シェイブの新たな世界
「すまねぇ。護衛とか言っていたのに助けてもらっちまった」
シェイブが頭を下げた
しかし、それは間違いだ。少なくとも僕はそう思う
「僕らが無理言って護衛をしてもらっているんだ。頭を上げてください」
「そうだよっ!シェイブがいたから森のクマさん助けられたんだよっ!」
僕らは即座に頭を上げさせようとした。
「しかし…」
煮え切らないシェイブの前にスーッとアリアさんが前に出る
「へージもサクラちゃんもこう言ってるんだから素直に受け取るのが人情ってモノなのよね」
そして、頭を撫で始めた。
「シェイブ、よく聞くのよね。ヴォルスで教会の教えは絶対なのよね。『慈愛は循環し、新たな世界を作るであろう』なのよね」
それは幼少期からセリアかーさんが教えてくれた言葉だった。
「シェイブがついて来てくれたから、今の私達の関係があるのよね。シェイブのそれは、私達を心配してくれた慈愛なのよね。なら、私達の関係はもう新たな世界なのよね」
せう言って、シェイブの頭から手を離し一歩下がる。
「シェイブ、ありがとうなのよねっ!」
その後のアリアさんの笑顔をシェイブは忘れる事は死ぬまでないんじゃないかと思えるほど、ずっとずっと見惚れていた。
そんなシェイブを置いていく形で僕らは歩き出す。
もう大丈夫。シェイブは必ず追いかけてくるから…
顔を上げたシェイブが先行く僕らに
「ありがとう」
と小さく呟いたのだった。
山頂に着いた僕らは休憩しながら昼食を食べた。
山の反対側はかなり整備されているようで見晴らしが良い。
「アレが首都ヴォルスかー」
大きな時計塔に、草木の緑とレンガ造りの建物が調和した美しい街並み
中央には大きな川が走り、隣の山から水が流れているようだ。よく見ると奥には美しい湖もあるようだった。
「時計塔のある建物がフォール教会の総本山なのよね。あそこに巫女さまがいらっしゃるのよね」
「巫女さまってどんな人なの?」
役割に関しては、ガリアでシェイブに聞いていた。
なのでここは人柄の事だろう
「明るくてまるで太陽のような方なのよね」
アリアさんがそう言うと、黙々と食事をしていたシェイブが会話に入ってきた。
「モノは言い様だな。バカみたいに明るいヤツだからな」
少し間を置いて真剣な表情でシェイブが続ける
「アイツも昔馴染みだ。オレはアイツに会わなくちゃならねぇ。その時にお前らを紹介させてくれ」
「だからあの時、あんなに慌ててたんですか」
巫女さまが倒れた時の狼狽ぶりは明らかに異常だった。
たとえ祭りが中止になろうが、献上品のファガリアが無駄になろうが、真偽が不明な情報より正確な情報が教会から届いてから行動するのが普通である。
それにジェームスとナリアの対応。恐らく巫女さまは、三人と幼馴染なのだろう。
これまでそれだけでは説明できなかったシェイブの行動に納得できた。
「でもいきなりどうしてそんな」
急に話してくれたのだろう
「ああ、お前らはオレの仲間だからな。ちゃんと話しておくべきだと思ったんだ。」
深くは語らず、
「きっとお前らがいなかったら…。今、オレはここいなかった。改めて、礼を言わせてくれ。ありがとう。」
今度は頭を下げない。
代わりにシェイブの笑顔があった




