第111話【離れて称賛されたのは、元Fランクの異能者達】
UFO級に乗り込んだ翔星達は、
作戦通り二手に分かれた。
「ここまで格好を付けたからには、少しは踏ん張らないとな」
「ですな、拙僧も気合を入れましょうぞ」
腰からフォールディングスコップを取り出した聡羅が畳んだまま護拳に見立てて構え、頷きを返した蔵は柄を伸ばしたスコップを軽く振る。
「来るわよ!……ちょっと、とんでもない数じゃないの!?」
「でもぉ~、今のところは全部キャンサー級ねぇ~」
帽子の先端に取り付けたレーダーに意識を集中したカーサが大声を上げ、左足を力強く踏み鳴らして熱源探知をしていたマーダは首を傾げる。
「当面は結界で防げる、ここで出来る限りのデータを集めよう」
「心得たでござるよ、ガジェットテイル起動!」
開いた宇宙船のハッチに目を向けた羽士が先端を折り曲げたスコップに氷の弓を張り、力強く頷いた壬奈は銀色の鎧武者姿になって飛び上がった。
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「向こうは何らかのタイミングでマグナム級を出してくるはずだ、今のうちに壁を頼む」
「任せて、アローウォール!」
周囲を確認しながら先頭に立った聡羅の指示を受けた羽士は、バリケードを覆うように上を向いて伸びる氷柱を並べた壁を作り出す。
「マスター! そろそろ来るわよ!」
「よし、カーサ。景気のいいのを頼んだぜ」
カーブして先が見えない壁面を指差したカーサが後ろから声を掛け、聡羅は折り畳んだままのスコップを勢いよく前に振った。
「まかせないさい! モードESD、ライトニングブラスト!」
『『グォォオッ!?』』
魔導書型の機器からページを4枚剥がしたカーサが縦に2回折り畳み、先端から電撃を放ってカーブの奥から続々と姿を現したキャンサー級の群れを薙ぎ払う。
「でぃや~、ホーミングフレア~」
『『グォァーッ!?』』
2丁の巨大な銃を構えたマーダが引き金を引いて誘導火球弾を撃ち出し、電撃を逃れたキャンサー級の一群を焼き尽くす。
「両刃雪崩・飛天撃ち!」
『『グァァアアアッ!?』』
天井近くで旋回していた壬奈が氷の矢を射掛け、砕けて無数の破片となって降り注いだ氷の矢はバリケードに迫るキャンサー級を一斉に貫いて灰にした。
『『グォーンッ!』』
「しまった! これでも抜けて来るの!?」
3人の波状攻撃によって舞い散る灰に紛れた2体のキャンサー級がバリケードに迫り、カーサは魔導書型の機器を構える手に動揺を走らせる。
「ライトニングサーベル!」「来迎トマホーク!」
『グォッ!?』『グァァッ!?』
折り畳んだスコップから雷の刃を飛ばした聡羅に合わせて蔵がスコップの先端に灯した炎の斧を振り、キャンサー級のコアを同時に焼き斬った。
「マスター!」
「近付く奴等はこっちに任せろ!」
狙いを定めあぐねていたカーサが目を輝かせ、聡羅は護拳に見立てたスコップを振って返す。
「はぁ~い。ホーミングフレア、連続発射~」
『『グォガァァアアッ!?』』
入れ替わるように大きく手を振ったマーダが腰だめに引き金を何度も引き、撃ち出した火炎弾は後続のキャンサー級を悉く炎に包んだ。
「アタシも負けてられないわ! ライトニングブレイク!」
『ガォーンッ!』『グルルル……』
深呼吸をして気を取り直したカーサが魔導書型の機器からページを2枚剥がし、屏風のように折り畳んでから広げたページから雷の虎が2体現れる。
『ガォォー!』『ガォーッ!』
「電光石火の爪と牙、思う存分味わいなさい!」
『『グォォオオーッ!?』』『『グォォアーッ!?』』
前方に手を向けたカーサの声に合わせて雷の虎が縦横無尽に跳び回り、火炎弾を逃れて迫りつつあったキャンサー級の大群を灰燼へと帰した。
「まあ、こんなものね……マグナム級よ!」
「そんな~、ずっとサーモスタンプで確認してたのに~」
余裕の笑みと共に新たなペーを手にしたカーサの手が止まり、マーダも足元から伝わる熱源の変化に戸惑いの色を見せる。
「駆除したキャンサー級の灰に紛れて距離を詰めて来てたみたいだね」
「そんな冷静に分析してる場合!? コネクトカバーで防げないのよ!」
ずれた眼鏡を指で戻した羽士が敵の意図を推測し、カーサは先頭で雷の刃を振る聡羅を指差す。
「アローウォールを2枚に重ねれば、火炎弾も防げるはず……」
『グォォオオーンッ!』
「そんな! 早過ぎる!」
落ち着いて床に手を当てようとした羽士だが、予想を上回る速度で接近して来たカニ型硼岩棄晶に動揺して手を止めてしまった。
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「土よ、壁となれ!」
「政之! ブリッジから離れて大丈夫なのか?」
ハッチ奥から響いた声に合わせて氷柱の壁の前に土の壁がせり上がって火炎弾を止め、声の主に気付いて振り向いた聡羅は戸惑いがちに聞き返す。
「もって数分だが、ブリッジにはコピーしたデータを座らせてある」
「それが新しい技なのか?」
身をかがめて近付いた政之がブリッジの様子をLバングルに浮かべ、聡羅は眉を顰めて聞き返す。
「いや、ブリッジクルーだけの裏技みたいなものだ」
「そしてこれがボクの新しい技だ、裏極光剣・サザンクロス!」
静かに首を振った政之の肩に頬を寄せてから飛び立ったツイナは、外套から取り出した柄の長い細身の剣を振って光の十字を描く。
『『グォォアアッ!?』』
「極限まで細めたオーロラブレードの一斉掃射、ボクと政之の愛の結晶さ!」
「いや、小官は何もしてないのだが……」
無数の光刃を浴びたマグナム級の群れが瞬く間に両断され、得意気な表情と共に床へと着地したツイナに肩を抱き寄せられた政之は小さく言葉を濁した。
「野暮言うなよ。輝士械儕は異能者が近くにいるだけで本気を出せるんだからよ」
「おかげでこっちは、いいとこ無しだぜ」
続けてハッチから出て来たテツラが豪快に笑い、祐路は丸めた釣り糸を指で回しながらため息をつく。
「ぼやくなよ、一気に蹴散らすぜ! デトネイターナックル!」
『『グォガゴガッ!?』』
祐路の頭を軽く撫で回したテツラが腰の簗状の機器から取り出した複数の水弾に次々と拳を打ち付け、破裂して放たれた衝撃波がマグナム級の群れを飲み込んだ。
「さすがにまだ、本家のふんわりには及ばないか」
『『グォォオオーッ!』』
「もう後続が来たのか!」
衝撃波の範囲を確認してから軽く首を横に振ったテツラは、奥から近付いて来る殺気に向かって咄嗟に身構える。
「ディープハイド解除、祇封雷舞・繰糸結界!」
『『グォガガガガ……ッ!?』』
バリケードの前に突然姿を見せた夏櫛が手にした避雷針に出現させた雷の扇子を振り、周囲に広げた無数の雷の糸に絡め取られたマグナム級は次々と灰になった。
「白い意識から受け取ったデータがこれ程なんて……」
「Wランクが各輝士械儕と相性のいいデータを選別してくれたからね」
二度と訪れないと思われた沈黙を前に聡羅が舌を巻き、軽く頷いた礼真はLバングルに顔写真の貼られていない経歴書画像を浮かべる。
「大元のデータは翔星達が見付けたって話だぜ」
「ふーん、サイカのマスターもやるじゃないの」
大きく伸びをしたテツラが手のひらに樹海周辺の地図を浮かべて笑い、カーサは密かに頬を緩める。
「すまない時間切れだ、そろそろブリッジに戻らせてもらう」
「いや、助かったぜ。あとはオレ達に任せてくれ」
Lバングルを確認した政之がハッチに親指を向け、手を振り見送った聡羅は再び迫って来る轟音を睨み付けた。
「ここからはあたしの出番ね!」
「某も全力で行くでござるよ」
「わたくしも、続きますね~」
意気揚々と魔導書を開いたカーサに上空から軽く手を振った壬奈が手にした弓の具合を確認し、マーダも2丁の大型銃を肩に担いで足元を踏み固める。
「みんな張り切り過ぎだ、このままだと感情が追い付かないよ」
「羽士の言う通りだ、こういう時こそ落ち着いて行くんだ」
「委細承知、まずは仕切り直しですな」
慌てて輝士械儕を宥めた羽士に聡羅も同意し、静かに合掌をした蔵は大きく息を吸ってスコップを構え直した。




