死後の世界に待つ少女
「汝、山田平次としての人生は終わりました。」
光の中から清く澄んだ女性の声が降り注いだ
「汝は、あの世界で生み出すはずだった大事なモノを生み出せずに死んだのです。」
うん。僕って未来はすごい人になるんだったのね
なんとか賞やら、なんとか記録を持ってたりして
さらに女神様っぽい声は続きます。
「本来の汝は、まだ死ぬような時間じゃないはず
汝は、妾を楽しませるための空前絶後の大ヒットゲームを作り出した後に、謎を多く残して死ぬように設定した世界干渉型創作人間
そう、汝は妾の作った最高傑作!
なのに、なのに!それに目覚める前に死んでしまうなんて、あゝ、なんと言う悲劇!死んだお前じゃなくて私がね!あゝ、可哀想なワ・タ・シ♪」
なんだろう。コレ。
誰か答えを下さい。
ぼそっ
「死後の世界で待っていたのは、慈悲に満ちた女神様ではなく、ただのヤンデレ自己中だった件について」
「誰がヤンデレ自己中だ!妾は女神じゃぞ!お主はなんて無礼なんじゃ!」
本当に言葉使いがめちゃくちゃだ。
だが、思ってる事がつい出てしまった
多分、幽霊だから口がないせいだろう。
「僕は、僕のやりたいように生きて生きて、この世界中には、社会の歯車になる人しかいないんだって知って、その中で平穏な未来を夢見て実現できずに死んだ。もし、自由に生きられる世界があるなら歯車になりたくない!あのレールの上の人生があんたの目的のためなら、あんたは自己中だ。だから訂正はしない。」
「そんなことないもん。たぶん。女神様はみんなこんなだよ?きっと。
世界を作るって事は、普通は作られた側は自分が作られたなんて思わないでしょ?
悪いとは思ってるよ?けど、ここにはわたしだけなんだもん。
嬉しいんだよ?今、ここに君が来てくれて。お話しできて」
光は晴れた。目の前には、小学校低学年くらいの小さな女の子がいた。
少しだけ、その目元には涙の粒が揺らいでいた。
その子は、長い桜の様なピンク色も髪をしていたが、あまりの長さに地面に着いてしまっていた。
真っ白な空間を地面と言うかは別として
ぼんやりと顔には靄がかかって、表情はわからないが感情は伝わってくる。
思い通りにいかなかった喜び
思い通りにいかなかった怒り
思い通りにいかなかった哀しみ
思い通りにいかなかった楽しさ
喜怒哀楽の全てを孕んだ感情が、押し寄せる。
思い通りにいかなかった楽しさ?
ふと、考える。
彼女は、僕に何かまだ期待しているのだろうか。
ならば、満足できる人生。自由な人生のやり直しを願ってもいいのかもしれない。
「まあ、死んだ以上はどうしようもないからもう言わないよ。
けど、次は自由に生きさせてくれよな」
そう言って僕は、安心させるために少女に微笑んだ。




