四話
尋矢にとっての千尋はストイック。
怒るとちょっと怖いおばあちゃんだ。
ただ、若き千尋はそれ以上に荘厳さに磨きがかかっていた。
尋矢が千尋と接すると、時たまに千尋の優しい、そして複雑な眼をする。尋矢にとって、それが何かを知らない。幼子であったときは不思議に思うだけだったが、今考えればあの瞳は、自分がここにきて、そして失敗する事があの未来でさえ確定していたのかもしれない。自分が過去に戻り、失敗することは絶対の取り決めなのかもしれない。未来は分岐をするものだと教えられてきたが、自分がここに来る事は分岐するためには何の力にならないのかもしれない。
考えても無駄だ。
尋矢がただ黙って、透明化したまま、千尋の後をつけた。
あの細身だけは、傷つけられない。
決心は強かったが、しかし決心など路傍の石より無価値だと、彼は何となしに感づいていた。
千尋の携帯がメールを受信した。知らないアドレスからだった。
迷惑メールだと思ってすぐに忘れかけたが、しかし未来人や、銃撃などをついさっき経験した彼女は、迷惑メールであろうと知らないままにしておくことが危険であるように思えたので、一応、内容だけでも目に通そうとしたところ、その勘は当たった。
メールは襲撃をした女だった。
『簡潔に言う。
歌うのをやめなさい。
何の理由か――まぁ何となく予想できるけど、未来から来ている人からいる筈よね
しかし言っておくわ。
アナタが歌った世界は、破滅へと向かうわ。
信じられないかもしれない。けれど真実。事実、私が来たアナタが“歌った未来”は混とんとしているわ。
私の敵は、この混とんのために、アナタを歌わせるために、どんな非道な事をするわ。
私がいた未来でも、子供の肉体を無理に改造するなんて気狂いもいた。
どう? こんな未来にしたい?
止める事ね。
お願いです。
歌わないでください』
「……」
千尋は戸惑った。




