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電子天女に嫌われたのは、Fランクの闇使い  作者: しるべ雅キ
濫觴の異能者達

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第114話【好みを知られていたのは、元Fランクの風使い】

UFO級のコアを探し続ける翔星(しょうせい)達は、

新種のヒト型硼岩棄晶(フォトンクレイ)に遭遇した。

「周囲の光を屈折させた、これで(オレ)達の姿は奴等に見えないはずだ」

「すごいな。目を凝らしても、どこにいるのか分からないよ」

「これも若気の至りだ、向こうの闇を解除するぞ」

 前方に手をかざした翔星(しょうせい)は、眼前で目を細める斑辺恵(はんべえ)に見えるはずの無い曖昧な笑みを返してから手を払う。


「よし、行こうぜ……ん? あれは残像とかじゃないよな?」

「どう見てもゲノム級が2体に増えてるね……」

 翔星(しょうせい)と共に姿を消していたピンゾロが晴れた闇の奥に目を向け、斑辺恵(はんべえ)も互いに背中を合わせて周囲を見回すゲノム級硼岩棄晶(フォトンクレイ)を視界に捉えて身構えた。


「行動観測開始……通常の速度で移動、2体のゲノム級は別個体と認識」

「作戦変更だ、(おれ)ちゃんも残るぜ。いいだろ? コチョウ先生」

「うむ、任せるのじゃ」

 同じく姿を消したサイカがバイザーを通してゲノム級を分析し、決意と共に頭を掻いたピンゾロにコチョウは即座に快諾する。


「あれくらいなら自分と焔巳(エンミ)さんで……」

「まあ、そう言うなよ。振動感知したら、この先に動くものは無いんだ」

「なら、決まりだ。ここは2人に……いや、4人に任せる」

 懐から竹とんぼの羽を取り出した斑辺恵(はんべえ)の肩に手を乗せたピンゾロが足を小さく足踏みして見せ、仲間の意を汲んだ翔星(しょうせい)は壁に沿って歩き出した。



「正面突破だ! パームブラスト!」

柩連焔刃(ぐれんえんじん)起動、ニードルモード射出」

 姿を見せたままゲノム級の正面に立った斑辺恵(はんべえ)が両手のひらから空気弾を交互に放ち、軸をずらして隣に立った焔巳(エンミ)も円盤状の武器から火花の針を撃ち出す。


『『レイガン、ダブルファイア!』』

「おっと……さあ、もっと撃ってきなよ」

 右手に生えた巨大剃刀(かみそり)を振って攻撃を弾いた2体のゲノム級が左手を前に向けて電撃を放ち、爆風で後ろに跳んだ斑辺恵(はんべえ)は挑発するように余裕の表情を浮かべる。


「もらったー!」

『ハッ!』

 翔星(しょうせい)が屈折させた光に隠れて後ろへと回り込んでいたピンゾロが隙を見て手近な1体に踏み込むが、ゲノム級は即座に振り向いて巨大剃刀(かみそり)を振った。


「ちっ、ミスったか!」

「ならば、(オレ)も……!?」

 力強く床を蹴って後方へと跳んだピンゾロが脚のバネを溜め直し、腰の(レイ)ガンを抜いて姿を現した翔星(しょうせい)の動きが止まる。


瑞雲(ずいうん)起動」

「うおおぃ!?」

「コアの移動予測ポイントまで移動する」

 後ろから翔星(しょうせい)の襟首を掴んだサイカが脚の飛行機能を起動し、慌てる声を意にも介さず離脱を始める。


「サンキュー、サイカちゃん。ここは任せて先に行ってくれ」

「了解、コアの移動予想ポイントに向けて全速で離脱する」

「仕方ない、あとは頼んだー!」

 大きく手を振って見送るピンゾロに敬礼を返したサイカが速度を上げ、(レイ)ガンを咄嗟に戻した翔星(しょうせい)は消えゆく声とともに遠ざかった。



『『レイガン、ダブルファイア!』』

「おっと!……翔星(しょうせい)に比べれば、遥かに狙いが甘いね」

 背中合わせに立ったゲノム級が電撃を放ち、斑辺恵(はんべえ)は余裕の表情を浮かべながら難無く(かわ)す。


「初手で片方を仕留められれば、もっと楽だったんだけどな~」

「今さら悔やんでもしょうがないよ。1人1体ずつ、行けるね?」

 同じく電撃を(かわ)しながら合流したピンゾロが苦い表情を浮かべ、静かに首を横に振った斑辺恵(はんべえ)は2体のゲノム級を交互に指差した。


「2人ですよ、斑辺恵(はんべえ)様」

「そうだったね、自分と焔巳(エンミ)さんはこっちを引き受けるよ」

「なら、(おれ)ちゃんとコチョウ先生は向こう側ね」

 圧を込めた微笑みを浮かべた焔巳(エンミ)に愛想笑いを返した斑辺恵(はんべえ)が手前のゲノム級に人差し指を向け、奥のゲノム級を指差したピンゾロは脚のバネを溜める。


「任せたよ! パームブラスト!」

「パチモンさん、こっちだぜ! 真空金剛散弾しんくうこんごうさんだん!」

 隙を突いた斑辺恵(はんべえ)が手前のゲノム級に空気弾を放ち、呼吸を合わせて跳んだピンゾロは頭上を越えながら手のひらで圧縮した空気を散弾のように投げ付ける。


『レイガン、ダブルファイア!』

「上手く釣れた! コチョウ先生!」

「うむ、サイクロンマフラー起動! こっちは任せるのじゃー!」

 巨大剃刀(かみそり)で空気の散弾を弾いたゲノム級が電撃で反撃し、(かわ)したピンゾロの肩を掴んで(はね)状の機器を広げたコチョウはゲノム級を引き付けて飛び去った。



「ピンゾロ達は上手く引き離してくれたね」

「はい。(ワタクシ)達は、こちらのゲノム級を駆除しましょう」

 離脱するゲノム級を見送った斑辺恵(はんべえ)が手のひらを下に向けて身構え、焔巳(エンミ)も残る1体に狙いを定めて円盤状の武器を構える。


「ああ、徹底的に畳み込む! パームブラスト!」

緋翼(ひよく)展開。柩連焔刃(ぐれんえんじん)、ニードルモード!」

『レイガン、ダブルファイア!』

 爆風の反動で踏み込んだ斑辺恵(はんべえ)が空気弾を放つと同時に翼状の機器を広げて回り込んだ焔巳(エンミ)が火花を針を飛ばし、ゲノム級は即座に振り向いて電撃を放った。


「お互い、遠距離攻撃のバリエーションは無いみたいだね」

『ハッ!』

「……っと、やっぱりリーチでは負けるか。でも!」

 焔巳(エンミ)に気を取られた隙に竹とんぼの羽を手にして背後へと回り込んだ斑辺恵(はんべえ)は、急激に振り向いたゲノム級が薙ぎ払った巨大剃刀(かみそり)(かわ)しながら目配せする。


柩連焔刃(ぐれんえんじん)、カッターモード!」

『!?』

「これで自慢の偽鎌鼬(かまいたち)は使えな……!?」

 目配せに頷いた焔巳(エンミ)が細長い金属板を連ねた鎖につながった円盤を振り、纏った炎刃に切り落とされた巨大剃刀(かみそり)に得意気な顔を浮かべた斑辺恵(はんべえ)は言葉を失った。


斑辺恵(はんべえ)様、これは!」

「今まで見て来た中でも、とんでもない再生速度だ! 一旦距離を取るよ!」

「かしこまりました!」

 瞬く間に元の長さまで戻った巨大剃刀(かみそり)に警戒した焔巳(エンミ)は、合図をしながら後方に下がる斑辺恵(はんべえ)に頷いて翼状の機器を広げる。


『レイガン、ダブルファイア!』

逆手鎌鼬(さかてかまいたち)! やっぱりこっちにも貫通攻撃を仕込んでたね」

 遠ざかる気配に向けてゲノム級が1本に集束させた電撃を放ち、竹とんぼの羽を乗せた手のひらを向けて電撃を弾いた斑辺恵(はんべえ)は余裕の笑みを浮かべる。


柩連焔刃(ぐれんえんじん)、ニードルモード!」

『!?』

「さあ、今のうちに!」

 死角へと回り込んで無数の火花の針を撃ち込んだ焔巳(エンミ)は、ゲノム級が巨大剃刀(かみそり)を振って針を弾き落としている隙に斑辺恵(はんべえ)の手を取って離脱した。



「あまり離れないでくれ、距離を開けすぎて増援を呼ばれたらアウトだ」

「かしこまりました。ですが、どういたしましょう?」

 握った手の先を見上げた斑辺恵(はんべえ)が戻るよう合図し、焔巳(エンミ)はゲノム級と距離を取りながら聞き返す。


「首のコアを斬れば終わりだけど、(レイ)ガンモドキと偽鎌鼬(かまいたち)で簡単に近付けないね」

「あの再生速度から考えて、電撃発射装置の無力化もほぼ一瞬と思われます」

「すぐ再生する遠近両方の貫通攻撃……なかなかの難敵だね」

 空いた手に持つ竹とんぼの羽を手のひらで滑らせていた斑辺恵(はんべえ)は、黒い額当てを通した焔巳(エンミ)の観測報告に苦々しい表情を浮かべた。


「あの……斑辺恵(はんべえ)様、ひとつ提案があるのですが」

「なんだい、焔巳(エンミ)さん?」

 少し間を置いた焔巳(エンミ)が遠慮がちに口を開き、斑辺恵(はんべえ)は気に留める様子も無く聞き返す。


「白い意識からいただいたデータを使おうと思います」

「分かった、タイミングは任せるよ」

 深く息を整えた焔巳(エンミ)が手のひらに白いヒト型の立体映像を浮かべ、斑辺恵(はんべえ)は軽く頷いて微笑む。


「編み出した技が少々特殊でして、駆除は斑辺恵(はんべえ)様にお願いするしか……」

「実に(ぼく)好みの技じゃないか、ぜひお願いするよ」

「かしこまりました!」

 躊躇(ためら)いがちに新たな技の特性を説明した焔巳(エンミ)は、興奮気味に竹とんぼの羽を握り締めた斑辺恵(はんべえ)に満面の笑みを返した。



『レイガン、ダブルファイア!』

逆手鎌鼬(さかてかまいたち)! 1本に集束してるのにセリフを変えないのかよ」

 再度射程内に入った人影に気付いたゲノム級が集束した電撃を放ち、手のひらに乗せた竹とんぼの羽で弾いた斑辺恵(はんべえ)は余裕の表情と共に距離を詰める。


斑辺恵(はんべえ)様、今なら撃てます!」

「よし、任せた!」

 旋回しながら背後へと回り込んでいた焔巳(エンミ)が合図を送り、斑辺恵(はんべえ)は力強く親指を立てて返した。


超輪廻(ちょうりんね)柩連焔刃(ぐれんえんじん)、ニードルモード! 続けてカッターモード!」

『!!……!?』

 手にした円盤に青い炎を灯した焔巳(エンミ)が火花の針を撃ってからつないだ鎖を振り、両腕を切り落とされたゲノム級は再生しない我が手を見ながら声なき声を上げる。


「ここまでだ、もらった!」

『ガッ!?』

 靴底に展開した炎の異能力(トーチ)で宙を蹴りながら踏み込んだ斑辺恵(はんべえ)が竹とんぼの羽を振り、高圧縮した炎にコアを焼き切られたゲノム級は短い断末魔の声を上げた。


「終わったね、焔巳(エンミ)さん。ところでさっきの攻撃は?」

「南方剣士の超再生能力を応用して、硼岩棄晶(フォトンクレイ)の再生能力を暴走させるものです」

 灰燼と化して消滅したゲノム級を確認した斑辺恵(はんべえ)が緊張を解きながら聞き返し、焔巳(エンミ)は手のひらに立体映像を浮かべる。


「それで逆に再生できなくなったように見えたのか」

「これなら数で押すタイプも、進化したタイプも対応出来ると思いまして」

 立体映像を見詰めていた斑辺恵(はんべえ)が何度も頷きながら感心し、焔巳(エンミ)は技を開発した理由を説明しながら微笑む。


「さすがは焔巳(エンミ)さんだ。それじゃ、ピンゾロ達と合流するか」

「かしこまりました」

「おわわぁっ!?」

 手放しで称賛した斑辺恵(はんべえ)は、猛禽類のような鋭い眼光を柔らかな微笑みで隠した焔巳(エンミ)に背中から抱き着かれて声が裏返るほどの悲鳴を上げた。

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