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第78話 竜、準備をする

「なに? ギリアムがパーティを?」

「はい。先日、こちらへ訪問した際にご迷惑をおかけしたので今度はモルゲンロート様をご招待したいと」

「なるほど」


 ディラン達に招待状が回ったころ、別に訪問していた臣下と騎士がモルゲンロートのところで謁見をしていた。

 招待状を手にしながら謝罪を込めたものであることを伝えられ、納得をする。

 しかし、次に出た言葉は意外なものだった。


「行きたいのは山々だが、少しやることがあってな。その期間、私は行けそうにない」

「それは……残念です」

「しかし、完全に断るというのも失礼だ。ヴァールを行かせようと思う」

「承知いたしました。では、ギリアム陛下にはそのようにお伝えします……少し、お知恵をお借りしたかったのですが」


 そこでロイヤード国の臣下が少し声をトーンを落としてから相談を持ち掛けた。

 するとモルゲンロートが首を傾げて尋ねる。


「どうした?」

「申し訳ありません。実はこのところ、城下で暴力事件が多くなっていて何かいい案がないかと。ギリアム陛下は町に活気があればということで祭りを開催する予定なのです」

「ほう……そちらもか」

「と、申しますと……?」

「ウチの城下町も些細なことで喧嘩をする者が後を絶たない。最近減って来たが、なにが原因か調査していてな。私はその件でそちらへ行けないのだ」

「なんと」


 ロイヤードの臣下が相談してきた内容は自国でも起こっていることだとモルゲンロートが口にする。驚いた顔をした後、臣下は続けた。


「こちらも……なにか流行り病のようなものでしょうか」

「うむ……原因が分かれば、というところだな。今は町の人間に対して自警団と協力して調査にあたっている。なにか分かれば伝えよう」

「ご協力感謝いたします! では、ヴァール様によろしくお伝えくださいませ」

「ああ、道中気を付けてな」

「はい。ディラン殿という方のところへ行っている騎士と合流する予定なので大丈夫かと思います」

「あれ!? ディラン殿も招待しているのか!?」

「ええ。ギリアム陛下はそのように、と」


 帰り際に問題発言が飛び出してモルゲンロートが慌てて椅子から立ち上がった。

 別に今から行くと約束しても構わないだろうが、今回は本当に仕事があるため難しい。


「……ふう、仕方ない。今回は諦めよう。ヴァールとバーリオ、それから護衛騎士で行くと伝えてくれ」

「はい! ではこの後、冒険者さん達のところへ行くので場所をお伺いできればと――」

「ん!?」


 臣下はモルゲンロートが来ないのは残念そうだったが、ひとまず仕事を終えたということでにこやかに退出した。

 さらに冒険者のところと聞いて目が見開かれた。仕方ないのでバーリオに聞いた屋敷の位置を伝えると謁見が終わる。

 モルゲンロートはすぐにヴァールとバーリオを呼び出した。


「どうしました父上?」

「陛下、最近私の招集が多くなってきたような気がしますぞ」

「話がある。それとお前は信用できるからだバーリオ」


 モルゲンロートが口を尖らせて言うと、バーリオはくっくと笑いながら肩を竦めていた。


「では、信頼に応えられるよう努めませんとな。それで? 先ほどロイヤードの者が謁見に来ていたようですが」

「そうですね。父上が私を呼んだのもその件でしょうか?」

「察しが良くて助かる。そうなのだ――」


 そこから祭りのことやディランのこと、ガルフ達までロイヤードへ招かれているらしいことを告げる。

 最初は普通に聞いていたが、ディランの話あたりから渋い顔になっていくバーリオ。


「それは……大変な事態で……」

「そうだろう? しかし私は今、重要な案件で離れることができない。そこでヴァールが私の代わりに行くことにした」

「今、初めて聞きましたよ父上!?」

「なるほど、では私が引率に?」

「理解が早すぎる!?」


 驚くヴァールの横でバーリオは冷静に自分の仕事を確認していた。それはそれでヴァールが驚愕する。


「わかりました。私はディラン殿や冒険者と一緒にギリアム陛下のところへ行けばいいのですね」

「うむ。どうも向こうも乱闘事件が勃発しているようでな。その調査もできると助かる」

「おや、そうなのですね? 承知しました。ギリアム陛下にもお話をお伺いしてきます」

「頼んだぞヴァール。というわけで、バーリオは今からガルフ君たちのところへ行ってもらいたい」

「注意事項も含めて確認ですな。ドレスなどは先日プレゼントしているので大丈夫かと」

「頼むぞ」

「凄いなあ父上……私もそういう家臣が欲しい……」


 ヴァールは苦笑しながら頬を掻くのだった。


◆ ◇ ◆


「え? ギリアム陛下が?」

「誰?」

「先日お前を追って来たロイヤード国の王様だ」

「あー、あの褐色肌の王様」

「その方です」


 ヴァール達が話をしている間にロイヤード国の使者はガルフ達を発見していた。

 ヒューシがトーニャにツッコミを入れつつ話が続く。


「うーん、だけど俺達もちょっと期間の長い依頼を受けちまったんだよなあ。代表で誰か行くか? ディランのおっちゃんが行くならトーニャとか?」

「あたしは依頼の方が良くない? 魔物を倒すならあたしが最適でしょ」

「ならユリに行ってもらうか。ダルと会えるだろうし」

「リーナは?」


 トーニャは行かなくていいと告げ、ヒューシがユリを推した。そのユリがリーナを指名するが、彼女は首を振ってレイカの後ろに隠れた。


『わ、わたしは……いきなり他国とかそういうのは……ちょっと……』

「そっか。んー……でも私だけってのもなあ……あ、ヒューシも行こうよ」

「どうして僕が」

「いいじゃん、かわいい妹とたまには行くってのも♪ ね、おにいちゃん?」

「……」


 ユリがウインクをしながらヒューシに言うと、物凄く怖い顔でユリを見る。

 しかし、ヒューシは少し間を置いてから話しだす。


「ふう、仕方ない。アホな妹を引率するか……ディランさん達に迷惑をかけられないし」

「なによー!」

「よし、なら俺とレイカ、トーニャにリーナはウチで依頼だ。ヒューシ達はロイヤード国へ頼むぜ!」

『お土産はちゃんと買って帰ってね!!』

「わかったわかった」


 オーダーが決まり、ガルフが確認の声を上げた。リーナはちゃっかりお土産を要求し、ヒューシが苦笑する。


「あたしが居なくて寂しいかもだけど、パパたちをよろしく♪」

「そうだな。任せてくれ」

「ではお二人ということですね」

「はい! よろしくお願いします!」


 ユリが敬礼のようなポーズをしながら元気よく挨拶をすると、ロイヤード国の臣下と騎士はほっこりした顔で立ち去って行った。

 見送った後、ガルフは招待状をヒューシに手渡す。


「そんじゃ、こっちは任せてくれ。依頼はこなして見せるぜ」

「頼む」

「後は準備かなあ。あ、ハリヤーはガルフ達が使うだろうし向こうまでどうしようか」

「そういえばそうね……」


 そこで二手に分かれることによって足が無いことに気付く。レイカが顎に手を当てて考え込んでいると外門のところから声がかかる。


「その心配は無用だ」

「あ、あなたはー!?」


◆ ◇ ◆


「ぴよー?」

「わん」

「こけー!」

「あい!」


 そしてディラン達一家は出発前の準備を進めていた。

 ひよこ達は首のリボン、アッシュウルフ達はバンダナが落ちないように結び直してもらう。


「わほぉん♪」

「あら、珍しくご機嫌ね」


 そしてダル達はトワイトによるブラッシングを受けていた。櫛使いが上手く、いつも気だるそうなダルですらちょっと高い声を出す。


「うぉふ」

「ぴよ!」


 そんな中、ヤクトの頭にレイタが乗り勇ましく鳴く。だが、カバンを用意していたディランが口を開いた。


「ヤクトの頭に乗らんでもレイタ達はリヒトのポケットじゃぞ」

「ぴよー……」

「うぉふ」


 残念だとレイタが床に着地すると、ヤクトが仕方ないとレイタの背中を前足で撫でていた。


「ワシらもいい服を着るべきかのう」

「里でやるお祭り用のがありましたね。それにしましょう」


 それぞれ楽しみにしている各陣営達。やがて出発の日が訪れる――

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