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三話

「未来から来た、千尋おばあちゃんの孫です」

 千尋は当然、目先の少年の言葉をすぐには信じなかった。


「信じないのはわかる。でも本当なんだ」

「いえ、確かにおかしな話ではない気がするけれど……。さっきの事を考えれば」

 銃撃戦の過去がイメージとして千尋の脳裏をよぎった。


千尋はミリタリーな知識は乏しいが、少なくとも光線が飛びかう戦場が地球にある筈がないと言う事はわかっている。


「千尋おばあちゃんは賢い人で嬉しい。それに、その容姿はとても綺麗だ」


「どうもありがとう」

 お世辞なのか本心か不明な言葉を、千尋は仏頂面で返した。


「それで、なぜここに来たの?」

「それは……」

 千尋の孫――名前を尋矢は、“千尋が音楽祭で歌わなかった未来”から来たと説明した。


未来の千尋はいつまでも音楽の人であったそうで、そして音楽に不満を持つことはなかったが、音楽祭で歌わなったということだけは、何年も、十何年も、何十年も後悔し続けたらしい。


「自分はどうしても、千尋おばあちゃんを救いたいからここに来た。だから千尋おばあちゃんが歌いたいなら、絶対に歌ってほしい。どんな嫌がらせがあっても、この世のどんな凶器が千尋おばあちゃんに降り注ごうと、身を呈してかばうから」


 尋矢はそれだけを告げると、千尋の前から姿を消した。千尋はもう少し、何か雑談をすべきかと良心が働くが、むしろ尋矢にとってそれは本意でない気がしたのだ。


本意でないと言うのは。

尋矢という少年が、あまりに襲撃者の女を恐れていることが関係しているに違いない。


覚悟の表明は、声が震えていたのだ。




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