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老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる  作者: 八神 凪


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第411話 竜、少し緩和する

「おおーい、サルエイスおるか?」

「ん? その声はディランか。ちょっと待っておれ」


 とある家屋へやってきたディランはサルエイスの名を口にした。

 すると中から声がして玄関を開けてくれた。


「お、ディランか。里の混乱の時以来じゃのう」

「あの時は助かったわい。どうじゃ、里の様子は」

「いろいろとショックな事があったものの、今は落ち着いておる。若い連中は何匹かショックを受けているが、まあそのうち戻るじゃろ。まあ上がってくれ。他には――」


 と、サルエイスは自宅へ招き入れてからこのひと月近くの話をしてくれた。

 里はトラネの言う通りお年寄りが戻ってきて前に近い生活に戻ったとのこと。

 アビーたちのように近くに居たドラゴンは戻ってきたが、遠くへ行ってしまったお年寄りドラゴンは消息が不明らしい。

 黒竜たちと同じように自給自足をしている里のドラゴン達は空いた土地を使って田畑や動物を飼うため割り振りをしているそうだ。


「ま、ここは大丈夫じゃろう。おぬしが戻ってくると盤石なのじゃがな」

「もう里はワシらが作った時より大きくなったからええじゃろう。それにもう別の住処があるから戻る気はないわい」

「そもそも、お父さんもシンタやシュウ、ザグズに言われて出てきちゃったものねえ」

「まあそういうことじゃ。なにかあれば呼んでくれればかけつけるぞい」

「あんまり気にせんでもええと思うがのう」


 竜の里にお年寄りが戻ってきたなら大丈夫だろうとディランが言い、あとは任せると伝えていた。

 もともと、出て行けと言われて里を後にしているので混乱を招いた一旦もあるため、そこも引っかかっている。

 気にしないでいいというサルエイスに対して、ディランが答える。


「この子達が大きくなったら人間の学校へ行かせるじゃろうし、人間の生活をするなら里に居ない方がええ」

「お友達も居ますからね♪ そういえば最近はガルフさん達に会っていないですね。ローザさんも元気かしら」

「あい!」

「あーう!」

「なるほど。そういえばその子らは人間じゃったか。まあ、今後は若い奴らもなにかあれば相談するように伝えているからこっちは任せておけ。ボルカノとかロクローも戻ってこんかのう」

「あやつらも住処を見つけたからのう。各国へ遊びに行くくらいはええかもしれんぞい」


 リヒトとライルの今後を考えると山でいいと言う。

 村や町へ行くこともあり、人間の生活圏に居た方が二人のためになると考えていた。

 茶飲み友達としてロクローやボルカノなどが帰ってこないか尋ねるも住処があるから難しいと苦笑していた。

 代わりにドラゴンを迎え入れてくれた国に、こっちから遊びに行くのは大丈夫ではと口にする。


「ほう、お主がそんなことを言うとはのう。人間と関わるのは怖いと言っていたではないか」

「そりゃあ今でも怖いわい。知らん奴には近づきたくない。じゃが、双子に格好悪いところは見せられんわい」

「はっはっは、ハバラやトーニャが産まれた時も似たようなことを言っておったな! なら仕方ない。とりあえずクリニヒト王国じゃったか? キリマール山というところは覚えたからもしかすると遊びに行くやもしれんわい」


 サルエイスは笑いながら過去のことを思い返していた。

 肩を竦めるディランへ、もしかしたら遊びに行くかもしれないと口にする。


「あーい♪」

「わほぉん!」

『遊びに来てくださいって言っているみたいですね』

「ぷひー」

「ぷーた!」

「おお、そりゃありがたい。いつかな」


 双子はぷーたもウチの子になったことを自慢しつつ、会いに来てほしいという感じのようだった。

 

「では帰るとするか。また会おう」

「お邪魔しました」

「しあー!」

「しちゃー!」

「元気な坊主たちじゃ。またのう」


 そんな会話をしてからディラン達は竜の里を後にした。行きと同じく、子豚のプータを連れて。


「あー♪ だうー、ぷーた!」

「わほぉん」

「やーと!」

「うぉふ!」

『なんだか名前を口にするのが楽しくなったみたいねえ』

「こうやって慣れていくのよね。ハバラというお兄ちゃんが居たからトーニャは喋るのが早かったわ」

『あ、兄妹の歳が違うとありそう』


 リヒトとライルはプータを連れて帰れることに大喜びをし、ペットの名を口にしながら家路へ着く。

 トワイトが微笑みながら兄妹だと上の子から学ぶこともあると言っていた。


「あーい!」

「あーう!」


 眼下になった里に手を振りながら、ディラン達一行は帰っていくのだった。


◆ ◇ ◆


「あ、もう帰っちゃったんだ」

「呼ばれていたと思ったが、用は済んだのか」

「ん? フウマとハンゾウか。今、ディラン達は帰ったぞ」

「なんだったんだ?」

「まあまあ、いいじゃない。ディランさん、なにか言ってました?」


 ディラン達が空へ舞い上がったあたりでフウマやハンゾウが尋ねてきた。

 トラネがそういえば名前を出していたなと思って呼んできたのだ。

 しかしすでに帰ってしまい、フウマは頭を掻きながら見上げていた。

 そこでトラネがなにか話したか聞いた。


「里は頼むぞと言っておったぞ。お主らに託されたという感じじゃな」

「ええ? 俺達はミスったじゃねえか」

「とはいえ、わしらのような年寄りはいつか朽ちる。伝えていく者として次の世代に託さねばならんのじゃ」

「……そうですね」


 サルエイスの言葉にフウマが怪訝な顔をする。

 だが、サルエイスはやるべきことは若い者達が継いでいかなければならないと話した。

 ハンゾウはそれを聞いて複雑な表情をしていた。だが、あの時のようなことを繰り返さないようにと肝に銘じる。


「ま、それは今後、若い衆の課題じゃな。ああ、そういえばドラゴンが住んでもいいという国がいくつかあるそうだぞ。ディランとトワイトの居る国に遊びに行ってもいいそうだ」

「え、そうなの? 人間の国かあ、私とかはここから出たことがないから興味あるかも」

「何頭かと一緒に旅行もできるならいいかもな!」

「里から出る、か。追い出した俺達が言うのもなんだけど、確かに興味はあるな。そのうち行きたい奴を集めてみるか――」


 ハンゾウはそう言って頷くのであった――

 

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