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勇者でさえ歯車の一部なら  作者: たっきゅん
女神再臨編
41/81

破滅の魔王と雷の神

ソアは白い髪に黒い瞳の男だった。

ルインの記憶にそんな男は存在しない。しかし


ソアがルインに向かって語りながら歩き出す


「覚えていないか?あの世界でお前が殺した赤子を。あの時は神世界から来たばかりでな。余は為す術もないまま殺されたのだが」


前の世界での出来事を思い出したのかルインの表情が怒りに染まる

「っほざけ。赤子と思い油断したのもあるが余の体の半分を吹き飛ばしておいてよく言う」


「ふん。ここにいると言う事は世界ごとお前も死んだのだな。そうとは知らず誤ってこの世界の魔王に宣戦布告をしてしまったぞ」


語らいはここまで


「ならばもう一度殺してやる」


ルインのその言葉が引き金になり、ブローズの体が破裂した。否、中から黒い触手のような物が大量に飛び出した。


「お前が滅びろ『雷の雨(サンダーレイン)』」

ソアの魔法が降り注ぐ

それでも触手は部屋中の人間に迫り寄る


大半は降り注ぐ光を潜り抜ける事は出来なかった


しかし、生き延びた数本の触手が死んだ修道士たちを飲み込んだ。


そして、マリーに向けて伸びた3本の太い触手も2本生き残った。


「させるか!『王の断罪コンヴィクション・オブ・キング』」

ピオニーが一本を切断する


「マリーっ!!」

シェイブが叫びながら駆け寄る


「やあぁぁあっ!!」

あの時は動けなかったが今度は違う

ヘージはロングソードを触手に向かって振り下ろす


カッーーーン


外した。

地面を叩きつけた音が鳴り響く

触手は曲がり、ヘージの心臓を貫いた


「っぐ!?」

そしてそのままマリーの心臓を貫く


「っう!?」

触手は2人を貫いた後、まるで生気や魂を吸い上げるように脈を打ち始める


「『フロートディールウィズ』なのよねっ!」

すかさずヘージのロングソードを利用し、アリアの解錠(鍵破壊)で使った技が触手を切断した。


「ヘージ!マリー!」

シェイブが2人を抱き抱える(だきかかえる)


「お兄ちゃんっ!!」

「ヘージっ!!」

「ヘージ、マリー!!」.etc

各々が大切に思う人の名前を呼びながらソア以外が集まる


ソアだけはルインを睨んでいた。


触手が引いていき人の体を取り戻したルインが立ち上がった


「はははははははっ!!」


高笑いの後に変化が起こる。頭から禍々しい赤黒い二本の角が生え、背中には巨大なコウモリのような漆黒の羽が生えた。


正真正銘、破滅の魔王が降臨した


「まさか、この女の魂に創造神の残滓が残っていたとはな」

さらに変化は起こる。

頭に光り輝く天輪が浮かび上がり、更に白い羽が増える。


ルインは飛翔し、その場にいた者たちを眼下に見下ろし

「天魔王ルイン、そう呼んでくれたまえ」

そう名乗った。


「雷が得意だったな。ならば我の(いかずち)に打たれて死ね」

それは無詠唱だった


直後、ソアに雷が落ちた。

ドーンッ!という音は同時に聞こえた


「神の贋作風情が。余と対等と思うなよ」


雷を纏いしソアがいた。

ソアの瞳の色が黒から赤に変わって真紅の輝きを放ち始めていた。


「まさかっ!」

サクラが何かに気がついたが、それはソアの口から語られた。


「余は神世界の神、父は全能神 オティヌスである。本来の神の力、その身に刻んでやろう」


---

ヘージとマリーは、一時的にでも繋がった事で魂に異変が起きていた。


「懐かしいな。まさかお前なのか?」

ジューダスが話しかける。


そこにいたのはサクラと同じピンク色の髪の女性。まるでサクラを大人にしたような、そんな人だった。


「ええ。とは言ってもこの子に毎年憑依していた時の残っていたのが集まった残留思念のようなモノだし、あの魔王に半分くらい食べられちゃったけどね。ま、張り付いてた魔物を全部食べてくれたからいいんだけど」


「オレも半分喰われたんだけどな。たとえ残留思念のようなモノでも…、それでも。お前に会えて嬉しいよ」


ヘージとマリーの意識は眠っている。この空間には2人きりだ。


「すぐそこにいるんだが、サクラは元気だったぞ」

女性はマリーの中から様子は知っていたが、ジューダスの口からそれを聞いて安心する。


「いい子に育ってくれたみたいね。これもヘージのおかげかしら」


「どうだろうな…」

ジューダスは頭をかきながら答える。


「あの子を守るための(天国)、万が一でもあの子が天国で殺された時、時間軸をズラして転生体を殺して天国に連れ帰る魔王システム。あの子の為を思っての事が逆にあの子を苦しめるなんてね」


女性は悲しそうに俯くがジューダスがそれを抱きしめて止める


「オレたちはあの子を神世界の神どもから守る。たとえ娘がオレたち2人が忘れていようとも…。オレは転生を繰り返し、今のヘージがサクラと出会った。サクラはこの先も守り続ける。そして、必ずお前も救ってみせる」


幾多の転生を繰り返す長い時間が必要だった。


ジューダスはサクラが寂しくないように全ての記憶を消した。


誰も世界にいなければ誰かを失う事もない。

管理者としての仕事を与えた。それが彼女の存在理由だと後付けするために


そして、今のヘージの代でジューダスの力も回復した。ここからなんだ。全てが


「あなた、泣いてるわよ」

女性が今度はジューダスを包み込む


「泣いてねーよ。それにそろそろ行くわ。サクラがヘージを呼んでる」


「はいはい。それじゃまたね。それとジューダスって名前、私は嫌いかな」

2人は離れて、ジューダスは背を向ける


Judas(ジューダス)、それはどの世界・時代でも裏切り者の名だ。


彼は彼女の為に全てを敵に回した男


「またな。ユミ」


2人は別々に光に包まれ消えていった。


---


「「っつ!」」

サクラの魔法でヘージとマリーが同時に意識を取り戻す。

アリアが貫いてから間髪入れずに触手を切断したのが功を奏したのだ。


「よかった…。ほんとうによかった…」

シェイブがマリーを抱きしめていた。


「お兄ちゃん、お帰りっ」

目に涙を溜めたサクラが無理矢理な笑顔で出迎えてくれた。


「ただいま」


ドーンッ!

ヘージの言葉の直後、爆音と共に【破滅の天魔王】と【雷の神】の戦いが始まった。

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