローン体への脳移植手術を受ける。
エイティがクローンへの脳移植手術を受けた事をナシアが知ったのは、手術の翌日だった。
ナシアは激怒した。
しかし、術後の休眠状態であるエイティに怒るわけにもいかない。
ナシアはエイティのリハビリが終わるまで、半年待った。
半年後、エイティは元気な体でナシアの前に現れ、ナシアは怒る気にはなれず、抱きしめた。
元気になったエイティは、その後、邪神の復活を目の当たりにする。
目隠しの日の出来事だ。
この日、全世界が変貌してしまい、ソナリスという新人類も誕生した。
エイティは驚いた。
クローン体であるにも関わらず、体がソナリスに変異したのだ。
このような仮初めの体でも変異するという事は、うまく順応している証拠なのだろう。
エイティは認識阻害を使ってナシアと共に逃亡すると、新宿の女子大学の地下に辿り着く。
そこでナシアと話し合い、邪神の本名について時間をかけて意見交換した。
その間、女子大学の地下を少しずつ改良して、研究しやすい環境を構築していく。
ある日、エイティはアガルタの存在をナシアに話すと非常に興味をもったようだ。
普通であれば突拍子もない話だがこんな世界だ。
アガルタという場所があっても不思議ではないだろう、と納得していた。
逃亡生活が始まって暫く経った時、ナシアから依頼が来る。
神さまの名を明かす為の暗号を、絶対に神さまに見つからない場所へ隠してほしい。
エイティは真っ先にアガルタを思い出した。
エイティは旅支度をして、ナシアに別れを告げると、宛ての見えない旅を始める。
アガルタを探し彷徨うエイティは、道中で命を落とす事となるが、命を落とした事で魂となったエイティは、魂のまま強い精神で歩き続け、魂が飛散する事無く、ついにアガルタに辿り着く。
無事、屋敷に辿り着いたエイティは、鵺や伽耶が住んでいる時もアガルタの屋敷で密かに住み続けていた。
その後、エイティはナシアへ伝書鳩を送るも、自身がナシアの元へ戻る事はおそらく困難であると感じたエイティは、自身の死を知らせる事は無かった。
この時、実体のある手紙であったり、伝書鳩であったり、ナシアへの連絡は1人では成し得なかっただろう。
エイティは屋敷の主に感謝した。
そして、ナシアは何度かエイティ用クローンを作成し、その肉体にエイティの魂が宿る日を夢見ていたが、その夢が叶う事はなかった。
エイティは今日も屋敷でひっそりと暮らす。
ー伽耶と鵺と14人の戦乙女ー
世界が正しい形へと変わった後、伽耶たちは暫くの間ごく普通の生活を満喫した。
書庫の修理や食事、読書、ビリヤードやボードゲーム、テレビゲームやアガルタさんちの探検。
皆で今も幸せに暮らしている。
14人の少女が呪いの魔女となり、世界を崩壊へと導くのは、また別のお話。
これで最後となります。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
※誤字脱字など多いようでしたらすみません。
またどこかでお会いしましょう。




