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老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる  作者: 八神 凪


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第413話 双子、村へ

「あーい!」

「あうー!」

「うお? 赤ちゃんの声? ……おお、お前達か」

「わほぉん」


 リヒトとライルはいつもの村へとやってきた。

 門番のおじさんがどこからともなく声が聞こえると視線を移したところアッシュウルフ達にまたがる双子が見えた。


「なんか久しぶりだなあ……って、父ちゃんと母ちゃんはどうした?」

「あい」

「あう」


 門番に尋ねられた二人は山を指して返事をする。一瞬、なんのことかと思ったが、そのことに目を見開いて驚く。


「なに!? じゃあお前たちは二人とペット達だけで来たのか!?」

「んーん、ぱーぱ!」

「まーま!」

「お、そいつは東の国の人形……?」

『初めまして』

『おはようございます』

「うおあ?! 喋った!?」


 そこでリヒトとライルの前がソルとエレノアを紹介すると、二人が挨拶を交わした。もちろん初めて口を利くので門番は驚いて尻もちをついた。


『すみません。ディランさんのところに居るソルという者です。こっちは妻のエレノア。こんな姿ですが、双子の実の両親です』

「あい!」

「両親って……」

『まあ、困惑するのも無理はありませんね。ひとまず、村へ入っていいでしょうか?』

「ああ。中にはシルヴィアスさんも居るしちょうどいいだろう」

『すぐにディランさん達も来ると思うのでよろしくお願いします』

「ああ、そうなのか。知らない仲じゃないし入っていいぞ。遠吠えはいいのか?」

「うぉふ!」


 中に入れと門番が言い、笑ってダル達へ木彫りに遠吠えをしなくていいのかと聞いた。しかし、シルヴィアスが居るため大丈夫だとヤクトが吠えた。

 そのまま入っていくと、リヒトがダルの背中をぺちぺちと叩いてから先を指す。


「あーい!」

「わほぉん」

「あーう♪」

「わん!」

『目的があったみたいね』

『この先って喋れない時に見ていたけど、確か――』


 エレノアはどこへ行くのかわかっていたようで、すぐにその時は訪れた。

 

「あーい♪」

「んめぇ~?」

「あうー」

「おや、坊や達? 遊びに来てくれたのかい?」

「あい! ぷーた!」

「ぷーた!」

「ん? あら、可愛い子豚だね! 家族が増えたのかい」


 そこは牧場で、いつもの奥さんが気づいてくれた。仲良しの羊もやってきて一声鳴いた。

 そこでリヒトとライルがダル達から降りて、プータを抱えて柵の前に居る羊のところへ向かった。


「あい! めー! ぷーた!」

「めぇ~♪」

「ぷひー!」

『なるほど。友達に紹介したかったのか』

『ダル君たちは家族で、羊さんはお友達ってことね』

「ははは、可愛いねえ相変わらず! なら中へ入って遊びなよ」

「あい!」


 そうして一行は牧場に入れてもらい、ふかふかの羊にプータを紹介して遊ぶ。

 羊もそんな二人とプータを歓迎しているように見えた。


「あー♪」

「あうー♪」

「わほぉん……」

「ぴよー♪」


 牧場に入るとでんでん太鼓を鳴らしながら駆け回り、プータと共に羊に突撃した。

 ダルは即座に寝転がりあくびをする。

 他の羊やヤギも今はダル達に怯えることもなくなっており、いつも通りのんびりしていた。


「あうー♪」

「あー♪」

「ぷひー♪」


 座っているふかふかな羊の毛に手をうずめてみたり、全身でぼふっと埋もれていた。プータも満足げに毛をふんふんと鼻を埋めて遊んでいた。


『平和ねえ』

『そうだね。このまま健やかに育ってくれたらなにも文句はない。そうしたら私達も天へ行けるのかな』

『ふふ、大きくなってからも満足できなさそうだけどね、私達。歳を取って一緒に天寿を全うするかも』

「そこまで生きる可能性はあるかもしれんのう」

「ふふ、家族がずっといるのは嬉しいわ」

『ディランさん、トワイトさん』


 牧場でのんびり見守っていたソルとエレノアが一体自分たちはどこまでこの姿で生きることができるのかと話していた。

 半分冗談みたいなものだったがそこでディランとトワイトが現れた。


「こけ!」

『ありがとうジェニファー♪』

「お主達が居るからゆっくり来たが問題なかったようじゃ」

『はは、ダル君たちも頼もしいですからね』

「わほぉん……」

「それもそうね! それにしてもあなた、二人がこのままハニワとドグウに入ったままだと困るかもしれませんけど、なんとかならないかしら」

「うーむ」


 ジェニファーが一仕事を終えてくれたおかげでディラン達がすぐ来てくれたとエレノアが褒めていた。

 そこで先ほどの話を聞いていたトワイトが、リヒトとライルが大きくなってもこのままだと少し不憫だと寂しそうな顔をする。

 ディランは腕組みをして唸る。


「一度、死した者を黄泉返らせる。それは本当に『同じ者』と成りうるのか――」

『……? ディランさん? どうしました?』

「む、いや、なんでもないわい。肉体が無いから難しいのう。新鮮な夫婦の遺体があったらゾンネアがなんとかしてくれるかもしれんが」

『それはなんだか申し訳ない気がしますよ……』


 独り言はソルたちには聞こえなかったようだ。どうしたかと聞かれてディランは新鮮な遺体があるとゾンネアがなんとかしてくれるかもと肩を竦め、エレノアは苦笑していた。


「あー! とーちゃ! おかーさ!」

「む、気づかれたか」

「あい!」

「あう!」

「こっちに来いって? うふふ、みんなで行きましょうか」

『そうですね♪』


 そうして一家は双子の下へと向かう。ディランは少し遅れて空を仰いだ。

 

「(今の状況、奴が見たらなんというかのう。滑稽じゃと笑うか? しかし力を落としてもワシは今の生活が気に入っておる。選択は間違いではなかった。あと何年……リヒトとライルを見守るのが楽しみなくらいにな。さて、それはともかくソルとエレノアをなんとかせねばならんか? トワイトの望みなら考えねばならんのう)」

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